歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第94歩目 vs.バット!神の試練②


前回までのあらすじ

神の試練に挑むことはできたけど、強敵がいきなり来ちゃったんですけど!?

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□□□□ ~レベル3の脅威!~ □□□□

バットのステータスは少なくとも俺以上なのが分かった。
ここは気を引き締めて事に当たるべきだろう。

とりあえず最初にすべきことは.....

「ドール!あのバットは、俺よりもステータスが遥かに高いみたいだ」
「な、なんと!それは誠か!?」

「残念ながらな。ただ襲いかかってくる蝙蝠はそれほど強くはない。
 そのままのドールで防げるはずだ。アテナを守ってやってくれ、頼むぞ!」

アテナとドールの身の安全を図ることが最優先だ。
この二人の安全さえ確認できたなら、俺は持てる力全てを敵に注ぐことができる。

「だ、だったら、妾の.....」

───キィーキィー。
───キィーキィー。
───キィーキィー。

ドールが何かを言い掛けていたが、敵さんはそんな猶予を与えてはくれないようだ。
無数の蝙蝠が、俺達目掛けて一斉に襲い掛かってきた。

「悪い!何かあるなら後にしてくれ!
 今は話している猶予はあまりない!とりあえず、俺に全てを任せておけ!」
「う、うむ。.....結界符!」

ドールが結界を展開したことを確認できたので、俺は安心して蝙蝠達と対峙することにした。

───キィーキィー。
───キィーキィー。
───キィーキィー。

蝙蝠達の猛攻が続く。

襲い来る蝙蝠達を紙一重のところで、頭を右にずらして交わす。
そして、ずらしたところに襲いくる蝙蝠を同様に、頭を左にずらして交わす。
左右から迫って来れば軽く頭を下げ、四方から来ればLv.2の魔法であるスピアーで撃ち落とす。

・・・。

これをひたすら繰り返しながら、徐々に徐々に蝙蝠達を殲滅していく。
蝙蝠達の動きは素早く無軌道なので、なるだけ大きな動きはせず、小さく最小に動くことを心掛ける。

更に繰り返している間に分かったことがある。

蝙蝠達は一見バラバラに襲って来ているように見えるが、よく見ると、統率された動きで俺の一部分を的確に狙って来ているように思える。
明らかにバットが指示しているのだろう。

そして、敵の狙いとは.....

俺の目だ。
俺の視覚を奪って、優位性を勝ち取ろうとしているのだろう。

・・・。

それからも相変わらず蝙蝠達は俺の目を狙って襲い掛かってくる。

ひたすら.....
ひたすら.....

どれほどの蝙蝠達がむなしく死んでいったのかもわからない程に、ひたすら特攻を繰り返してくる。
狙われている場所さえ分かれば避けることは造作もない。撃ち落とすことも同様だ。

そう、造作もないのだが.....

いくら蝙蝠だからと言っても、命は命。
あまりの健気な特攻ぶりに、いつぞや映画で見た、太平洋戦争末期での特攻隊の姿と重なってしまって、あまりいい気分はしない。
何を戦闘中にバカなことを.....と思われる方もいるかもしれないが、こうまで力量差が有りすぎると逆に憐れみすら感じてしまう。

そんな感じで憂鬱に浸っていたら、

「我輩の眷属如きに苦戦とは.....汝らの力とはその程度のものなのですか?
 我輩は汝らと遊びに来たのではありません。汝らの力を見に来たのです。
 早々に、猿王マシラ様を降した『力』とやらを見せて頂きたいものですな」

バットからは不満たらたらの呆れ声が届いた。

どうやらこの蝙蝠達は、俺の力を引き出す為の囮、餌として用意されたものなようだ。
つまりは死に行くことが決まっている眷属達.....。死ぬことが運命となったもの達.....。

日本にはその昔、『介錯』という文化があった。
本人を即死させて、その負担と苦痛を軽減する為にできた文化だ。

今、俺に襲い掛かってきている無数の蝙蝠達は、既に死に行く運命ディスティニー
どうせ死ぬ運命ならば、ここは日本人らしく介錯してあげるのが優しさなのではないだろうか。

(ごめんよ、蝙蝠達.....。俺の為に死んでくれ!)

心の中で蝙蝠達に別れを済ませた俺は、バットのご希望通り、その力を解放した。

「ヴィントストーム!」

───ブォォォォォオオオオオ!

部屋いっぱいに鳴り響く大風音。
目の前に広がる壮大な風渦流。

そして.....

