RISING

鳳 鷹弥

鴉の狩り場



「後悔?その程度で良く強い言葉を宣われる物だな」


表情を崩さないノエルを一瞥してアドリーがため息を吐く。


はあ.....


一少将でこのレベル....嫌になるわ....


狩鴉かりがらすの異名を取る少将ノエル....


嫌味な奴だけど強いわ...


「今この街には他にも来客者がいるのでな。お前ひとりにかかずらっている暇はないのだ。終わりにしよう。覚醒....」


ノエルのギフトの上昇に、身構えるアドリーを前にノエルの周りを白花色の風が覆う。



「奏嵐のギフト”狩風獲鴉ハンタードレイヴン”」



漆黒と白花色の二色が織り重なる翼と、手首に足首、首元に翼と同色の鴉の羽根を模した装飾を携え、両手の鉤爪が鴉の嘴のような物へと変化した姿へと、ノエルは変貌した。

翼をはためかせ宙に浮いたノエルは、鉤爪をアドリーへと向けると、獲物を狙うかの如く、一気に急降下する。


「迅い....!」


両手から一気に空色の氷を造形し、盾に変えるとその一撃を防ごうとするも、ノエルの鉤爪は勢いにも乗り、その盾を楽々と貫通する。


「その程度の盾で防ごうなど。笑止千万.....だが....」


貫通したは良いものの、ノエルの鉤爪にアドリーを貫いた手ごたえは生まれていなかった。

その理由は、貫かれた盾が砕けて行くと判明する。


「ほう....」


感嘆の声を漏らすノエルの視線の先には、何層にも張り巡らされた氷の盾が続く光景だった。


一瞬でこの量の盾を。


流石は反乱軍の参謀を務める大幹部....


知能も強さも折り紙付きという訳か。


思考を張り巡らせたノエルに、次はこちらだと言わんばかりに空中へ後方宙返りで舞い上がったアドリーは、氷の矢での連撃を叩き込む。

ノエルはそれに反応すると、翼を使って空中を矢を避けながら飛ぶ。


「はあ...逃がさない...」


アドリーは、自身の背後へと飛ぼうとしたノエルに向けて空中の足元に氷の足場を作ると、それを蹴って身体を捩じり更に連撃を叩き込む。


「成る程。さっきまでとは別人だな。後悔はしないが、喉元に爪を立てるのは、骨が折れそうだ。だが、狩猟対象者には変わらぬぞ。アドリー。エイテッド」


アドリーの連撃を爪で幾つか壊すと、スピードのギアを上げ、風と共に地面へと降り立ち、低い姿勢からアドリーに向かっていく。






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