RISING
笑顔を貫く信念
弾丸の直撃を左肩に食らい、その肩は紫苑色の氷で氷結し始め、肩から血を流しながらも、歩みを止めないエゼルはそのまま真っすぐにルナへと向かう。
「わかるんだって....俺っちもこの戦争の最中、家族全員マジで失ってんだから...。俺もお兄ちゃんだったのよ。妹もいてさー....ってマジ興味無ェか~メンゴメンゴ」
撃たれたにも関わらず、ヘラヘラと表情を緩ませるエゼルに対し、ルナはため息と共に、表情を曇らせる。
「同情はしよう。だが、貴様の様にそんな過去を持ちながら平然と笑っていられる事。そして、女の私を戦士として認めぬ貴様は断固として許せん...」
何か感情を振り払うように放った弾丸は、エゼルの足元を襲い、それを躱すように避けて行くと、追う様に弾丸が射出され続け、エゼルは逃げの一手となってしまう。
そんな中、エゼルの脳裏には片時も離れぬ母親の言葉が、この状況でも流れていた。
『エゼル?どんなに辛くたって笑ってなきゃダメ!ほらスマイルスマイル。それとね、”あの人”みたいに女性に手を上げる男になっちゃダメよ?妹達からカッコいいって言われる男になんなさい?アンタなら出来る。ほら笑って?』
わかってるって....母さん。
スマイル...っしょ?
何かを決心したように、エゼルは突如立ち止まると、ルナの弾丸を薙刀の振り下ろしで真っ二つに裂くと、そのまま薙刀を砂地に突き刺し、両手を合わせ、頭を下げる。
「メンゴっ!!」
「...なんだ....?」
突然の謝罪に、ルナも面を喰らったようにライフルを降ろす。
「マジで馬鹿にしてっから戦わない訳じゃないんだ。下に見てる訳でも無いんよ。それにヘラヘラ笑うしか出来ないんも、俺っちの不器用さが原因っしょ」
「どうしたと言うのだ。突然....」
目も瞑り、俯いたままただ謝罪を述べるエゼルに驚きを隠せないルナ。
それもそうだろう、今撃てば確実に仕留められる様な状況だからだ。
そんな中、ふとエゼルが顔を上げ、ルナを真っすぐな目で見つめる。
「ルナちゃんの気持ちを踏みにじってでも、それでも俺っちは。女の子に手を挙げるようなクズにはならない。それが俺っちの信念。譲れない約束。それを守り通すしかないのよん....」
エゼルの信念は硬く、武器を置いたまま、肩の痛みに耐えかね、地面に片膝を着く様に崩れ落ちた。
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