風渦流に、まるで蟻地獄にでも嵌まったかのように飲みこまれていく憐れな蝙蝠達。

・・・。

相変わらずレベル3スキルの威力はぶっ飛んでいる。
魔法とは、常識とは何なのかを改めて考えさせられてしまうほどの威力だ。

そして、当然驚いているのは俺だけではなく.....

「・・・」

ドールは初めて見るレベル3魔法のあまりの威力に、口をぽか~んと開けて呆けている。かわいい。
しかし全身の毛は逆立ち、尻尾までもがピーンとなっている。本能で警戒しているのだろう。

「おおおおお(o゜ω゜o)なんか洗濯機みたいだよねー!」

一方、アテナはきゃっきゃと楽しそうに眺めながら、言い得て妙なことを言っていた。

ファイアーストームの時は、飲み込んだ魔物全てを焼き付くしてしまったから跡形も残らなかった。
しかし今回発動したのは、飛行タイプの弱点であるヴィントストームだ。翼ごと命を毟り取られて、その場で生き絶えている。

きっと蝙蝠達が、風渦流に飲み込まれていくその姿を洗濯物に例えているのだろう。

(.....うん。不謹慎すぎるので、後でお仕置きだな)

・・・。

アテナのお仕置きが決まったところで、問題のバットはどういう反応をするのか窺ったら.....

「なるほど。なるほど。汝らの力とは、謗りを受けることも厭わない鋼の精神ということですな」

よくわからないことを言っていた。

確かに相手の弱点を突くことは、この世界に於いてはタブーとされている。
それを躊躇いもなく行ったのだから、それが力だと言われればそうなのかもしれない。

しかし、俺が言いたいのはレベル3魔法のことなんだが?、と思っていたら.....

「汝らの力の一端はわかりました。
 ですが.....我が主アルテミス様が、わざわざ我輩をこんなところにまで遣わされたのです。
 汝らの本当の力とはこんなものではありますまい?それを見せて欲しいものです。ヴィントストーム!」

───ブォォォォォオオオオオ!

バットの詠唱が終わると同時に、部屋いっぱいに鳴り響く大風音。
目の前に広がる壮大な風渦流。

「な、、んだと!?」

バットはレベル3魔法などどこ吹く風といった感じで、当たり前のように発動させ、当たり前のように俺のヴィントストームを相殺してしまった。

当然驚いているのは俺だけではない。

「な、なんと!主以外の者もレベル3魔法じゃと!?」

ドールも同様に驚いていた。
もう既に全身の毛が逆立ちすぎていて、見た目が針ネズミ状態になっている。あれはもふもふするのだろうか?

「何を驚いているのですか?
 レベル3魔法など、我輩達神獣ならば、誰でも使えるものですぞ?驚くようなことでもありますまい」
「「・・・」」

唖然。呆然。愕然。失然。
仰天。絶句。喪失。虚脱。
なんとも言い難い感情が、この場を.....、俺を.....、包み込んでくる。

(冗談じゃない!
 俺の切り札とも言えるレベル3スキルが全く効かない相手なんて、そもそも勝てる訳がない!)

相手がどんなにステータスが高くとも、こちらのスキルレベルが高ければ負けることはそうそうない。
それがこの世界の理だ。少なくとも俺とバットのステータス差ならば余裕な範疇だ。

しかし相手とスキルレベルが同等の場合、その強弱はステータスによって決する。
つまり俺とバットの場合は、ともにレベル3スキルを使える以上、俺には全く勝ち目がないことが判明してしまった。

勇者ならばなにか逆転の一手があるのかもしれないが、俺は凡人だ。
凡人は世界の理に従うほかない。

「では、汝らの本当の力というやつを見せて頂きましょう」


レベル3スキルをも駆使する強敵バットが、俺に.....、俺達に.....、迫って来る。


□□□□ ~凡人の最終絶技~ □□□□

───バァァァァァアアアアアン!

大風音と大絶壁がお互いにぶつかり合い、そして跡形もなく消えていく。

俺とバットはただひたすら魔法合戦を繰り返している。
バットはレベル3の風魔法『ヴィントストーム』
俺は風の弱点であるレベル3の土魔法『サンドストーム』

「ほぅ。風だけではなく、土も使えるのですか。素晴らしい力です」
「はぁ.....。はぁ.....。そ、そりゃどうも.....。」

「もしかして、他も使えたりするのですか?」
「はぁ.....。はぁ.....。お、俺が教えるとでも?」

「それが答えというものですよ。私は風しか使えないので羨ましい限りです」
「はぁ.....。はぁ.....。そ、そんなことを教えてしまってもいいのか?」

俺はもう息絶え絶えだ。
既にレベル3の魔法を3発も使ってしまっている。当然の結果だ。

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ここで魔法というものについて、少し触れておきたい。

読者の中には『猿王マシラ』こと『ボス猿』戦のことを覚えている方はいるだろうか。
ボス猿戦で初めてレベル3魔法を使った訳なのだが、その時の俺のステータスは1460前後だった。
そして、その時に使えたレベル3魔法の使用限界回数はたったの2回。それが限界だった。

