RISING

鳳 鷹弥

燃え盛る真紅の業火

「やはり、知らぬという事はまだ授かっている訳では無いようだな。言っただろう?まだお前のソレは剣術だと…」


月夜の光りがウィルフィンの刀の刀身を覆う漆黒の渦巻く風を強調するように照らす。


何を言ってんだ?コイツは…


何なんだ。あれは…


夢でも見ているのか?


言葉を失っていたロードの横を地面を抉るように、漆黒の風が突風となり公使館の外柵を破壊する。


「化かされた様な顔だな。赤髪…だがな。この力は何も特別な物じゃ無い。鍛錬のその先に手にする戦闘強化の力だ」


ウィルフィンは薙ぎ払うように刀を振り切ると、突風がロードを襲う。


ロードはガードする様に、その斬撃を止めようとするが、風はそのままロードを吹き抜けて、ロードの身体の至る所に、傷を刻み込む。


「ぐぁぁぁぁ…!!!」


叫び声と共に、ロードは鮮血を散らせ膝から崩れ落ちる。


「ロード様ッ!」


シェリーが窓から身を乗り出し、ロードの名前を叫ぶがロードはその声に反応すらしない。


「さて、次はお前だ公使。一瞬だ。無駄に抗うなよ」


ウィルフィンが刀を下段に構えると、後ろに控えていたレザノフが、シェリーを庇おうと走り出す。


思い出した…

似た様な光景なら見たことがある…

親父だ。親父は…

金色の炎を纏っていた…


ロードはゆっくりと記憶を紡いで行く。

ロードの父親のあの時の言葉を。


あの時は、母さんが…

野盗に襲われそうになって…

そしたら親父があの炎で撃退したんだ…


『これは、何かを護ろうとする時その人の手助けをしてくれる…。友人、家族、夢、希望…色んな護るものが存在する。ロード、お前がもし…戦う運命にあるのなら、きっといつか…お前にも授けられるだろう…』


父親の言葉を思い出し、ロードは心の中で言葉を紡ぐ。


俺が今護りたいのは…


シェリーだ!


頼む、戦う力を俺にくれェ!!


ウィルフィンが刀を振り切ろうとした刹那、ロードの身体から公使館を盾として包む様な、燃え盛る真紅の業火が噴き出す。


「わからねぇから資格がねぇとか…悪いが、今はそんなこと言ってらんねぇ!お前は止める…シェリーを救うためになァ!」


ウィルフィンは一瞬、気圧されるが直ぐ様異変を察知する。


「ククク…今奇跡的に授かった所で、まだお前には操る力も、その力に耐え切る体力も残っていなかった様だな…」


ロードの炎は最後の悪足掻きだったかの様にみるみると消え失せ、シェリーとレザノフの姿が丸分かりになる。


「くっ…クソ…ここまでなのかよォ…!」


ロードは薄れ行く意識の中で地面へ伏して行った。



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