RISING

鳳 鷹弥

迫り来る不穏な風

一方、反乱軍エゼルの急襲をレザノフによって逃れたロードとシェリーは、林道へと避難していた。


「色々な所で、ギフト同士の衝突が起きているのが聞こえますね…」


シェリーが大きな岩に腰掛けながら俯き、声を絞り出す。


「ああ、激しさを増しているな。でも、俺らが落ち込んでたって意味ねぇよ。全員生きて帰るのを疑わずに、前向いてねぇと…」


座り込むシェリーの横で、大岩に寄りかかるロードが腕組みをして答える。


「ですね、笑う門には福来たる。って言いますもんねっ!」


笑顔を見せるシェリーを見て、ロードがふと疑問を浮かべる。


「てかさ…。シェリーなんか変わったか?」


「え、何か変わりました?」


ロードは、出会った頃、ドーマンから助けられたあの日、シェリーはもっと名家のお嬢様らしく、固い印象を受けていた。

それが共に時間を過ごす中で和らいで行くような印象からシェリーの変化を感じる。


「んー。やっぱり公使として来た時から、私がやらなきゃ、とか私が私が…ってなり過ぎていたのかもしれません。ロード様と出会えて…うん。ロード様だけが何だか素でいられるんです」


やんわりと顔を赤らめて答えたシェリーの笑顔に釣られてロードも満面の笑みを浮かべる。


「嬉しいこと言ってくれるじゃん。シェリーが俺で少しでも素になれるんならもっともっと…一緒にいてぇな…」


二人が見つめ合う中、ゆっくりと風が流れて行く。

その風が、二人を包むように双方の髪を柔らかに靡かせていると、風が変わる一瞬を流浪人ロードは、見逃さなかった。

シェリーの前に立つと背中の刀剣の柄に手のひらを合わせ、抜刀の体勢を取る。


「出てこいよ。居るのは解ってんだ」


「ロード様…?」


段々と眉間に皺を寄せて行くロードの眼前に竜巻が巻き起こり、竜巻が小さくなって行くのと同時に藍鼠色の羽織りを纏った女性が現れる。


「妾の存在に気付くとは中々、やるでおじゃるな。褒めて遣わせよう…そこの者…」


「おじゃる…だあ…?」


ロードはその女性の言葉に、少し面を食らった表情を見せる。


「いやしかし、バルモアの公使がまさか、恋物語を描きに態々、この国に来ていたとは、笑えるでおじゃるな…シェリー姫…」


ニヤリと笑ったその藍鼠色の羽織りの女性は、ロードの間合いを詰めながらゆっくりと歩を進めた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品