そして、俺の今のステータスは7091前後。当時と比べても約4.8倍程度の力がある。
そうなるとレベル3魔法をたった3発しか使っていないのに、「息絶え絶えになるのはおかしいのではないか」、「単純計算しても8~9回は使えるのではないか」、と疑問に思うことだろう。

その通り。
普通ならおかしいのだ。

でも理由がある。

この世界の魔法消費量は、ゲームにあるおなじみの固定消費型だ。
仮にファイアーの消費量が10とするならば、レベルが上がれば上がるほど、その使用回数は自然と増えていく。
それが世界の理であり、これは全ての人に適用されている。

故に、当然俺にも適用されるはずだった。
しかし俺には、いや、凡人には.....、適用されなかった。

この世界に於ける凡人とは、所謂子供、もっと言い換えるなら5歳未満の小児を指す。
この世界では5歳を過ぎると、何かしらの職業に就くことが義務付けられている。
農民であったり、商人であったり、小作人だったり.....。そして職に付いた時点で、この世界の理に当てはまるようになる。

つまり凡人でしかない俺の場合、世界の理には当てはまらず、変則的な扱いとなる。

どういう扱いになるかと言うと、

例えば、縄跳びを想像してもらいたい。
そして400回を目指して跳ぶことにしよう。
仮に最初の200回を2分で跳べたとしても、残り200回も同様に2分で跳べるかどうかはわからない。
いや、むしろ最初の200回の時よりも時間がかかる人の方が多いだろう。

なぜか.....

そこには『疲労』というものが加わってくるからだ。

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もうお分かり頂けたと思うが.....

俺は勇者でもなんでもない。ただの凡人だ。
故に世界の理から外れているので、疲労によって魔法が使える回数はかなり限られている。

現状のステータスでは、いいとこ4回が限界だ。


「構いませんとも。見たところ相当お疲れなご様子。
 そろそろ本当の力というものを見せては頂けませんか?」
「はぁ.....。はぁ.....。ほ、本当の力?こ、これが精一杯なんだが?」

息も絶え絶え、目眩すらする。
これ以上何を見せればいいというのか。

「ふぅ~。人間とはなんと浅ましくも、怠惰な生き物なのでしょう。
 ピンチにならないと力を出せないと、そう言われるのですね?」
「・・・」

このバットという神獣はどうも思い込みが激しいみたいだ。
人間を、俺を、買い被り過ぎているように思えてならない。

「ではご希望通り、その願いを叶えて差し上げましょう。ご安心ください。殺したりはしません。
 ですがこのまま力を見せないようだと、腕の1本、足の1本ぐらいは吹き飛んでしまうことになるでしょう」

バットはそう言い残すと、両手で魔法を繰り出そうとしている。
俺にも経験がある。魔法は片手で1つの魔法が発動できる。

つまり.....

両手でヴィントストームを放つことで、俺が放つサンドストームの優位属性を無効にしてくるつもりなのだろう。

「魔力量も僅かと見受けられます。残り1発が限界.....といったところでしょうか?
 でしたらこちらはヴィントストームを2発打つまでです。力を見せる準備はよろしいですか?」

ズバリだった。
準備もくそもあったものじゃない。もう完全にお手上げ状態だ。

俺は絶望の淵に立たされていた。
それでも降参はせずに、やれるだけはやってみるつもりだ。

全てとは言わないが、日本では結果だけではなく、その過程も評価されたりする。
所謂『頑張ったで賞』みたいなやつだ。

今この場もそれに期待することにした。
腕の1本や足の1本が飛べば、その頑張りに報いてくれると信じたい!そう、信じさせて欲しい!

(俺はなにがなんでもニケさんに会いたい!)

「では覚悟はよろしいですか?いきますよ?」

そして、バットの両の手から魔法が放たれた。

───ブォォォォォオオオオオ!
───ブォォォォォオオオオオ!

凄まじい暴風音だ。
2つの台風はまるで親子かのように息を合わせて迫りくる。

床に散らばっていた無数の死骸である蝙蝠達を飲み込んでは、バラバラに切り刻み、粉々に粉砕し、まるでそんなものは初めから存在しえなかったと言わんばかりに跡形もなく消滅させた。
恐らく消滅というよりかは、視認不可のミクロン単位にまで粉々にされてしまったのだろう。

(.....おいおいおい。本当に腕や足の1本で済むレベルなのか、これ?)

