努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す

九九 零

ふむ。全校集会か

バマリスはループの魔法によって一撃で倒された。

「アハッ!やめといた方が良いって言ったのにね」

メーテルは床に倒れ伏すバマリスを笑いながら突っつき、立ち上がる。そして、バマリスの生徒達を見やった。

「君達はこんな風になっちゃダメだよ。相手を侮るとこうなっちゃうからね」

ふむ。良い事を言うものだ。

まさか、この為だけにバマリスをループと戦わせたのか?
いや、それ以外にも何か理由がありそうだな。

まぁ、良いか。
詮索したところでオレには何も得はないのでな。

倒れたバマリスは白衣姿をした謎の筋肉に連れていかれて数分後。他の生徒達も集まり始め、ようやく全校集会が始まった。

『えー、ですからして、生徒同士の決闘は禁止されています。もし、決闘を行う場合は、教師立会いの元で行って下さい。次にーー』

今はラッスカンと名乗ったCクラスの教師が声量を拡大する魔導機を片手に長々とした話をしている。
内容は、校則についてだ。
しかしだな、一つ一つ説明しなくても良くはないか?

余りにも話が長い為に、大半の者は虚ろな目をして虚空を見つめているぞ。

「うむ。長いであるな」

「ふむ。確かに、長いな」

オレの所属するFクラスは体育館の左端。右にEクラス。Dクラスと続き、右端にSクラスが居る。そして、一年が先頭で後方な程に学年が上のようだ。

それらを観察していると、一つ気が付いた事があった。
学年とクラス毎によっての見分け方だ。

普段、服装を全く気にしないオレだから気が付くのが遅れた。

オレ達は、黒を基調とした制服に白い無地の校章を身に付けているのに対し、隣のEクラスは青を基調とした制服にEの文字が描かれた校章を着けている。

1年。同学年は全員が紺色の刺繍が施された制服のようだな。
2年は青色。3年は赤色の刺繍がされている。クラス毎によって校章が違うだけのようだ。

しかし、Fクラスのみ黒色の制服を着ており、刺繍の紺、青、赤で学年を見分けているみたいだ。

「うむ。次は我の番であるな」

観察をしていると、いつの間にか長い話が終わり、他のクラスの教師も話を終えていたようだ。

そして、ループが自分の番だと呟いて壇上へと立った。

前の教師から声量拡大の魔導機を受け取り、グルリと生徒達を見渡して一言。

『貴様等の知能は低すぎる』

たった一言で、体育館にどよめきが起きた。

ある者は驚愕に目を見開き、ある者は頷き賛同する。そして大半の者が反論を口にした。

だが、それらを気にする事なくループは話を続ける。

『知恵を求めし者よ。我が元へ集え。さすれば、我が知識を授けよう。我が名はループ。知恵なき劣等者よ。果てなき知識を求めよ』

一瞬。ほんの僅かな間。体育館内は静寂に包まれた。次の瞬間。ドワッと罵声の言葉があちこちから吐き出された。

他の教師達と比べれば、余りにも短い。だが、心にトゲが残るような自己紹介だな。

昔。オレがループであった時にも同じような自己紹介をした覚えがあるが、その時は皆が自分の無能さを理解していた覚えがある。

絶滅寸前の人間達を片っ端から集め、国を作らせ、自己防衛できるだけの知識を与えた。
まぁ、オレがループとして行ったのはそこまでだったがな。

「戻ったのである」

「ふむ。素晴らしい演説だったな」

「この程度は朝飯前である」

「それもそうだな」

ループは人を煽動するのが得意だったな。
そう言う者として存在した覚えがある。

ハッキリとした記憶はないが『確か』そうだった筈だ。

『次は、学院長からのお言葉です』

む?壇上に立っている女性教師が何かを言っているが、ループの自己紹介の余韻が残っているのか、周囲が騒がしくてハッキリとは聴こえぬな。

それでも事は進み、メーテルが壇上に立った。

いつものような無邪気な笑みを浮かべながら、大きく口を開きーー。

『ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

大声量で叫んだ。

オレとメーテルを除く全員が、余りの煩さに耳を塞ぐ程の声量だ。
教師達と数名の生徒達は事前に耳を塞いでいたみたいだが、不意打ちを取られた生徒達は耳を塞いで固まってしまったようだな。

