RISING

鳳 鷹弥

赤い蜘蛛の襲撃

林道に風が吹き抜けるのと同時に、レザノフとロードが異変に気付く。


「レザノフさん…」


「ええ…囲まれている様ですな。不義の輩共に」


レザノフが先頭に合図を送ると、護衛隊の隊列が足を止め、馬車を囲む様に隊列を組み直す。


「シェリー…少しの間だ。馬車の中で辛抱してくれよ?」


ロードが馬車に近付き、扉に手を当てながら中のシェリーに呼び掛ける。


「は…はい…」


怯えた様なシェリーの返事が聞こえると、ロードは手を離し、林の木の中に目を向けながら刀に手を掛ける。


「どうした?いるのは解ってる。出てこいよ…ビビってねぇで」


ロードの呼び掛けに応じる様に無数の影が木の上から飛び出し馬車の周りに組んだ隊列を囲む様に着地する。


「こいつらは…」


ロードが驚くのも無理はなかった。


その出で立ちは異様そのもの。


白地に赤い蜘蛛が蠢くような仮面に、忍びの様な黒い服に身を包んだ集団がいたのだから。


「赤い蜘蛛…お前ら何者だ?」


ロードが問い掛けると、その集団の中から一歩前に出た小柄な忍びが声を上げる。


「知る必要はない。我等は闇に溶け、闇に任務を遂行する隠密。これ以外は世間に知られても居なければ、知られてはいけないものなんでな」


「女…?」


「女ではいけなかったか?赤髪の少年。こんな仮面を付けていてはわからないか。そこそこ胸は大きい方なんだがな」


そこそこじゃねぇ…


あのピッタリ目の服装からは


デカさがわかるっつーの…。


ロードが相手の女の胸を見て顔を赤らめていると、仮面の女が小さく呟く。


「防御札が胸だけで、動揺し顔を赤らめるとは…情けなく呆気ない…」


仮面の女は姿勢を変えずに地面を蹴ると、ロードとの間合いを詰める。


「はっ…疾ェ…」


仮面の女が腰から引き抜いたクナイと、ロードの抜刀した刀がギリギリで衝突し、鍔迫り合いを起こす。


高い金属音と共に、周りの隠密も動き出し、護衛隊との戦闘が巻き起こる。


「興味あるか?少年。この布の下の肉の塊が」


「ねぇっつーの…!つか肉の塊とか言うな!」


「夢を壊してしまったか?ではこう言おう。オッパイ…か?」


「てめぇ!!」


顔を真っ赤にして、動揺したロードは刀で思い切り仮面の女を弾き返した。


「可愛いものだな。初心な男子というのは」


「ガキ扱いしてんじゃねーぞ。あんたがやるのは解った。こっからは仕切り直しだ」


相手の陽動に容易に動揺し、仕切り直すのは自己責任であるとも取れた。

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