《未来視》で一命を取り留めまくりました

不二宮ハヤト

第23話 満身創痍になるまで闘いました

 ビッビビビ、ビビった。怖かったーーーーーーーー!!!

 あのさ、いくらユニークスキルで死ぬ攻撃の未来わかってても………………やっぱこえぇよ!!!

 なんなのあれ!?拳圧来てたよ!?当たったら頭と胴体さよならOHになってるわ!!

 …………………なんか、二人とも目をパチくりしてるけど………………。うん………わかるよ。俺が一番驚いてるから。

 ていうかそこの一匹!なんか『オレの必殺技が!?』みたいな顔になってるよ!?

 この空気よ。
 どうしてくれるんだ。シリアス展開のはずが……………………。

 だが俺は思う。いつまでもこの時間は続くことはなく、いつかはまた攻撃を仕掛けてくる。そこで―――――


 我を取り戻した魔熊は再び攻撃を仕掛ける。

 だがコータは、空気のように避けていく。

 フッ!ハッ!フェエい!ぷぎゃあっ!?

 まてまてまて!!俺ってば…………………………すごくね?

「……フッ………フハハハハ!!!…見える………見えるぞ!!お前の行動全てが見えるぞぉお!!HAHAHAHA!!」

 魔熊の右足がコータの横っ腹を吹き飛ばす。

「痛っ!!」

 込み上げる吐き気に、口から盛大に嘔吐する。

「ゴホッ…ゴホッ!……ちょーし乗りすぎました。…ごめんなさい……」

 進化したといってもステータス的なものは全く変わりはないのか………。

 それにしても、横っ腹が痛てぇ。つい興奮して浮わついちまった。これ肋骨数本いってるな。

 コータは未だに喉の奥に残る嘔吐感と激痛が続く横腹を抱えて顔をしかめる。

 進化はしたが身体能力には変化はなく、 攻撃を食らった横腹を苦しそうに抱えている。

「そういや、死んじゃう攻撃のみだったぜ。…………短期決戦に持ち込むしかねえ」

 だがここで問題発生!!画面の前のみなさん、なんだと思いますかぁ?お答えください!

 3,2,1ハイ!

 正解は

 攻撃躱せても、倒す手段ねぇよ!!!

 考えろ、俺。今考えたら完璧バカみたいなことしてたぞ。攻撃手段がなく、条件付きの回避で自惚れてた。そして回避もまともにできないほどのダメージを負ってしまった今。くそ、やらかした!なんで考えなかったんだ。さっきから考えてても全く作戦が思い浮かばねえ。てかまず、倒せるのかよあんなデカ物。

 作戦どころか倒すビジョンすら浮かばねえ。

 コータは自分の融通の利かなさに心の中で舌打ちする。

 目が合った。

 魔熊ではない。

「………………………イリス…………………」

 なんだよ、お前のその顔。さっきのお前とは全然ちげえじゃねえかよ。

 ゆっくりと立ち上がる。

 フラフラして、今にも倒れそうだ。

 ああ、そうだ。俺はいつも大切なことを見失う。俺が何を一番にして何をどうしたいか。

「たくっ……本当に俺は不甲斐ねぇな」

 コボウの先を魔熊に突き付けて……

「死ぬなんて微塵も考えてねえ!だからこんな茶番さっさと終わらせて……俺・達・は明日を迎える!!!」


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 そこからは全てが一瞬だった。

 魔熊は一瞬でコータの目の前に移動する。その速度は疲弊しているが、私でさえ目で捉えるのがやっとのこと。

 そこから勢いに乗った高速の豪腕攻撃を繰り出す。

 ダメッ!!!

 イリスは心の中で叫んだ。

 だが予想外なことに、満身創痍で今にも倒れそうなコータは先ほどと様にまるでわかっていたようにスルッと回避する。

 さっきからどうして避けられているのか、全く意味不明で理解が追い付かない。

 するとコータは空いている左掌を突き出した。まさか――――――――

「コータさんっ!!魔法を使っちゃだめです!!今度こそ死んじゃ――――」

「ラスタぁぁぁああああああああああ!!!」

 コータの左掌から光初級魔法の域を遥かに超えた光量が溢れ出す。イリスは思わず目を細めて、手で覆いかぶせる。

 コータさん…………………!どうか……………


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「ラスタぁぁぁああああああああああ!!!」

 うっわ、すげえ光ってる。バ○スも顔負けだな。俺視点で言ったら、すげぇ光ってるけど、なんか見えるんだよね。固有スキルでバカ光るとこの利点がでかくなりすぎる。

 ラスタやっぱりサイコーだわ。

 途中イリスが魔力切れでどうだとか言いかけてたけど。固有スキル:ラスタの神意によって消費魔力量が100分の1になっているのだー!ということは。3発でKOしていた俺は300発以上をフルパワーで打つことができるのか。……なんか俺、眩し過ぎるな。

 そして、熊の攻撃を避けて至近距離でラスタを打った理由ワケ。それは……

「くらえ!森のくまさん!!コボウストレートぉおおおおおお!!!」

 熊に会った時の撃退方法!鼻を強打する!!母さんには効かなかったが野生の熊なら効くはずだ!!そう、俺は熊を倒すことだけに固執していた。倒さなくていい、相手が引き上げる程の攻撃さえ与えられれば、この場を切り抜けられるなら

 バキッ!

 ベアァアアアアアアアアア!!

 魔熊はあまりの痛さに絶叫し、あれこれ構わず暴れまくる。

 木々を薙倒し、地面を抉る程の威力が偶然コータに襲い掛かる。

 や、やべぇ。

 コータは魔熊に背を向けて緊急回避行動を取る。…が

 長く鋭利な爪がコータの背中を三つの筋を作って抉る。

「ガハッ!!」

 背中から血が噴き出て、口からは大量の血を吐血する。吹き飛ばされたコータの体は地面をバウンドして、イリスの下で勢いを殺した。

「コータさん!!」

「……よ、よう…………イリ、ス……………」

「だめ、だめ…死んじゃいや!ヒーリング!!」

 イリスは回復魔法を行使するが、一向に血が止まる気配がない。

 ベアァアアアアアアアアア!!!

 激痛が和らぎ我を取り戻した魔熊は鬼の形相でコータに近づく。それに対しイリスは、一歩でも遠ざかろうと、コータを抱えて這いずりながら距離を取る。

「くっ………」

 魔熊が腕を振りかぶる。

「!…………………」

 イリスはコータを包み込むように覆いかぶさる。

 グッと目を瞑る。



「――――――――――エアレイド!」


 イリスがそっと目を開けると。




 魔熊の振りかぶった腕が、断面図と化していた。

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