RISING

鳳 鷹弥

謎の遭遇

「お。入ったか。にしてもまあ…いい天気だ」


あれから数キロ歩いた先にある、光の街セイントピアの東南の村が眼前に見えてくると、その村に注ぐ陽射しを見て天を仰ぐ。


田んぼ、畑と続く田舎道の先に、藁で出来た家屋が見える。

長閑、そう形容できる村の風景だった。


田んぼ道を抜けて行くと、岩の上に腰掛けている、黒いフード付きのマントを羽織る男が眼に入る。


なんだ…。このあったけぇ日にあんな格好で…


馴染まねぇな…どう見ても…


怪訝そうに歩きながら男を見ていると、目こそ合っていないが、フードが揺れ首の向きがこちらに向いたように見える。


「フフフ…なあ侍。どこに向かっている…?」


「あ…?どこって…。何処だ?」


不意の質問に、ロードは何故か聞き返す。

質問に答えられないのだ。この旅は、本人すら何処に向かっているのかわからないのだから。


「フフフ…迷子か」


「迷子じゃねぇ!バカにしてんのか…お前ェ!」


声を荒げて反抗するロードに対して、フードの男は一向に表情すら見えぬほど、フードを目深に被っていた。


「このまま真っ直ぐ西へ向かうと…商店街…。北の小山を越えた所は、光の街セイントピアの中心地。宿などはそちらで見つけた方が良かろうな…」


しれっと道を教えてくれたそのフードの男はゆっくりと立ち上がると、ロードの方へ歩を進めた。


「あ…ああ。悪いな。ありがとう…」


不意を突かれたように、感謝の意を浮かべるロードはふとある疑念を抱いた。


道に詳しい…


馴染まねぇと思ったが、こいつこの街の奴か…?


まあ、怪しい奴ってのは間違いねぇけどな。


「背格好も刀も…報知されている髪の色もまるで…噂の辻斬りだな…お前…フフフ…」


「誰が辻斬りだってぇの…!」


突如だった。


緩やかだった風が、まさしく突風となり一陣の風を起こし、2人の間を駆け抜ける。


すると、一瞬ではあったが、男のフードが揺れ、ロードは2つの事を確認する。


「お前…」


「揺れそうだ…。お前がこの街に来た事でな…フフフ…」


不思議な発言と共に、歩を進めていたフードの男がロードの位置を越えて背後に回っていった。


「おい!」と呼び止めるロードの、声も虚しく男は気にも止めず、歩いて行った。


「あいつまさか…」


腰に挿した刀と、襟足のみしか見えなかったが、赤い髪。怪しい男の発言を訝しみながら、ロードはあの、張り紙の内容を思い返していた。


「辻斬り…」

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