RISING

鳳 鷹弥

流浪人への期待

「俺は…」


ブラッドの不意の問いにロードは口籠もるが、拳を握り締めて改めて口を開く。


「守るさ…。理由はどうあれ、俺が守りたいって思ってるのはブレてねぇからよ」


「鎖国解放が成らない限り、お前も政府に反する反逆者に堕ちる可能性もあるが…?」


ミスター適当男とブラッドを揶揄していたロードだったが、想像に反するシュールな応答をするブラッドに気圧されそうになるが、力を込め返答する。


「俺が決めたんだ。なら御託並べるより、何をするかを考えるしか無ェんだよ」


ロードの眼に覚悟が灯りきったままの事を確認したブラッドが、スッと立ち上がりロードの前に移動する。


「なら力付けねぇとな。まだお前、覚醒の域以前にギフトの力も扱いきれてないんだろ?」


「何だよ藪から棒に…」


「覚悟を決めたのはいいが、何するかはわかって無ェ。それに弱いときたもんだ。どんなに凄い炎を持っててもそれを放つ器がボンクラじゃあ意味が無ェ」


ブラッドがニヤリと笑うのを見て、ロードは背筋に何かが走ったのを感じる。


「俺と戦え。少しだけ鍛えてやる」


「は…?」


突然の修行提案にロードは多少の間を開けて驚いた様に返答する。


「何だァ?お前その歳でツンボかよ」


「聞こえてるわッ!」


ロードが声を荒げるのを見て、サーガが笑いながらブラッドに問い掛ける。


「何ッスか?そんなに買ってるんスか?この赤髪を」


「んー…?俺はいくらで買ったんだ?コイツを…」


「ああ…ああ…はぐらかすだからもう。素直じゃ無いっスね。ブラッド」


サーガは、ブラッドの横をすり抜けソファに座り込んだままのロードの肩をポンと叩くと口を開く。


「何か期待されてるみたいっスね。やって見たらどうスか?ああ見えてブラッドは強いっスよ」


「ん…えっと…」


口籠もるロードを見て、サーガはブラッドと目線を合わせるとニヤリと笑い、部屋を後にした。

残されたブラッドは改めてロードに向き合うと、問い掛ける。


「で、どうすんの?自分で言うのは何だが、俺の心変わりは早いよ?」


「…頼む…」


ロードが覚悟を決めて立ち上がると、力強い視線でブラッドと目を合わせる。


「なら善は急げだ。行こうか?」


「ああ!」


力強く返答したロードは、踵を返し部屋を後にするブラッドの背を追って行く。

ロードにとって、価値ある修行となるのかそれは本人の意思に掛かっているのだろう。


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