RISING
語れぬ名前
いいか、ロード。
今日からお前の名は…
ロード・ヘヴンリーだ。
前まで名乗ってた名は誰にも
言わない。約束できるな…?
まあ、ロードってお前の名は
かわらねぇんだ。
いいだろ?
ロードは、宿泊宿のベッドの上で上体を起こし、起き抜けで寝癖混じりの髪を掻き毟ると、大きな欠伸をする。
「ランスの奴、人の夢によく出てくんなァ…いい迷惑だ…」
布団から身体を起こすと、洗面所で勢い良く顔を洗い、歯磨きをしながら物思いに耽る。
語れぬ名前か…そりゃそうだ…
でも…
鎖国で運命を捻じ曲げられた者…
異国民によって運命を捻じ曲げられた者…
どっちにも取れるなあ…
俺の立ち位置どうなってんだよ…
ロードは、服を着替えると荷物をまとめ宿を出て行く。
さて、風はこっちか…
またロードは、ただ風の吹く方へ一人、流れて行く。
流浪人として…。
ロードは、ストックヤードの隣町、宿屋の多く立ち並ぶ宿泊街、リスフリーズを抜けて海の方へゆっくり足を伸ばす。
すると、街の片隅に大きな風車を発見した。
「へぇ…デケェな。いい風が吹いてっからよく回ってら」
「スゲェじゃろ?あの風車…」
ロードの後ろから中年の男性が突然話しかけて来る。
「ん?うぉぉぉ…ビックリした」
驚いて振り返ったロードの後ろで、中年の男性がニッと笑顔を見せる。
「驚かせてしまったのう。若いのにあの風車に目を付けるとは中々じゃな」
「オッサンは…?」
ロードの口をついて出た言葉に、中年の男性は突然笑顔から怒った表情に変わりクイックレスポンスの代わりに拳骨をお見舞いする。
「…っ…イッテェな…何すんだよ!」
「誰がオッさんじゃあ!ワシはゲイツ!そこらへんのクソガキにオッさん呼ばわりされる程老いとらんわ!ボケェ!」
ゲイツ・ドーク
47歳 175cm 68kg
白髪混じりの短髪に、捩り鉢巻き、丸眼鏡に白のランニングシャツを着用し、作業着に紺の安全靴を履いている。
確かに中年にしては、色黒で引き締まった身体をしている。
なんなんだこのオッサン…
いきなりよォ…
「あれぇ?お父さん…何してるの?」
ゲイツの後ろからトコトコと、ゲイツの息子と思われる少年が近づいて来る。
「ん?」
その少年にロードは、目をやる。
「あれ?ロード兄ちゃんっ!」
「おう!ロニーか!」
お互いに気づいた二人は笑顔で手を挙げる。
近づいて来た少年は、入り口で出会ったロニーという少年だった。
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