RISING

鳳 鷹弥

哀しき運命の恋物語

一方、アジトに侵入したアドリーは広まったトランプの4つの絵柄が壁に幾つも刻まれたダンスホールの様な場所に出る。

「何この趣味の悪い部屋…誰の趣味かしら?」

眉間に皺を寄せながらホールを一周見渡したアドリーはステージの上に人影を確認する。

「まさか…貴女が来てしまいますなんてね。運命の悪戯という訳でしょうか」


「そうね。両軍結成から幾度も軍同士はぶつかり合ったけど…はあ…ティア…貴女とやり合う羽目になるなんて…」

ステージの上に居たのは、革命軍副長ティアだった。

決戦の火蓋は切って落とされる寸前になっているにも拘らず二人の表情は晴れない。

理由は簡単だった。

二人は元々、孤児院以来、7歳で出会った頃からの親友同士だったのだ。


「やり合うだなんて…アドリー。やはり、避けられぬ運命なのでしょうか?」


「はあ…本音は一緒よ?きっとね…。でもあの日袂を別った時点でいつかこの日は来ると思ってたわ…」


「ですわね…。私達には、革命も反乱もあってないもの…大義名分に過ぎませんわ」


二人は苦しそうに言葉を絞り出す。


だが、革命も反乱もあってないものという言葉にアドリーも俯きながら頷いてみせる。


「ええ…想い人・・・を…勝者にする為に。ティア…例え貴女が相手でも退けないわ」


「はい…私達の袂を別った理由もたったそれだけですわ。私は、ノアの理想の為に」


「ノアは、エルヴィスを超えられない…エルヴィスは昔から私達のリーダーで…私のヒーローで想い人よ」


決意を固めた様に先に眼に力を宿し、武器を構えたのはアドリーだった。

アドリーの武器は青い短弓で、小回りの利くタイプの物だった。

矢を構え、三本を素早く撃ち込み、ティアを狙う。

ティアは、目を瞑ったままその矢が迫り来るのを感じていた。

だが、その刹那ティアは槍を振り切り三本ともを弾いて見せた。


「確かに、エルヴィスは私達のリーダーでしたわ。でもノアと道を共にした以上、ノアを勝者にするのが私の務めですわ。負けられないのです、貴女が相手でも…」


ティアの武器は槍の中でも先端が十文字に刃の付いた十文字槍。

振り抜いた槍を旋回させ脇に構えたティアの瞳にも覚悟が灯り、哀しき戦いの火蓋が切って落とされる事になる。

同じ孤児院で育ち、親友だった少女二人が大人になり、恋した2人の男の決別により生まれたもう一つの決別。

願う事のない戦いも、哀しき運命に捻じ曲げられ哀しき形で交わる。

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コメント

  • 鳳 鷹弥

    一人称視点も最初は構想にあったのですが、主人公のロード以外にも構成段階でこのキャラを使いたいっ!ってキャラが増えてしまいましたので所謂三人称視点で描かないとって形を取りました。

    キャラが多くなるので、各キャラが何処かで印象に残る様にキャラ付け頑張ります!

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  • Leiren Storathijs

    やっぱり三人称視点って良いですね。僕はどうしても苦手で一人称視点で描きがちなんですが、三人称視点は凡ゆる場面を同時に描く事は出来ても、こう全ての場面を細く整理しないと何処かで矛盾が発生してしまうので難しいんですよねー。

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