歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第110歩目 はじめての同居!


前回までのあらすじ

勇者についていろいろと説明してもらった。

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10/11 世界観のダンジョン編!に一部追記をしました。
    追記箇所は、『ダンジョンマスター』の⑩と⑪となります。

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□□□□ ~ダンジョン見学~ □□□□

トキオさんのタメになる勇者講義が終わった後、俺達はダンジョン内を見学させてもらうことになった。
友となった以上、ここのダンジョンはクリアできない訳で、それならば.....となった次第だ。

そもそも、俺もダンジョンマスターには興味があるので実はわくわくしていたりもする。

「僕のダンジョンは先日Cランクに昇格したばかりだからね。追加した階層を含めて全部で150階層ある」
「一気に階層が増えるんですね。確かEランクは50階層が上限だったような?」

「立ち入れるダンジョンランクが1つ上がるだけで一気に跳ね上がるんだ。Dランクは上限が100だしね」
「その辺りはスキルレベルと一緒なんですね」

もしかしたら、スキルやダンジョンに限らず、全体的にそういう傾向なのかもしれない。
レベルやランク的なものが1つ上がるだけで一気に増えるみたいな.....。


まずは1階層から順繰り見ていく。
パッと見だが、この辺りはどこのダンジョンとも変わりないように見える。

「これはどこのダンジョンマスターもそうだろうが、
 いきなり低階層に強力な魔物や極悪な罠を設置したりはしないよ」
「客寄せの為ですか?」

「その通り。ある程度は数が来てもらわないと宣伝にもならないしね。
 僕のダンジョンの場合は、100階層までは低階層ダンジョンのそれと一緒さ」
「100階層まで.....。それで元が取れますか?確かいろいろと設置されているんですよね?」

トキオさんの場合は、ゲームのダンジョンのように様々なフロアを用意してくれている。
それこそ、宝物部屋や迷路、転移部屋やラッキー階層などなど。

それらが100階層までは気軽に立ち寄れてしまうような造りではコストの割に合わないような気がする。

「100階層までで考えたら赤字も赤字さ。ただ、それ以降の階層で回収させてもらうけどね。
 まずは『安心』を与えて、その後『対価』を支払ってもらうようにしているんだ」
「残りの50階層でそれが可能だと?」

「もちろん。人は慢心する生き物だからね。
 100階層もぬるい階層に浸っていたら、次の階層にも思わず手を出したくなるものさ。
 そこを一気に刈り取る。もしかしたら、一番恐ろしいのは気が緩んでいる100~105階層だろうね」
「なんか大人のいやらしさを感じます。俺は一番苦手なタイプですね.....」

これはダンジョンルールの一つなのだが、ダンジョンは5階層ごとに区切られている。
その為、一度でも階層に足を踏み入れると神の祝福と呼ばれる部屋、つまり5階層目を突破しない限り地上に戻ることはできない。

そしてトキオさんの言う通り、100階層もずっとぬるかったら、俺はきっと慢心するだろう。
特にトキオさんの言う100~105層で罠に絡め取られそうだ。

しかも、俺のPTにはこういう頭脳戦に対応できる人物がいないだけにより致命的だ。
俺?無理無理。調子乗っちゃうし.....。アテナはもとよりドールも正直不安だ。

「ちなみに100階層からは何を設置しているんですか?」
「毎階層ごとに選択式にしているんだ。3本のルートを用意していて、そうだな.....。仮に松竹梅としようか」

(松竹梅って。そんなおめでたい名前じゃない気が.....。いや、ダンジョンマスターからしたら慶事なのか?)
 
「それぞれどういうルートなんですか?」
「梅を選んだ場合は罠だらけの迷路にしている。当然罠には即死クラスのものを用意しているよ。
 そもそも、罠とは嵌まったが最後助からないものを指すからね。生存させてあげる必要もないだろ?」

ちなみに100階層未満の罠はかわいいものだ。
魔物がひしめく魔物部屋行きだったり、入り口に戻されてしまったりするもので、実力が備わっている者なら特段命の危険性はないものばかり。

「おおぅ.....。た、竹は?」
「普通のダンジョンの造りさ。ただ強力な魔物を配置し、リポップする速度を異常に早めている。
 一歩歩く度に敵とエンカウントするゲームはやったことあるかい?あれに近いものにしている」

はい、クソゲー!

