RISING

鳳 鷹弥

蒼き戦乙女



「行くぜ。ウィルフィン」


踵を返したエルヴィスは、ウィルフィンに一声掛ける。


「何だ。戦らせろと言った割には、麻痺させて終わりか」


「先を急ぐのが先決だってこと。お前とドーマンの戦い見てたら忘れてただけだ」


二人が先を目指そうと一歩踏み出そうとし、エルヴィスが刀を鞘に納めようとした瞬間、背後の黄金色の雷の網が、蒼い雷によって破られる。



「..結局....私が女だからでしょうか?だから貴方も・・・本気では戦ってくれない..」



その声に振り返った二人の前には、蒼い雷を纏ったマリアが立っていた。

その姿は羽織の下に、肩を出し、胸から腰、そして股下に掛けて蒼き衣を纏い、パレオのような布が雷を受けて逆立ち揺れており、刀の刀身そのものが蒼い雷へと変化したマリアの姿だった。

頭に追加された蒼い翼のアクセサリーがはためくように揺れると、目を開きエルヴィスを睨み付ける。


「私は帝国軍中将マリア・シリウスです。この雷轟覚醒”戦騎奔蒼ブルーヴァルキリアの力でそれを認めさせて差し上げます..」


蒼い雷と共に、マリアはエルヴィスとの間合いを詰めていく。

それはさながら蒼き騎士、戦場の戦乙女ヴァルキリー

異名通りの姿だった。


マリアの一撃が迫ると、エルヴィスはため息を吐く。

そして、それを見たウィルフィンは一度、距離を開ける。

すると鞘に納めようとしていた二刀でマリアの一撃に剣劇と共に、黄金色の雷を撃ち下す。


「マリア..少し違うぜ?」


鍔迫り合いの状態となった両者は雷が渦を巻くように奔る中、目を合わせる。


「俺は、お前が女だから戦わないんじゃ無ェ。お前に俺に対して向ける殺気が無ェからだ」


「それは...どういう事?」


「殺気の籠って無い奴なら、男だろうが女だろうが、ガキだろうが、年寄りだろうが、俺は相手にしねェ」


エルヴィスの言葉に、マリアの雷が収まって行く。

すると、エルヴィスがそこを突いて、マリアを後方へ吹き飛ばす。

しかし、マリアは後方宙返りの末、着地し、無傷で降り立つ。


「どうして..私は今、貴方の身柄を押さえようと動いているのに」


「俺ら、こんな時代に生まれたんだ。戦争に関連して、大切な人間を失う痛みを知ってる。マリア..お前はどうだ?」


マリアは、エルヴィスの問いに対して、動きを止めた。





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