RISING

鳳 鷹弥

若き力の芽生え

考えが纏まった、そういう訳では無いのだろうが、思い立った様にロードは口を開く。


「俺、次はそのガスタって男を探しに行くよ」


「何か思い当たるところでもあるのか?ロード」


不思議そうに問いかけたノアを一瞥した後、ロードは思い更けるように口を開く。


「幻魔団って奴らがソイツを追いかけるのだけは解ってんだ。奴らはシェリーの命も狙ってきやがった。帝国の表の顔、帝国軍はシェリーを今は護ってる。だが裏の顔、幻魔団は逆手を打って来た。国のお偉いさんたちが指名手配してる奴と接触すれば本当の思惑も解るかも知れねぇだろ?」


ロードの言葉を黙って聞いていたノアに向けてロードは更に続ける。


「それに砂の街で反乱軍の奴らもランスを追ってた。俺は、戦乱のこの国がどういう未来を辿るのか、それをテメェの眼で見て俺なりの答えを見つける為に旅してる。だったらこのヤマも見過ごしては置けねぇだろ?」


言い終えたロードは、ノアに目を再度、向けると笑みを浮かべて見せる。その笑みを見て重苦しい空気の中、ノアにも小さくとも笑みが灯った。


会う度に、言葉に宿る逞しさが増していく。


戦い、傷つき、癒され、出会い、一歩ずつ答えに向かって


歩みを止めない。


ロードの強さ、それは男として侍、剣士としてだけで無く


一人の人間として備わり開花しつつあるという事か。


心の中で呟いたノアの視界に扉を少しだけ開き、その話を不安そうに聞いていたシェリーの姿が入ってきた。


「.....ロード様」


ポツリと零れたその言葉にロードは振り返る。


「シェリー、起きたのか。レザノフさんの看病お疲れさん。....つか、話もしかして聞いてたか?」


「はい...」


ロードは立ち上がると、シェリーとの距離を詰めて恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。


「またシェリーに助けられちまったな。お前の事、護るだなんてカッコつけてもよ、俺は弱くて一人じゃ何も出来ないってまた思い知らされちまった。....でもよ、テメェで口にしたことだ。強くなって必ず護れる強い男になるからよ。信じてくれるか?」


顔を赤らめながら、笑みを浮かべて言葉を紡いだロードの覚悟は伝わり、その言葉はシェリーの表情にも笑顔を灯した。


「ロード様....一度も疑ってなんかいませんよ!それと私のあの力、きっとお役に立てます。だから、私も付いていきます!氷の街ケベルアイスへ」


若さとは危うさ、しかし一種の強さ。立場は違えど、若者達は戦乱の世で自身の器を磨いて行く。



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