RISING

鳳 鷹弥

退却と疑念

「また聞いたことある話を…。てか蟹ばかりってなんだよ。けっこう豪勢じゃねぇか…」


呆れ返ったロードは溜め息混じりに口を開いた。


同じ様に呆れ返ったアドラスも、溜め息と同時に斧を背中に乗せると、背中を向ける。


「こないなアホやが、流石にこの連戦で主と戦うつもりは毛頭ない。退かせてもらうぞ。ええな?U・J…?」


「…ま、俺も今アンタらを捕らえるつもりはねぇよ…。行くならさっさと行けや…アドラス…」


突然真顔になったブラッドを見てロードも背筋が凍るような畏怖を感じた。


「なんじゃ、逃す時になってマジモードか?」


「いや…もう…再放送ってよりDVD買おうと思って諦めがついただけだ…」


半分振り返ったアドラスな、また呆れた表情を浮かべるがブラッドの表情は、何故か真剣そのものだった。


「ガハハっ…今日は掴み所のない奴によう会う日じゃのう。U・Jまたの。それと…なぜか主ともまた会いそうな気がするの。ほな…」


アドラスは、ロードを一瞥すると、部下に号令を掛け街のはずれに向かって隊をなし去って言った。


ある程度見送った、ブラッド羽織を正すと逆方向に背中を向けた。


「ちょ…ちょっと待てよ。アンタ!」


それを引き止めたのは、ロードだった。


「なんか用か…?」


気怠そうに振り向いたブラッドを見て、一瞬引き止めた事を後悔したロードだったが、意を決して口を開く。


「なんで見逃したんだ…?帝国軍にとっては敵じゃねぇのか…?」


「なんだ…仕事の話か…。なら酒がなきゃ喋らんよ」


「は…?」


一瞬の空白を遮るようにか細い声が、静寂を断つ。


「…な、なら!ウチで飲んで行きませんか?」


声を掛けてきてくれた女性を見てロードがあっ!と声を上げる。


「あんた。さっきの…」


「さっきは危ないところをありがとうございました。私はマオ。マオ・レバルー。そこの呑み亭 育鶴の女将なんです」

マオ・レバルー
呑み亭 育鶴の女将
160cm 46kg 23歳

鶴模様の紫色の着物に、薄緑の簪を刺したお団子ヘア。
瞳が大きく落ち着いた雰囲気の女性。


「お代は頂きません。皆様、せっかくですからどうぞ!」


「お言葉に甘えるとすっか!そこの記者も俺の話記事にしないなら来いよ…。んーてか、赤髪お前は未成年だから、酒はダメだぞー?」

ビシッと纏めてみせたブラッドに向けて、間髪入れずにロードが口を開く。


「俺は20歳だっつーの!!」

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