RISING
敵を知り己を知る
ガルダの大技はデュークには届かず、瓦解した不安定な岩場を飛び移る様に息を切らしながら、デュークの攻撃を防いでいく。
「貴公の一撃は無駄な一手と成った。抵抗を辞めおとなしくしていてくれ」
デュークの覚醒、幻影騎士の能力により、化かされた様な状況に陥るガルダは、西洋鎗の振り払いを弾こうと、強化された鉄パイプを差し出すが、それは”まやかし”。
目の前の西洋鎗は視界から消え失せ、世界が反転する様に背後から目の前で見た筈の攻撃を喰らう。
「ぐっ....チキショーがっ!!」
肩口の団服の布が抉られ、真っ赤な鮮血が舞い散るガルダは顔を歪ませるが、日本の鉄パイプを離さず、鋭い目付きでデュークを睨み付ける。
「貴公は、強き心を持っているのだな。エルヴィスという男はそんなお前を従わせるだけの技量を持ち合わせているというのか?」
「エルヴィス様舐めんじゃねェよ....あの人はな...総長なんて肩書かなぐり捨てて仲間の為に...身体張っちまう様な男なんだよ....」
「そうか...皮肉な物だな。そんな男が昔馴染みで親友と呼ぶ男と正面からぶつかるとは....」
「あん?ノアもエルヴィス様の事をマブだって言ってんのか!?」
「マブ....?親友という事なら。そう聞いたが」
「はっ...じゃあきっとノアって野郎もハクくてマブい野郎なんだな、エルヴィス様と同じこと言ってやがる...」
親友、そう認めながらも刃を突き合わせるこの戦を中にいながら、二人がお互いを認め合い対峙している。
片側の意思の違いではなく、きっと全く同じ感情を持っていることを、部下である二人が共有し合えた事で、戦いの最中ながら、小さな笑みを口元に浮かべると、両者同時に岩場を蹴る。
もう言葉など無用という風に、お互いが武器を振るい、武を競う。
両者一歩も引かず、互角。
傷を分かち合い、相手の、そして自らの血に塗れながらその戦いの愉悦に浸って行く。
両者の大きな違いは、当然ながら敵対する組織に所属している事。
しかし、この戦いに踏み入る前に、両軍のトップから言葉を貰った。
それはきっと、相手のトップに対する其々の思いだったのだろう。
ガルダ、そしてデュークもそのトップを王にするために、覚悟を決めた形相であり、それが自らの役目と自負している。
だからこそ、その大事な初戦に、深く浸って行った。
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