歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第33歩目 はじめてのピンチ②!雇用契約3日目

前回までのあらすじ

ラズリさんの色仕掛けから貞操を守りきった!

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ダンジョン46階層

「恐らく50階層かもしれません」
「なるほど。となると後少しですね」

ラズリさんの色仕掛けから逃れた俺は、引き続きダンジョン探索を続けた

「歩~。どういうことー?」

アテナは相変わらず分かっていないらしい。
そもそも説明を聞いていないから当たり前なのだが。

ラズリさんが言うにはこういうことらしい。
ダンジョンにはダンジョンマスターがいて、国から認可を得てダンジョンを経営している。
そしてダンジョン事にランクが設けられていて、ランクによって最下層が決まっているみたいだ。
俗にF~Eランクのダンジョンは、30~50階層が一般的らしい。

俺達が今いるのはEランクダンジョンだ。
つまり今46階層なので、最下層は恐らく50階層になる。

「ふ~ん。じゃあお宝いっぱいなんだねー!」
「なんでそうなった!?」
「間違いではないですよ。未到達階層ならではの特権ですし。ただ.....」

ラズリさんが言い澱む。

「.....魔物部屋の危険性もある、ということですよね?」
「さすがですね。その通りです」

魔物部屋。
ダンジョンは通常、階段、通路、大部屋の3種で構成されている。
基本的には通路で戦闘を行っているのだが、例外的なのがボス戦で、これは大部屋で行われる。
この大部屋、実はボス以外にもお宝部屋や魔物ひしめく魔物部屋などもあるらしい。
ちなみに今のところはボス以外見たことはない。

「EとかFクラスのダンジョンではお宝部屋はまずありません」
「どうしてです?」
「基本的にお宝とは冒険者の遺留品などを指すからです。死亡率の低い低ランクダンジョンではほとんどないと言っていいでしょう」

・・・。

遺留品をお宝扱いってのはどうも馴染めないな。
しかしこうなると、ボス部屋以外の大部屋は基本的に魔物部屋と考えるべきか。

「魔物部屋ってのは具体的にどういうものなんですか?」
「文字通り、魔物がひしめく部屋だと言われています。私は遭遇した経験はないんですが、話を聞いた限りだと20~30匹の魔物がいるとか」

となると、現状の魔物グループが一気に3グループか。
今は46階層だから、魔物は9匹出てきている。

ダンジョンには法則性がある。
5階層ごとに魔物の出現数が変わる。
1~5階層は1匹
6~10階層は2匹
11~15階層は3匹
以降、5階層ごとに1匹ずつ増える。

魔物を一撃で倒せている俺だからこそ、あまり大したことはないように思えるが、実際は大変なことだ。
ラズリさんの言う通り、確かにPTを組んでダンジョンに入らないと命取りになるかもしれない。

「あれ?ラズリさんはなんで魔物部屋に遭遇したことないんですか?」
「それは私が探索者だからですね」

いやいや。元探索者でしょ。
今はギルド職員なんだから。

「にしても、探索者って万能ですね」
「ダンジョン探索には必須ですからね。どうです?オススメですよね?彼女に欲しくありませんか?」

またかよ.....いい加減にしてくれ。

「それでどうやって回避してるんですか?」
「あれ?スルーですか?可愛い彼女がアピールしてるんですよ?」

早く話せ!全部スルーだ!
あの色仕掛けに堪えた今、この程度なんともない!

「・・・」
「.....ぐすっ。無視しないでください。悲しいです」
「ちょっ!?ええええ!?む、無視してないですよ!?」
「じゃあ.....」
「?」
「彼女にしてくれますか?」
「それはごめんなさい!」
「な~んでですか~!彼女を悲しませたんですから、なんでもお願いを聞いてくれるのが彼氏ですよ!」

はぁ.....あの手この手と手を変えてくるとは。
ラズリさんは本当にブレないな。まったく。


□□□□

「えへへっ。(ちらちらっ)」
「あ、あの。ちらちらっ見るのやめてもらえます?恥ずかしいですから」
「アユムさん、赤くなっちゃってかわいい❤」

かわいいって.....俺はラズリさんより年上なんだけど?

