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朝虹

ゆりなとりさ

前章 村本 晶子

  「私ね、岡崎さんの向かいに住んでるんですけど、まさか岡崎さん家で殺人事件だなんて…」
   岡崎家の向かいに住む村本晶子はハンカチを軽く口に当てながら警察の質問に応じていた。午前5時20分。東北の冬というだけあってまだ辺りは暗い。
   「え、どんな家族だったかって?別にどこの家庭とも変わらない普通の家族ですよ。兄弟が5人もいて多くてね、いつも楽しそうでしたよ。1番下の妹…あ、由夏ちゃんは来年中学生なのに甘えん坊で本当に可愛いんですよ。おばさんこんにちは、なんて私が朝、庭の掃除してると毎日挨拶してくれるんです。由夏ちゃんダンス習ってたんですけどね、確か…由夏ちゃんが小学校5年生の時だったと思うけど…私将来アイドルになるんですとか言ってダンス踊ってくれた時もあったんです。私、由夏ちゃんのファン1号らしいです。」
   晶子は大層ご満悦な表情を浮かべる。
   「あとね、1番上のお兄ちゃん?琥珀君はほんとに優秀でね、近所でも評判だったんですよ。私の孫が同じ年だったんだけど、塾の模試かなんかでいっつも上位の方にあの子の名前があって、私がいつも孫とあの子を比べるものだから、よく娘にに怒られたんですから。私、実はあの子の将来にすごく期待していたんです。」
   「それは他の方々もおっしゃっていることですね。相当優秀だったんだなー。」
   警察は2人で何かを確かめ合うように頷き合った。
   「他に確か、お姉さんが2人と、弟が1人、いたということですが。」
   警察の問いかけに晶子はすぐに食らいつく。
   「そうそう。1番上のお姉ちゃん、愛梨ちゃんはほんとにべっぴんさんでね、上の4人はみんな同じ中高一貫校に通ってたんだけど、その学校のパンフレットのモデルとかやってなかったかしら。次女の玲奈ちゃんはほんとにしっかりしてて、吹奏楽部の副部長、やっましたよ。ほら、あそこの吹奏楽部、厳しいって話題だったじゃない?でもね、地域の演奏会で聴く演奏はほんとにお上手だった。」
   晶子は演奏会の余韻に浸っているようだった。
    「あとは次男の太賀君ですかー。あの子、ちょっと変わってたっていうか…1人だけ顔立ちも性格もほかの4人とちょっと違いましたね…。あ、別に悪い意味で言ってる訳じゃなくて、寧ろ顔立ちは一番整ってたんじゃないかしら。性格は、なんか肝が座ってるっていうか、鋭い分析力があるとか言ってたのは琥珀君だったかしら。」
   この家族について何かを感じ取ったのか、警察は大きく息をついた。5人もの子供を養う家庭の両親はどんな人だったのだろうか。
    「お父さんとお母さんは至って普通の方達でしたよ。お母さんはお父さんよりも若かったわ。確か10歳弱は離れてたんじゃないかしら。あ、そこまででは無かったかも知れません。ふふ。でもね、とても仲が良さそうで夫婦旅行もたまに行ってるくらい、喧嘩とかまるで無縁って感じでしたよ。まぁ近所に住んでるってだけだから本当はどうだったかは知りませんけど。だから本当に誰が誰を殺したのかなんて想像もつかないし、そもそも殺人事件が起きたなんて未だに信じられないわ。何かの間違いじゃないの?本当に家族内で起きた事件だって確実なの?」
    これで3人目の聞き込み調査となるが、誰もが揃って口にした。「岡崎さんの家で殺人事件が起きたなんて信じられない。」岡崎家の家の前はメディアや野次馬で溢れていた。この事件の真実はまだ何も分かっていない。残された家族達も一向に口を割ろうとしないから、これは長い戦いになりそうだ。

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