それって非常にイライラするから嫌いなタイプのゲームだ。
しかも、敵の強さはどんなものかはわからないが強力ときている。精神が常にゴリゴリ削られそうだ。

「うへぇ.....。さ、最後の松は?」
「鞭ばかりじゃ誰も近寄ってくれないからね。
 松は何もないよ、敵も罠も全くない。所謂、運も実力の内と言うやつさ」

「良心的.....、いや、でも毎階層ごとに選択しなきゃいけないんですよね?」
「そうだね。しかし、運良く松を引ければ宝物部屋にも遭遇できるんだ。冒険のしがいはあるだろ?」

『冒険は常に危険と隣り合わせ』を見事具現化したダンジョンといえるだろう。

宝箱の中身も確認させてもらったが、ゲーム同様階層が上がれば上がるほどいい物が入っている。
特に100階層以降の宝箱は目を見張るものが多い。一つ数十万~数百万もする魔道具があったりする。

この世界の人々は、命よりもお金を優先する傾向があるだけに喜びそうだ。
情報が出回れば、きっと釣られる人が多いことだろう。


その後もトキオさんのダンジョン見学は続いた。

正直なことを言えば、近寄りたくない、攻略したくもないダンジョンだ。
始めはゲームみたいで面白そうと思ったが、ゲームはゲームだから面白いのだと痛感させられた。

ゲームを現実世界に持ってこられた時の凶悪さときたら.....。


(トキオさんと友達になっていて本当に良かった.....。
 こんなのを知らずに挑んでいたら、下手したら死んでいたぞ!?おぉ!怖っ!!)


ちなみにだが、トキオさんが自慢する100階以降の迷路は難解そのもので最早クリアさせる気はないものだった。
迷った時点で即死亡のクソゲー・オブ・クソゲー!

しかし、そんなクソゲー・オブ・クソゲーを.....

「んー。思ったよりも簡単でつまらなーいr(・ω・`;)」
「なん、、だと!?」

もはや迷路とも感じさせない勢いでクリアしていくアテナに、トキオさんが異常に眼鏡クイッをしていたことは言うまでもないだろう。


世界に愛される存在は少しも迷ったりはしないらしい。


□□□□ ~愛情に飢える~ □□□□

ダンジョン見学は思った以上に実入りがあった。
アテナも迷路などで楽しく遊んでいたようだし、俺もダンジョンというものをよく知ることができた。

(将来的にはダンジョンマスターもいいかもしれないな。50年も時間があるんだ。検討してみよう)

そんな思いを胸にトキオさんに礼を言い、そろそろお暇しようとしたのだが.....

「・・・」
「あーははははは( ´∀` )」

ゼオライトさんが物悲しそうな表情をしながら、アテナを抱き締め一向に離そうとしないのだ。
ダンジョン見学中もずっとアテナにベッタリで、それはもう親友、いや、それ以上の関係に見えたものだ。

「済まないね、舞日君。妻は多少愛情に飢えていてね」
「愛情に?どういうことですか?」

「妻は生まれつき目が見えないのは話しただろう?
 そして妻の種族である白狼族が根っからの戦闘種族だとも」
「はい」

「白狼族にとっては強さが全ての基準らしいんだ。強き者が崇められ、弱き者は虐げられる。
 そんな種族の中、目が見えない妻はそれはもう迫害の人生だったらしい。一族からも、そして.....親からもね」
「・・・」

「妻もそんな経緯があったせいか多少強情なところもあってね。
 僕以外とは積極的に馴染もうとはあまりしなかったんだよ.....」
「なるほど.....」

それだからか、「ゼオライトさんは愛情に飢え、愛情を求め、愛情に溺れるようになった」とトキオさんは語る。
今まではその愛情の対象がトキオさんだけに傾いていたのだが.....。

ここにきて裏表のないアテナと知り合い、誰とでも.....それこそ強情な態度を見せるゼオライトさんですらも分け隔てなく接するアテナにどうやら深い愛情を抱いてしまったようだ。

「妻が僕以外にあそこまで心を寄せるなんてことは今まで一度もなかったからね。
 さすがは女神様と言うべきかな」
「いや、まぁ.....。あれだけがアテナの取り柄ですしね(後、おっぱい?それと、顔?)」

感動の再会!を思わせるような雰囲気が漂っていて、このまま二人を引き離すのが妙に心苦しい。

そう思っていたら、

「どうだろう?今日は泊まっていったらいいんじゃないかな?
 僕もまだ、舞日君と語り足りないと思っていたところなんだ」

トキオさんから、お泊まりの誘いを受けた。
部屋はたくさんあるみたいだし問題はないのだろうが.....。

(この人、本当に奥さんに甘いな.....)