明らかにその程度で済む威力ではないことに恐怖した。
それと同時に、これをなんとかしないといけないとも思った。

「ちぃっ!そういうことかよ!」

俺の腕や足の1本が飛ぶぐらいならまだいい。本当は嫌だけど.....
でも俺の背後にはアテナやドールがいる。俺がここでなんとかしないと、二人にも被害が及びそうだ。

「その通りです。汝が本当の力を見せないと、被害は汝だけにとどまりません。
 これほどおあつらえ向きなシーンはないでしょう。さぁ!今こそ、汝の、汝らの本当の力を見せるのです!」

バットはそう言うと、この状況を作り出した己の優秀さにまるで陶酔でもしているかのような恍惚に耽った表情をしている。気持ち悪い。

そして、確信したことがある。

バットは今の今まで手加減をしていたのだ。
今までは魔法の及ぶ範囲を俺だけに絞るようにしていたのだろう。
それがここにきて、初めて全員を巻き込むように発動してきている。

言葉通り、ピンチを作り出したということなのだろう。

・・・。

(本当にいい性格してやがる。さすが悪戯好きのアルテミス様のペットだ。
 .....人間様をなめんなよ!この蝙蝠野郎が!勝てないにしても、せめて一矢だけでも報いてやる!)

「サンドストーム!」

沸き立つ闘志とともに全力で魔法を放つ。
無駄だとわかっている。それでも諦めなかった。

(せめて一矢!せめてあのくそムカつくにやけ顔を驚きの表情に変えるまでは.....!)

その思いとともに、その願いとともに魔法を放つ。

───バァァァァァアアアアアン!

二つの親子台風と大絶壁が衝突し合う。

しかし.....

───ガガガガガ!
───ガガガガガ!

俺のサンドストームは徐々に徐々にその勢力を弱めていく。

「くそっ!」

分かってはいた。
どんなに思いを込めても、どんなに願いを捧げても、圧倒的な暴力の前には無に等しい。

異世界という世界では力が全てなのだ。
どんなに正義を語ろうが、力が無ければ絵空事にしかならない。
某国民的子供向けアニメでも正義に力を執行している。正義と力は一緒なのだ。

(力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい)

とにかく力を欲した。
今この一瞬だけでもいいから力を欲した。
蝙蝠野郎のにやけた面を変えるだけの力でもいいからとにかく欲した。

(神でも、悪魔でもいい!とにかく俺に力をくれ!)

なんて、非現実的なことを思う訳はなかった。
そんなことを祈っている暇があるなら、目の前の出来事に集中したほうがいい。

とりあえず、善後策を考える。

既に魔力は尽きた。魔法はもう打てない。
かと言ってこのままでは直撃を受けてしまう。それは絶対に回避したい。

(.....せめてもう一発。もう一発さえ打てれば、この場のピンチだけなら切り抜けられるのに.....)

・・・。

善後策を考えつつも、藁にでもすがる気持ちで、アテナをちらっと見た。

「なんかすごい風だねー( ´∀` )」
「ね、姉さまは落ち着いておるのう.....。不安ではないのか?」
「だいじょぶー!きっと歩が守ってくれるよー(*´∀`*)」
「な、なら良いのだが.....」

相変わらずのバカ面をしている。でも、かわいい。
何にも考え付かなかったが、それでも冷静にはなることができた。

そして冷静になると同時に、ふと思った。

(どうして俺は、魔力が尽きただけで魔法が打てないと思っているんだ?
 普通の人達ならそれが当てはまるんだろうが、俺は世界の理から外れた凡人なんだぞ?)

ここにきてアテナ的発想が花開いた。
常識で考えるからダメなんだ。アテナのようにバカになることが大切なんだ。

世界を常に変えてきたのは、『バカ』という名の天才なのだから。


俺のサンドストームちゃんが壊される寸前だが、それでも全神経を集中させる。
感覚を研ぎ澄まして、体の隅々にまで意識を向ける。今なら1km先の物音すら聞き取れそうだ。.....無理だけど。

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

そして遂に!

───バァァァァァアアアアアン!

俺のサンドストームちゃんが破壊されたようだ。
二つの親子台風が目の前にまで迫り来る。

絶体絶命!










そう思われた時に、遂に.....、遂に.....、見つけることができた!

