RISING
鰐鎧の最硬力
「何だ。お相手してくれるなら話が早くて助かるますよ....早く壊れちまいなァ!」
振り下した大刀に更に圧力を込めるアノンだが、ガスタは鎖を張り、大刀の勢いを上手く掻き消しながら受け止める。
「ガスタ様ッ!」
シェリーが声を挙げるが、ガスタからの返答は来ない。
シルヴァもまた足を動かせず、その場で思考を巡らす。
すると、ガスタは思わぬ行動に出る。
「致し方ないですね....」
ガスタは鎌を旋回させ、アノンの大刀に鎖を巻き付け、雪道の崖に目をやる。
その動きで察したアノンは急に表情を一変させる。
「まさか....」
「恐らくそのまさかでしょう」
目尻を下げ、笑みを浮かべたガスタはそのままアノンを道連れに崖下へと舞い上がる。
「ぐっ....クソがァァァ!!!!」
アノンの叫び声と共に二人は崖下へと落下していく。
「ガスタ様ぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ....」
シルヴァは一度、目を閉じると、改めてシェリーを抱きかかえ、一目散に雪道を降って行く。
「お待ちくださいっ。シルヴァ様。ガスタ様を助けに向かいましょう....!」
シルヴァの懐で懇願するシェリーの言葉を眼を閉じたまま聞くと、シルヴァは数秒の間を置いて、声を発する。
「助けられ申した。だがしかしあのお方の力、そして能力ならば落下で死ぬ事も。奴に負ける事も有り得ません。心配召されるな姫様」
シェリーはその言葉を聞いて唇を噛む。
シルヴァの言葉は何故だか、祈りの様に聞こえてしまったからだろう。
一方、落下した崖下では、アノン、そしてガスタ共々が麓の雪景色の上に立っていた。
「さて、やはり簡単には行きませぬか。君も今は四眷属。出世をする程の実力という訳ですね」
ガスタは目の前で姿を変貌させたアノンへと声を掛けると、アノンはガスタを鋭い剣幕で睨み付けながら声を発する。
「錬鋼のギフト...覚醒”鋼鎧̪鋪鰐....だ。この硬さは持ってすれば無抵抗で落下したって傷ひとつ付かねぇよ!」
身体全体に鰐の鱗が硬き棘と共に覆われ、左手には盾にもなる棘を纏った鰐の巨大な口が装備され、大刀をも棘と鱗のコーティングが施されていた。
「それと、いつまで上に立ってる気でいやがるんだ、テメェはァ!!!!」
「その気性の変化性。そこは昔から変わらぬ様ですね」
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