ゼオライトさんの為なのがバレバレで苦笑いが出る。
いや、一目惚れだと言っていたし、好きな人の為なら何でもしてあげたくなるのかもしれない。

そんな俺達のやり取りを聞いていたゼオライトさんは、

「ぜ、ぜひお願いします!腕によりをかけてご馳走を作らせて頂きます!」
「・・・」

それはもう必死というか懇願に近い形で、なぜか頼んでいた。悲しい。

普通はアテナの保護者である俺に頼むのが然るべき対応なはずなのに.....。
ここまで嫌われているとなると、さすがに少しへこむ。


俺がしょんぼりしつつも当のアテナは、

「はーい( ´∀` )よろしくねー」
「・・・」

元気な声でかわいく承諾の返事を返していた。悲しい。

普通はアテナの保護者である俺に一言ぐらい相談するのが然るべき行動なはずなのに.....。
まぁ、元より泊まるつもりだったからいいけど。


俺の存在ってなんだろう?と哲学的思想に耽りながらも、トキオさん宅?ダンジョン?にお泊まりすることが決まった。


□□□□ ~トキオさんの提案~ □□□□

夜も大分更けてきたが、会話が尽きることはなかった。

トキオさんからお泊まりの誘いを受けた俺達は、遠慮することもなく泊まらせてもらった。
歓待の様はそれはもう豪勢で、どこかの貴族様にでもなったんじゃないかと思わされるぐらいだった。

ゼオライトさんの手料理も、自信があると言っていたにふさわしいものだった。
個人的な感想では、スカイさん≧ラズリさん>ゼオライトさん>ナイトさんだ。
スカイさんは別格として、ラズリさんが最上級料亭だとしたら、ゼオライトさんは高級レストランのそれかもしれない。

(.....くっ!美人な上に料理上手だと!?う、羨まけしからん!!)


そんなこんなで豪華なもてなしを受けた俺達は大満足し、今はトキオさんと二人で静かに、それでも楽しく酒を酌み交わしているところだ。
アテナやドール、ゼオライトさんは仲良く同じベッドで寝ている。

「本当にありがとう。妻があんなに楽しそうにしていたのは久しぶりかもしれない」
「いえいえ。こちらも豪華なもてなしだけでなはく、アテナ達の面倒も見てもらってしまって助かります」

お互いにwin-winだったということだろう。
これが友達の関係としては気兼ねすることがないので一番いい。

「それで今後はどうするつもりなんだい?」
「とりあえずはDランクのダンジョンをクリアするつもりでいます」

俺の当面の目標はこれに限られる。

まずはダンジョンを早々にクリアして、早めに神界に行きたい。
次はどの神様になるかはランダムなのだが、アルテミス様への伝言はアテナに頼めばなんとかなるらしい。

ドールに指摘されるまではずっと『試練=クリアするダンジョン』だと勝手に思い込んでいた為、次の試練はCかD、どちらにすればいいか決めきれずにいた。
なので、試練は次回神界に赴いた時にアルテミス様に伝えるということにしていたのだ。
アルテミス様が帰界されるときに、「本当にそれでいいのかい?」と何度も訊ねてこられて理由がやっとわかった。

「それにしても女神様を娶りたいだなんて.....、君は意外と大胆不敵なんだね」
「トキオさんじゃないですが、俺も一目惚れだったんです」

「いや、その気持ちはよくわかるよ。僕も妻を手に入れる為に無我夢中だったからね」
「10億ですもんね.....。いや、本当に凄いと思います」

話を聞くに当時のトキオさんはまだ駆け出しだったらしく、10億もの大金なんて持ち合わせてはいなかったらしい。
だから資金を集めるために方々手を尽くしたみたいだ。知り合いの勇者から借りたり、それこそ怪しい集団にまで手を出したんだとか。

それ故に2~3年間はずっと借金生活をしていたらしく、貧乏な中、ゼオライトさんと愛を育んだらしい。
これだけ聞くととても美しい話なのだろうが、正直なところ、ちょっと引いてしまっていた。あまりの壮絶さに.....。

「転機が訪れたのは『ダンジョンポイント』を神様から貰った時だね。
 当時は嘆いたものさ。冒険者だった僕には使い道がなかったからね」
「そんなものまで貰えるんですね」

恐らくは、ダーツ上に於ける『アイテム』に含まれる賞品だろう。

「普通ダンジョンマスターになると、国から特別にダンジョンポイントが10万ポイント分支給されるんだ。
 それを持って一からダンジョンを造り始めるんだが、意外と、いや実は全く足りないんだよ」
「10万って聞くと結構ありそうな気がしますが.....」

