RISING

鳳 鷹弥

始まりの街の守護人

「……なにしとるて。ほんなら主は何しにここにきたんじゃ…?」


怪訝そうな顔をしたアドラスが問う。


「…?なにって、騒がしいから立ち寄っただけよ」


当たり前の様に言ってのけ、ブラッドは首を傾げる。


「え?帝国軍って言ったよな?アンタ。この騒ぎを取り締まりに来たんじゃねぇの…?」


疑問を浮かべたロードの一言に、サバネとアドラスが頷き、同意を示すと、ブラッドは閃いた様にポンと拳を叩く。


「あー…なんか忘れてると思ったらそれだよ。赤髪くん。サンキューな」



なんなコイツ腹立つ…


あっけらかんとしたブラッドにロードは、心の中でイライラを募らせる。


「で、あれだー。お前…これ以上この街を荒らす様なら許さんぞー。成敗してやるー」


力感なく言い放ったブラッドに、アドラスの堪忍袋の緒が切れる。


「なんじゃ、貴様ァ!これ以上ない程の棒読みしおってからに!バカにしとんのかこのガキァ!!!」


「もっと言ってやれ…」


全面的に同意とばかりに、頷きながら合いの手を出すロードに1つの疑問が浮かんでくる。


「てか、こいつ強いの…?」


ブラッドを指差しながらアドラスに問う。


「こらぁ…よくないよ?お兄さんに向かって指差すのもコイツ呼ばわりもー」


力感のない言葉は相変わらず続く。


「うむ…ワシも疑問じゃが、戦闘力だけで言ったら折り紙つきじゃのう」


帝国軍には、少将7名、中将5名、大将3名がおり、その上に元帥がいる分布となっている。


更にプレジアには、16の王都を入れた街があり、元帥を入れた16名を各地に配置し、守備している。


ブラッドは、こんな虚脱感の塊のような男であるが、いざ戦いとなれば、一騎当千の力を持つとも言われている戦の天才である。


「マジかよ…わかんねぇもんなんだな」


「じゃのう。で、ここが奴が守備する『始まりの街コミンチャーレ』ってゆうわけじゃ」


「始まりの街…?」


何故か、ブラッドの話を中心にした会話が繰り広げられているにも関わらず、ブラッドは大きな欠伸をすると、舞う蝶々を目で追っかけながら自分の世界に入っていた。


「なんや昔…ここがこの国の…」


アドラスがこの街の歴史を語ろうとした瞬間、ブラッドが突然大きな声を出す。


「なんだ…?」


「おい…やばいぞ。渡る世間は蟹ばかり…録画し忘れた…」




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