仮面家族

奈緒

自尊心

私の妹は小さい時から
美人、可愛い、スタイルがいいの
褒め言葉三昧で育てられてきました。

奈緒ももう少し痩せたら可愛いのに
奈緒は美人ではないんだよね

麻里はこうなのに奈緒は、
奈緒じゃ無理だけど麻里は、

私はいつも劣勢の比較をされてきました。
だから、勉強やピアノで
麻里に勝つことで
自分を保とうとしていた。

でも私達姉妹は、7歳も離れています。
大人の目からしたら
同じ土俵にすら立っていないでしょう。
可愛い真っ盛りだった妹に夢中で
私の努力は認めてもらえなかった。
どんなにピアノを練習して
ままの好きな
子犬のワルツを弾けるようになっても
麻里が猫踏んじゃったを弾けば
もみ消されてしまう。
漢字のテストでいい点をとっても
麻里の描いた絵でなかったことにされてしまう。

いつも母が私のことを怒るので
小さい妹は妹ながらに
自分の方がすかれていることを
感じていたのだと思います。

私が怒られるのを見ては
柱の陰から見て
にやにや笑っていました。
同じ境遇で育っていたら
2人で助け合えたのに。

私もいつまでも生きる知恵を
学ばないわけじゃありません、
自分を貶めて
自分で自分を傷つけてでも
自分の居場所を守るため
ままの機嫌をとるために
妹を可愛がりました。

麻里ちゃんは奈緒より可愛いから
このお洋服貸してあげる。
麻里ちゃんにこのお人形かしてあげる。

心の中で、何度妹と母を
交通事故で殺したかわかりません。

その度に、こんなことを考えるなんて
自分はなんて最低なんだろう、
私はなんて意地悪なんだろうと思いました。



身だしなみを整えようと
ヘアアイロンを使えば

髪の毛にそんな時間かけるなんて
ますます馬鹿になる。

癖のある前髪を
ピンで止めると
変な髪型。田舎くさい。
前髪が長すぎてむさ苦しい。

自分を磨こうと
母の選んだもの以外の服を着ると
変な服。貧乏人みたい。

私の決めたことは
絶対に否定される。

ああ、私にはセンスがないんだ。
可愛くないんだ。

家でそう思い、外に出れば

癖でうねったままの前髪
時代遅れの洋服

周りのことは違う自分がいました。

中学の卒業アルバムは
2度と見たくない。と思うほど
暗くて可愛くない自分が写っています。

母が間違っていたんだ
と教えてもらったのは、
高校に入ってからのことでした。

物心つく頃から中学を卒業するまで
支配され続けた私の自尊心は
ゼロどころかマイナスでした。


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