「まずダンジョンの作成。いろいろ種類はあるんだが、一番安いのでも5万はかかる」
「え!?半分も使うんですか!?」

「そうなんだ。しかもその状態ではこのマスター部屋に一直線だから、すぐに階層を造らないといけなくなる。
 階層一つは1万なんだが、これはダンジョンポイントを使用するものの中では比較的安い方だ」
「えぇ.....それで安いほうって。なんか最初から無理ゲー臭くないですか?」

最初に10万支給されて、ダンジョンで5万、仮に2~3階層造ったとしたら残りは2~3万しか残らなくなる。
階層を造るのが安いということを考えたら、もうほとんどなにもできないに等しいことになる。

「10万ポイントだけじゃ無理だろうね。だから、どのマスターもダンジョンギルドでポイントを買うのさ」
「あぁ.....。そういうことなんですね」

「元からそういう仕組みなんだろうね」
「まぁ、支給された分で全てが整ったら、国としても儲からないですしね.....」

はいはい、大人の事情、大人の事情。
どの世界でも経済というものは、こうも泥臭いというか、厳しいものなのだろう。

「それでトキオさんは、どの程度ポイントを貰えたんですか?」
「100億だね」

「ひゃ、100億!?」
「マスターになって2年経つけど、いまだに使い切れないよ(笑)」

仰天した。

いや、あのダーツの賞品ということを考えれば妥当?なのか。
しかも、トキオさんは俺とは違って自分で矢を投げられない。

(そう考えれば妥当なのか?いや、でも100億って.....。相変わらず神の世界の常識はぶっ飛んでんな.....)


その後は、その100億ポイントをふんだんに使って、新進気鋭のダンジョンマスターとして名を馳せたらしい。
ダンジョンポイントがいまだに使い切れていないので、経費は一切かからず収入は全取りみたいだ。.....これは儲かるわけですわ。

「実は秘かにダンジョンマスターに憧れていたんですが.....。俺にはちょっと無理そうですね」
「そんなことはないさ。舞日君の実力を考えればそんなに難しいことじゃない」

「そうですか?買い被りすぎですよ。.....とりあえず当面は冒険者でいこうかと思います」
「君ならなんでも大成するだろう。.....ところで、Dランクのをクリアしたらどうするつもりなんだい?」

「う~ん.....」
「Dランクをクリアしたら、もうこの王都ではクリアできるダンジョンはなくなるだろ?」

俺が頭を悩ましている問題はまさにそれだ。

トキオさんの言う通り、この王都ではもうクリアできるダンジョンがなくなってしまう。
俺は一刻も早くニケさんに会いたいのだが、その為には最低でも二つの攻略の証が必要となる。
Dランクのダンジョンをクリアしただけでは攻略の証が一つ足りないのだ。

そうなると.....

「ダンジョンを求めて、他の都市に移るしかないね」
「そうなんですが.....」

「何か不都合でも?」
「知り合いが武器フェスティバルに参加するんですが.....。ちょっと心配でして.....」

どうしても、ナイトさんのことが気になる。

武器フェスティバルというのものがどういうものなのかはよくわからない。
ただ正直なところ、日常の営業ですら普通にこなせないナイトさんが、そんなお祭りにまともに対応できるとは到底思えない。

大きなお世話なのかもしれないが、知り合った以上はなんとかしてあげたい。

「君は随分とお人好しなんだね。いや、だからこそ君と友になって良かったと今更ながら思うよ」
「はぁ.....。なんかこう放っておけないんですよね」

「しかし、武器フェスティバルは今から7ヶ月後だ。
 今から他の都市に移っても、君ならば余裕で間に合うのでは?」
「それがそうもいかないんですよ。と言っても、ダンジョンクリアはさほど問題はないんですが.....」

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他の都市に移るとなると、武器フェスティバルの開催日を考慮すると現実的なのはフルール一択となる。
往復で4ヶ月。ダンジョンクリアに数日、多めに見積もって10日かかってとしても計算上は余裕だ。
そう計算上は余裕なのだが、これは机上の空論に他ならない。

そもそも俺がフルール滞在時にダンジョンをクリアできなかったのは、

・ダンジョンは基本的に1都市につき2ヶ所あり(例外あり)
 高難易度(B~SS)と高難易度(B~SS)が2割
 低難易度(F~C)と高難易度(B~SS)が3割
 低難易度(F~C)と低難易度(F~C)が5割

この法則の3番目である、低難易度(E)と低難易度(D)の2つのダンジョンにフルールが当てはまっていたからだ。

Eランクがいまだに残っているならいいのだが、もしクリアされていた場合.....