結局(今は)彼女を諦めてもらう代わりに、手を繋ぐことを要求された。
既にアテナと手を繋いだ経験があったので大丈夫だろうと思っていたが.....は、恥ずかしい。

それにしても.....やっぱり女の子の手って柔らかいな

「そ、それでどうやって回避してるんですか?」

「探索者のスキル【罠探知】ですよ。通常大部屋はボス部屋以外はわからない仕組みなんです。所謂、隠し部屋みたいになってるんです」

なるほど。だから今まで見たことないのか。
.....あれ?もしかしたら?

「この前の罠ってもしかしたら.....」

「察しがいいですね。その通りです。
 あの罠は実は魔物部屋に繋がってたんです。
 既に攻略されてたから問題なかったですが」

アテナとラズリさんがポカしたあの罠が実は死地への誘いとか.....
こ、怖すぎる

「でも普通は【罠探知】を持ってないと隠し部屋なんて簡単に見つからないですし、見つけても【罠探知】で危険かどうか判断できるので無茶さえしなければ問題ないですよ」

危険が分かるとか【罠探知】便利だな。

「あれ?危険が分かるなら誰も近づかないのでは?」

「魔物部屋の掃討はお金になるんですよ。大量の素材に、報告報酬と掃討報酬などの特別報酬があるんです。だから危険を顧みずに挑む冒険者も多いんです。あ、あの.....アユムさんは絶対無茶をしないでくださいね?お願いします」

ラズリさんは少し影のある笑顔で微笑みかけてきた。

【罠探知】で危険と分っても、無茶するやつがいるんだろう。
それにしても金の為か.....

このへんは正直理解できない。
命と金、どちらが大事かと聞かれれば、当然命だ。
金と答えるやつもいるだろうが、普通は少数派だろう。

でもここは、いつも死と隣り合わせの異世界だ。
ものの考え方が俺達異世界人とは全く違うのだろう。
死ぬ覚悟さえできていれば、命よりも金のほうが価値が高いのかもしれない。

この先、この世界の人達とPTを組むような機会もあるかもしれない
このあたりの意識を改めて考えないといけないだろう。

「安心してください。俺も死にたくないですから」
「ありがとうございます」
「それに.....」
「なんですか?」
「仮に魔物部屋に運悪く遭遇しても、俺がアテナとラズリさんを必ず守りますよ」

そんな俺の言葉に、ラズリさんの顔が曇る。

「.....命を懸けてでも、ですか?」

「命は懸けません。さっきも言いましたが死にたくないですから。
 命を懸けない程度に、それでも必ず二人は守るつもりです」

命を懸けてでも守るとか無理!それ勇者の役割だから!
俺は危ないようなら避けるし、危なくないと判断したら逃げる!

「ふふっ。なんですか、それ?でも.....安心しました」

ラズリさんは本当に安心したのか、今度は影のない笑顔でにこっと微笑んできた。うん、すごくきれいだ。

本当ちゃんとしてればすごく美人なんだよな~。ぺったんこだけど


□□□□

「とりあえず魔物部屋は回避する。これでいきましょう」
「はい。それがいいですよ。
 まぁ【罠探知】使わない限りは分からないでしょうが」

こればっかりはさすがにアテナでも大丈夫だろう。
おとなしく聞いていたみたいだし。

「だそうだ。アテナ。勝手な行動するなよ?」

・・・。

お、おいおい。ま、まさかな.....

俺はありえないだろ!と思いつつも、アテナがいると思われる場所に振り向くと.....

・・・。

「ちょっ!?またかよ!?あの駄女神どこにいきやがった!?」
「ええええ!?どうも大人しいと思ってたらまたですか!?」

何度目だよ!
そしてこの展開はまさか......

俺が嫌な予感を感じていたら、ずっと先のほうからアテナのバカっぽい声が聞こえてきた。

「歩~!見てみてー!変な壁があるよー!
 ほらほらー!壁が透けるのー!変なのー!
 きっと隠し部屋だよねー?お宝ざっくざくー( ´∀` )
 私が見つけたんだから、私のでいいよねー?」

案の定かよ!あの駄女神!
期待を裏切らないな!

俺とラズリさんはアテナのもとに急いで走り出した。

「いいか!?絶対その先に行くなよ!?」
「そうですよ!アテナさん!絶対行っちゃダメですからね!」
「行っちゃダメー?なんでー?.....あっ。分かったー!」
「「?」」
「私のお宝横取りするつもりでしょーヽ(`Д´#)ノ
 いくら歩やラピスでも許さなーい!」

やばい!あの駄女神、本当に一人占めする気でいる!
どんだけがめついんだよ!

