RISING

鳳 鷹弥

逃走の為の応戦

右足1つを軸にして、クルッと回転したロードは、迫っていたドーマンに向かって左足の回し蹴りを放つ。

驚く様子もなく、ドーマンはその回し蹴りを腕でガードすると、突きの体勢を取り、長刀をロードの腹部に目掛けて打ち込む。


「くそっ…」


咄嗟に刀でそれを防ぐと、長刀を踏み台にして後方宙返りで距離を取った。


「拙者ともし、本気でやり合いたいのなら、逃げながら…ましてや…逃走の契機を作るための攻めなど止めた方が良かろう」


「助言ってやつか…敵に塩を送るなんざ…お人好しだな。アンタ」


膝をついて、ニヤリと笑ったロードは、ゆるりと立ち上がるとこちらに向かって歩を進めるドーマンに目をやる。


そして、刀を円状に振り回し当たりにあった桐箱を峰打ちでドーマンに向かって幾つか放つ。


ドーマンは長刀を振り上げ、桐箱を1つ叩き斬る。


そして、連撃で桐箱の方向を変えるとロードのいた位置に目をやるが、ロードは少し先を背を向け走って行った。


ここまで眉1つ動かさなかったドーマンだが、その行動にも動じることなく、地面を蹴ってロードを追う。


「驚きもしない分、詰めてくるのも早ェな…」


唇を噛みながらロードは打開策を考えるが、焦りで何も思いつかない。

ただ、全速力で歩を進める。

そんな、姿を見たドーマンはため息混じりに一気に加速し、ロードとの距離を詰める。


「飽きたな…。貴公との追いかけっこは…」


ドーマンは、桐箱を1つ脚で蹴り出すと、それがロードの背後を襲う。

それを察知し、脚を止め、桐箱を振り下ろした刃で真っ二つにする。


「捉えた…!」


その一瞬。桐箱に意識を持って行ったロードの隙を狙い、桐箱の破片を避けながらドーマンが最接近する。


「仕方ねぇ…!」


斜めから振り上げられたドーマンの刀を袈裟懸け斬りで応戦し、チェイスバトルから一転、両者譲らぬ鍔迫り合いに持ち込まれる。


「ようやく拙者とやり合う気になった様だな…赤髪…」


「残念…それはまだ気が早ェよ!!」


振り下ろされた分、鍔迫り合いの様相はロードに分があった。

ロードは、長刀を下に弾くと、刀を地面の割れ目に差し込み、それを軸に勢いをつけ、また回し蹴りで体勢の崩れたドーマンの横顔を蹴り飛ばす。


「うあっ…」


蹴り飛ばされた、ドーマンは桐箱の中に勢い良く衝突する。土埃が舞う中、ロードは、手を軽く挙げ口を開き、走り去る。


「悪ィ…!恨むなよ!」


ロードは通りを横切り、大通りの脇を抜けようとすると護衛に護られた、白い馬車を目にする。

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