「なるほど。アテナ様やヘリオドール君が気になってしまうと?」
「その通りなんです。
 この王都では信頼できる知り合いに預けることで問題を解決できたんですが、他所の場所となると.....」

Dランクに挑まざるを得なくなるので、トキオさんの言う通り、アテナやドールが心配となる。
この王都のDランクですら、アテナやドールでは足手まとい感が強かったのだ。恐らくフルールも.....。

ちなみに、トキオさんには既にあらかたの情報は教えている。
そもそも俺は隠し事が苦手だし、このトキオさんならいろいろと相談に乗ってくれそうだと判断したからだ。

「.....少し過保護過ぎるような気もするんだが?
 アテナ様はともかく、ヘリオドール君なら大丈夫だと思うんだけどね」
「と言っても、ドールはまだ11歳ですし、なにかあったときに不安なんです」

11歳と言えば、日本では小学5年生ぐらいだ。
そんな少女に全てを任せるのはどうかと思う。

(.....あれ?小学5年生だと考えると意外とイケるのか?しかし、ドールは獣人で奴隷だしな.....)

やっぱりダメだ。
少しでも不安要素があるうちは、安心してダンジョン攻略には挑めない。

「要はアテナ様やヘリオドール君の面倒を見てくれる人がいればいいんだろう?」
「そうですね。.....まさかゼオライトさんを貸してもらえるんですか!?」

「いやいや。それは僕が困る。妻とは離れたくはないからね」
「そうですよね。.....では他に何かあるんですか?」

ナイトさんに頼るのはさすがに無しだ。
ナイトさんは根っからの仕事バカ。きっと、この王都からは離れたがらないだろう。

そういう意味では、アテナを気に入っているゼオライトさんが一緒に付いてきてくれるのが一番理想ではあったのだが.....。料理も美味しいし。
ただ、さすがに人妻を借りると言うのは無理があった。
あらかじめ言っておくが、俺にはNTR願望などはない!ないったらない!

「名案がある」
「なんでしょう?」

「一緒に住もう」
「.....え?」

(はあああああ!?ど、どういうお誘いだよ!?
 え?なに?トキオさんはそっちの気もあるの!?.....やだぁ!ゼオライトさんに殺されちゃうぅ!!)

トキオさんからのまさかの同棲提案に頭の中が混乱した。

この会話の中でどこにそんな流れがあったのか。
そして、どこがトキオさんの琴線に触れたのか。

俺には全くわからなかった。
わからなかったが.....、悪い気はしなかった(ぽっ)。

(.....(ぽっ)じゃねえ!何を言ってんだよ!?俺は!?)


動揺しまくりの中、努めて、それこそ努めて平然とした態度でトキオさんに真意を訊ねることにした。
今もしトキオさんから告白でもされようものなら.....。禁断の扉を開きそうな恐怖感が体を強張らせる。

「(ごくっ).....ど、どういう意味でしょうか?」
「そのまんまの意味だよ。ここで一緒に住むんだ。
 そして、アテナ様やヘリオドール君の面倒は僕と妻が見よう」

「え?つ、つまり.....?」
「君は単身赴任をすればいいんじゃないのかな?」


(えええええええええええええええ!?単身赴任かよおおおおおおおおおおおおおおお!)


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後書き

次回、外伝!

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今日のひとこま

~単身赴任~

「二人に話がある」
「なにー(。´・ω・)?」
「改まってなんじゃ?」
「俺.....単身赴任に出ようかと思う」

「マグロ漁船だよねー( ´∀` )」
「違う。.....いや、微妙に違くもないけど、違う」
「単身赴任.....?なんなのじゃ、それは?」
「しばらくドール達とは別々に暮らしながら働くことだ」

「なん、、じゃと!?そんなの妾が認める訳なかろう!」
「歩はどこいくのー(。´・ω・)?」
「フルール。二人には悪いが、俺はどうしてもダンジョンをクリアしたい」
「なら妾も主とともに行くのじゃ!」

「歩が単身赴任中はだれが私のお世話するのー(。´・ω・)?」
「なっ!?ね、姉さまはそれで良いのか!?主と離れ離れになるのじゃぞ!?」
「二人の面倒はトキオさん達に任せることになっている」
「だから!妾は主とともに行くと言うておろう!話を聞かんか!」

「ふーん。私達は一緒じゃだめなのー(。´・ω・)?」
「ダメ」
「なんでー?」
「・・・」

「理由もわからぬのに従う訳がなかろう!妾は断固付いていくのじゃ!」
「どうしても一人でいきたいのー(。´・ω・)?」
「あぁ.....」
「わかったー!じゃーまってるー!はやくかえってきてねー(*´∀`*)」

なんという正妻力。ありがとう.....アテナ。


こうして俺はフルール目指して旅立つことになった。

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