『うんっ!静かになったねっ!それじゃあ話すよ?えーっと…何話そうとしたんだっけ?』

視線を、先程壇上に立っていた女性教師に向け、一言二言会話をした後、真っ直ぐに前を向いて話し始めた。

『そうだったねっ!うんっ!新入生の諸君!入学おめでとう!それと、無事に進学できた諸君!おめでとうっ!』

片手間に拍手をして、話に戻る。

『さて、色々と話したい事を考えたんだけど全部忘れちゃったから、覚えてる事だけ話すね』

一瞬。メーテルはオレとループへと視線を向け、次にSクラス側の方へと視線を向けた。

『今年の新入生の中に化物が混ざってるから、気を付けるようにね。あと、ループさんには敬意を払うようにっ!以上!』

話し終えると、ポイッと女性教師に声量拡大の魔導機を投げ渡して座っていた席に戻った。

どうやら、これでメーテルの話は終わりのようだ。
学院長とは偉い存在だった筈なのだが、これだけとは…随分と手短で雑な話だったな。

これで良いのか?

いや、ダメだったようだ。

席に戻ったメーテルは女性教師に怒られて逃げていた。

『はぁ…取り敢えず、全校集会はこれで終わりです。生徒は教師の指示に従い、教室に戻って下さい』


〜〜〜


「貴様等に知識を与える前に一つ忠告がある。我が知識を得たのならば、好きに使うで良いのである。だが、決して増長するでない。知識に貪欲となるのである。…では、授業を始めるとしよう」

オレ達Fクラスが教室に戻り、全員が席に着くと早速ループの授業が始まった。

「始めに我が貴様等に教えるのは、ジョブに関連する事柄である」

ジョブ。
それは、個人の持ち得る才能を一纏めにしたモノだ。

「はい!」

手をピンッと挙げて声を発したのは、犬獣人のナナミだ。

食べ物にしか興味がないと思っていたが、案外、こう言う事にも興味があるのだな。

「何であるか?」

「ジョブって、美味しい?」

「うむ。食べ物ではない」

ふむ。
やはり、此奴の頭には食べ物の事しか頭にないのか。

クスクスとした笑いが教室に響き渡った。

「意見は以上であるな。では、再開するのである。我々、人間が持ち得るジョブには3つの種類がある」

一つ。戦士。
接近戦を得意とする者達。

二つ。魔法使い。
中距離、遠距離を得意とする者達。

三つ。村人。
全てにおいて万能であるが故に成長の遅い者達。

これらを簡潔に説明してから、ループはオレを見やる。
その意図はループが言わずも分かっている。

「そして、この学院に所属する中で一人だけが所有する特殊なジョブ。今説明した中のどれもに当て嵌まらず、論外とされるジョブーー無能。名前の通り、全てを不得意とする無価値なジョブである」

ループの視線を辿ったのか、クラス全員がオレへと視線を注ぐ。
中には憐れみを含んでいるのもあるが、大半は蔑みを含んだ目だ。

説明しなくても良い事をわざわざ分かりやすいように話したループに無性に腹が立つぞ。

しかし、今は授業中だ。
質問以外の発言をしたり、行動を起こせば、酷い目にあう。

それが例え、本体であるオレであろうとだ。

ループとの力量は同等だが、魔力量は桁違いの差があり、オレでは逆立ちしたとしてもループに太刀打ちできない。魔法で押さえ付けられるのが目に見えている。なので、勝手な行動は出来ないのだ。

ここは大人しくしておくしかないか。
なんて情けない…。

「貴様等は何を勘違いをしている?コイツは貴様等よりも遥かに強いのであるぞ?」

「は?さっきと言ってる事が全然違うじゃねぇかよ」

「君と同意見と言うのは些か不満だけど、確かにそうだ」

「っんだとゴラァ!喧嘩売ってんのか!?あ”ぁ?」

「そんなつもりはない。ただ、君みたいなのと一緒になるのが嫌なだけさ」

「っんだとぉ…」

ふむ。ウルトとハミレインの口喧嘩が始まってしまったな。
先に手を出すのは間違いなくウルトだろう。

だがーー。

「うむ。何を戯れ合っている。それだけ元気が有り余っているのであれば、貴様等二人でイクスに立ち向かえ」

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