邂逅の酒場 カンピオンノール

酒町“ストックアード”へと踏み入れた一行は、シェリーを馬車から降ろすと、護衛隊のレザノフ以外の兵隊が馬車を裏通りに置きに行った。


すると、レザノフが胸ポケットからメモを取り出すと、シェリーとロードに話し掛ける。


「ここの先の通り裏にある“カンピオンノール”という店の二階を取ってるみたいですね」


レザノフの先導で２人はカンピオンノールという店を目指す。


「ここか？」


「カンピオンノール。そうですわね」


ロードとシェリーが気付くと、レザノフがメモと確認し、頷く。


「入りましょう」


レザノフが押し戸を開けると、草臥れた木製の床、壁、並べられたテーブルと椅子が視界に入る。


「いらっしゃいませ」


メイド服の様な、制服を着たスタッフが近づいて来るとレザノフが髭をさすりながら近づいて行く。


「二階に予約を取っている“レイ・フィアード”の招待を受けています」


「誰だよレイって。俺らはノアなんたらに会いに来たんじゃ…んぐっ…」


ロードがレザノフの言った名前に引っかかり、慌ててシェリーに口を塞がれる。


その様子を、不思議そうに覗くスタッフの女性からロードを隠す様にレザノフが女性との間に身体を入れて笑って誤魔化す。


「何でも御座いません。招待を受けたデミー・ノリエガ。ハルク・キンスラー。ローラ・スタルツです」


女性は不思議そうに予約表を確認し、名前を確認すると、受付横の階段を手で示す。


「伺っております。どうぞ階段上のフロアです」


いそいそとシェリーとレザノフは、ロードを引っ張って階段を上って行く。


何段か上がると、ロードは口を解放されレザノフを小声で問い詰める。


「騙したんすか？俺の事。ノアなんたらに会いに行くって言ってたのに…」


「いえ。偽名ですよ。レイはノア様。ローラは姫様。デミーは私。ハルクは貴方の事です。ノア様程の大物が予約を取るのに本名で呑んでるなんてあり得ませんから」


「偽名コードネームって奴か。なんかカッケェ」


簡単に納得したロードは、何故か響きにホクホクした表情を浮かべる。


それを見た２人は、苦笑いを浮かべながら気付くと二階フロアに到着していた。


「お待ちしておりました。シェリー様、お久しぶりですわね。ご無事で何よりです」


「ティア様！」


シェリーと近づいて来たその女性がいきなり抱擁を交わす。


ロードはそれを見て、何故か目を逸らしていた。