ただ疑われない為にも、これ以上は刺激しないほうがよさそうだ。

「......横取り?アテナさんは私達を疑っているんですね!?
 だったらこうすれば!」

ちょっ!?ここにもやばいのがいる!
この人、あの時になにも学ばなかったのか!?

そしてラズリさんは、意を決したかのように叫んだ。

「アテナさん!お宝は仲良く山分けにしましょう!」
「ちょっ!?あんた、なに言ってんの!?」
「山分けイヤー(´-ε -`)全部私のものだよー!じゃあねー!」

───スゥ

そして、アテナの姿が壁の向こう側に完全に消えていった。

「......え!?」
「え!?じゃねえ!お前、バカか!?」
「ふぐぅ~~~~~。ご、ごめんなさい~」

俺に頬をつねられたことで、ラズリさんが喘いだ。
このバカな展開、もう嫌だ。

しばらくすると、

「うぎゃああああああああああああああああああ!
 あああ歩ぅぅぅ!助けてえええええぇぇぇぇぇ!」

駄女神の、女の子が出しちゃいけないバカな叫び声が壁の向こう側から聞こえてきた。

正直しばらくはほっといてもいいような気がしてきた。
バカにはいい薬だろう。
あの駄女神ならそうそう死なないだろうし。


しかし、この後すぐに俺は後悔することになる。

「あ".....む"。ば.....ぐー.....じゃう"よ"ー!」

アテナから真に迫る叫び声が聞こえてきた。
微妙に声が聞き取りにくい。

まさか.....!アテナの身になにかあったか!?
想像以上にやばい状況になるのが早い!

「ラズリさん。今から魔物部屋に突っ込みます!
 俺から絶対に離れないでください!」

「わ、わかりました」

そして俺とラズリさんは、意を決して魔物部屋に突っ込むと.....

魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。魔物。

・・・。

「.....え?な、なにこの数。し、信じられません」

ラズリさんが驚くのも無理はない。

今、俺の目の前には、20匹や30匹とは到底思えない数の魔物が部屋いっぱいにひしめきあっていた。


俺は背中に冷たく嫌な汗をかきながらも思う。

冗談じゃないぞ、この数.....2、30匹って話じゃなかったか?
.....アテナ、助けにいくのが遅くなってすまん!


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『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

女神ポイント:3000【0】

【一言】あ、、ゆ、、む、、、、、
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アユムの所持金:234000ルクア【±0】
冒険者のランク:A(クリア回数:1回)

このお話の歩数:約5200歩
ここまでの歩数:約1025800歩
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『アユム・マイニチ』 レベル:1431【↑3】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人

体力:1441(+1431)【↑3】
魔力:1441(+1431)【↑3】
筋力:1436(+1431)【↑3】
耐久:1436(+1431)【↑3】
敏捷:1491(+1431)【↑3】

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:隠密/偽造/捜索/吸収/浄化魔法
   治癒魔法/共有

Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知
   物理耐性/魔法耐性/状態異常耐性

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.1

固有:ウォーキングLv.1431 233/1432
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後書き

次回、本気の歩さん

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今日のひとこま

「山分けのなにがいけなかったんでしょうか?」
「アテナが山分けとか絶対しませんから」
「まさか.....アテナさんは一人占めとかしませんよ」
「絶対します。アテナはそういうやつなんです。
 賭けてもいいですよ?」

「本当ですか!?じゃあ賭けましょう!」
「え?冗談のつもりだったんですが.....なにを賭けるんです?」

「私が勝ったら、アユムさんに私を貰ってもらいます!」
「あんた、諦めたんじゃないのかよ!?」
「まぁ、いいじゃないですか♪アユムさんはどうします?」
「.....俺が勝ったら、ラズリさんは俺をきっぱり諦めてもらいます」

大人をナメるなよ!小娘!不用意な発言を後悔させてやる!

「じゃあ、俺は、一人占めする、に賭けますね」
「わかりました。私も、一人占めする、に賭けます」
「は?」
「同じほうに賭けたらダメなんてルールないですよね?」

それじゃ賭けにならないだろ!

「ふふふふふ。これでアユムさんに嫁入りできます」
「俺も勝ってるんだから諦めてください」

結局なにも変わらなかった。


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