体の奥の、更に奥に隠された深遠に潜みし謎の力。
触れると活が入り、体全体に沸き立つ力という名の力。

溢れんばかりにみなぎる生命力に.....、押し寄せる快楽の波に.....、俺の意識は限界寸前だった。

「今なら何でもできそうだ!」
「やや!?そ、その絶技は!!」

俺の異変にどうやらバットも気付いたようで、驚きの表情を向けている。

(やった!それだ!その表情が見たかったんだ!)

それがとても愉快だった。
それがとても痺れさせた。
それがとても心地よかった。

だから俺は.....

「力だ!もっと力が欲しい!!もっと.....、もっと.....、もっと力を寄越せ!!!」

止まれなかった。
止まりたくはなかった。
止まらせてはもらえなかった。

「歩Σ(・ω・*ノ)ノ!?」
「主!?」

どうやらアテナ達も俺の異変に気付いたようだ。
俺は今、どんな顔を、どんな姿をしているのだろうか。それすらもわからない。

ただわかるのは.....

全身にみなぎる力の奔流と力で満たされていく快感だけだ。

「危険です!危険ですぞ!その絶技だけは絶対に使ってはいけません!それを使ってしまうと.....!」

バットが何やら騒いでいるが、俺の耳には何も届かない。

「.....!」
「.....!」

もはやアテナやドールの言葉すらも俺の耳には届かないみたいだ。

・・・。

まばゆい光とともに力が俺を包む。完了だ。
力が今すぐにでも放たれたいのだと、暴れたいのだと騒ぎ立てている。

そして、

「これが俺の力だああああああああああ!サンドストーーーーーーーーーーム!」

暴れる力を、抑えきれない衝動を、魔法に乗せてそのまま解き放った。

・・・。

凄まじい威力だったのは見えていた。
二つの親子台風などまるで無きが如く飲み込み、霧散させていた。

そう、そこまでは見えていたのだ。
しかし、それ以降はどうなったのかはわからない。


魔法を解き放ったと同時に、生命力が.....、いや、存在じたいがなにか抜きでたような感覚がして、俺はそのまま意識を.....、いや、存在を失ってしまった。


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『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

装備:殺戮の斧

女神ポイント:73540【↑12000】(一週間分)

【一言】歩~?そんなところで寝てたら風邪ひくよー(。´・ω・)?
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アユムの所持金:3402752200ルクア【↑1400000】(一週間分)
冒険者のランク:SS(クリア回数:4回)

このお話の歩数:約211000歩(一週間分)
ここまでの歩数:約25151100歩
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『アユム・マイニチ』 レベル:7091【↑29】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人/竜殺しドラゴンスレイヤー
所有:ヘリオドール

体力:7101(+7091)【↑29】
魔力:7091(+7091)【↑29】
筋力:7096(+7091)【↑29】
耐久:7096(+7091)【↑29】
敏捷:7351(+7091)【↑29】

装備:旋風の剣(敏捷+200)

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知/隠密
   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有
   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性
   状態異常耐性

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.1
   ダンジョンマップLv.3
   検査Lv.3
   造形魔法Lv.3
   奴隷契約Lv.2

固有:ウォーキングLv.7091 6409/7092
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後書き

次回、主人公死す!?

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今日のひとこま

「なぁ?いきなり強いのが来たんだが?こういうのは定番があるだろ.....」
「それは勇者の場合でしょー( ´∀` )」
「なにか?俺が凡人だから悪いのか?」
「とうぜーん!勇者ってのはねー、力だけじゃなくて運もたかいんだよー!
 おやくそく展開はほとんどが勇者の運が影響してるんだー」

「そ、そうなのか.....」
「そうそうー。最初から魔王が勇者を討伐しにきたらこまっちゃうでしょー(。´・ω・)?」
「物語が始まらないもんな」
「うんうんー。だから勇者はご都合主義度がはじめからMAXなんだー」

「MAX!?」
「じゃなきゃー、うまい具合にちょうどいい敵が現れたりしないでしょー( ´∀` )」
「ど、どういうことだ?」
「私が魔王だったらー、勇者現る、なんて情報が入った瞬間に最強の部隊を送り込むもーん」

「そ、それじゃ物語が進まないだろ」
「だからご都合主義度がMAXなんでしょー(。´・ω・)?」
「じゃあなにか?勇者ってのは実は運がいいぬるゲーだと?」
「それだねー!さいしょから最強設定みたいなもんだよー!初心者も初心者~!
 それに比べたら歩なんてハードモードをしているようなものだからねー!よっ!プロゲーマー(*´∀`*)」

よせやい!照れるだろ!
な~んて思うかよ!26でプロゲーマーって.....。もっと安定した職業がいいわ!(※あくまで個人的見解です)

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