禁断の果実と降臨の熾天使 ~隠しダンジョンみつけたのでレベル上げ&アイテム回収に励みます~

つうばく

第2話 ある意味最強の敵

「ありがとうございました!」

 元気の良い男の店員さんが俺がコンビニから出るのと丁度のタイミングでそう声をあげた。

 ちなみにだが、外出禁止令が出ているのにコンビニに店員がいる理由は、きちんとした外出禁止令は明日からなのらしい。
 まあ単純に考えたら分かることだよな。
 今日の朝、急に言われてはいそうですか、と簡単に呑み込めるわけない。

 例えば、コンビニの店員のように、外出禁止令が出る前から働いている人だっているし、もしかしたらその人が遠いところから来ているっていう場合もあるんだからな。

 だから、正確には今日いっぱいまでが外出禁止令が出ていない日ということになるんだろう。
 まあそれは一般人には伝えられていないということなので、みんな家の中に閉じこもっているのだろう。

 それは良いとして、こんな時でもしっかりと務めている者はいるのだなと感心する俺。

 いやぁー、最近の若いのは駄目なのばっかかと思ったけれども、良いのもいるもんだねぇ。
 まあ俺も最近の若いのだけどな。そして駄目なのの象徴だけどな。



 そして俺は道中で四つん這いに倒れた。
 それも自分の言葉で。
 オーマイミー。自分を虐めて楽しいのか。

「お母さん、あの人道中で倒れてるよー」
「早く窓を閉めなさい! そんな人見たら駄目よ!」

 俺がいる近くの家ではそんな会話が行われていた。
 それも俺に聞こえる声で……。

 悲しい。悲し過ぎる。

 今の俺って、まさかの変人??


「……! 脱出」

 ーースタスタスタ。

 忍者走りですぐさま逃げました。

「これくらい離れておけば大丈夫だろう」

 ここら辺に来れば、住宅街はもう離れてるから人も少ないだろう。
 この状況って人に余り見られない方が良いんだよな。
 だって今って外出禁止令出てるし。

(正確には出てないが)

 これで通報されて、家に戻るとかしたくないし。
 それ妹に聞かれたら笑われる。


 ……いや、ここはウケを狙いに行けるチャンスと考えるべきなのか!?


 余りウケない妹を折角ウケさせれる可能性があるのだ。
 これを逃しても良いのか……!

「……って良いか。なんでそんなことで通報されないといけないんだよ!」

 危なかったわ。
 妹の笑いという最強のことのために俺が捕まるところだった。

「とっとと、公園に行こう」

 そう、昨日おかしな光景を見たのはここから近くにある、街で一番大きな公園なのだ。
 その公園はここら辺で唯一の緑が多い自然感が漂う公園なのだ。

「まあその光景を見たのは、隣の森だけれどなぁ」

 はっはっは。騙されただろう。

 すみません。調子乗りすぎました。
 かーらの……何もないです。


 急だけど膝痛い。
 片手にふたつずづ持っているレジ袋がさっきから両膝に当たりまくってるんだよな。

 そこまで多い理由?
 それは数日分のお菓子屋ジュースが入っているからなんだよなぁ。

 ジュースは主にコーラです。
 もっと言えば全部が炭酸です。

 一応、これが知られた時のために、家族を喜ばせれるものは買ってある。
 これぞ準備万端だ!


 ってことを考えている合間に着いておりました。

 ーー自然豊かな公園に

 俺は公園に着いた瞬間、自分でも何故かは分からないがおもいっきり走っていた。
 それも俺が出せる全力で。
 俺の周辺では風がビュンビュンと音をたてている。
 それが気持ち良いといつもは感じるのだが、今日は自然と感じなかった。


 池を過ぎ、遊具を過ぎ、自動販売機を過ぎ、公衆トイレを過ぎ、俺は立ち止まった。


 俺の目の前の光景は昨日とは違い、幻想的でもなんでも無かった。

 ただの、森が広がっているだけだった。


 そして、それを見て俺は無意識に歩き出していた。
 何故か。そう聞かれると俺は直ぐには応えられないだろう。

 ただ、俺はそこ……その場所に行かなければいけない気がした。
 ただのそれだけなのだろう。













「……デカイなぁ」

 急に俺の目の前に現れた木に俺は驚愕を示すしかなかった。
 ……これは比喩でもなんでもない。

 ここまで大きければ先程から見えているはずなのに、全く存在が把握しきれていなかった。
 やっと今、この木の存在を俺は把握したのだ。

「歩いてきたし、見えていても良いはずなのに」

 おっと。考えていた事が声に出ていたようだ。
 妹からも言われた事だったわ。気を付けなければ。

 そんなことを考えていた時に、ふと俺は大きな木の下を見た。

 そこは本来、木の根がある場所。
 たがそこには根などはなく、あったのは穴だった。
 丁度、車一台がはいれるぐらいの大きな穴が空いていたのだ。

「入ってみようか」

 中は本当によくある洞窟という感じだった。

 ただ、地面がぐちゃぐちゃだった。
 そのため、

「うぇ、靴が土まみれだ」

 靴に泥が付きまくった。
 洞窟にはいっているので、以下仕方ないのかも知れないが、それでもだ。

 こんなの、潔癖性で無くとも、うぇえという顔になってしまう。

 しかし、ここが何かを突き止めるためには奥に進まなくてはならいのだ。
 根性見せろ! 俺!

「......」

 あぁは言ったものの、いざ歩いていると、本当に見ていて気持ち悪い。
 もう、喋ることさえ嫌になってきた。

 なので、下を見ず、前を向いて歩く事に。
 前は真っ暗なので、何も見えないが。

 いや、それこそが良いのだろう。
 何も考えなくて済むからな。


 少しして俺は立ち止まった。
 目の前には行き道を塞ぐような壁があった。

 そう、

「行き止まり、か。けどここで終わったような気がしないんだけどな」

 何か。そんな予感がする。

 感じ的には、何かの目的のために、何処かへと繋がる入り口を塞いだ感じだ。
 それに、何かおかしい。

 周りの壁と少し色が違う気がする。
 気の所為だろうか?

 そこで俺は壁に触れてみる事に。
 だが、

「うわぁ!?」

 壁に触れようとすると、俺の手が壁をすり抜けた。
 こんな事あって良いのだろうか。

 それにどんどん、俺の手が壁の中に入っていく。

 まあ俺は危険があってはならないので、その後、直ぐに手を引っこ抜いた。

 だが、気になって仕方がない。

 ……飛び込んでみるか。

 いち、にの、さん!

「おお、身体ごと入れた」

 念のためにしっかりと身体が繋がっているかを確認。

 ……よしっ。異常無し。

 身体に異常が無いと分かったので、戻ろう。
 もしもここで戻れなかったらヤバイしな。

「いち、にの、さん!」

 うん。しっかりとさっきの場所に出た。
 向こうに戻る。
 ……戻れた。


 俺はこの行動を念のために何回か繰り返した。
 全て、両方のところに行けたので、行ききは出来ると考えて良いだろう。

 では、まだ時間に余裕があるので、探検といきましょうか。












 ……歩き続けて五分ぐらいが経ったのだろうか。
 特に何もなさ過ぎて逆に辛い。

 ただ、さっきよりは地面がじめじめとはしてないないので、靴はそこまで汚れなかったので気分が悪くなる事はなかった。

 この点は物凄く嬉しい。
 はぁ、良かった良かった。

 ただ、何もなさすぎて飽きてきたという事実はあるが。

「……本当に! 何もないなぁ。どうせなら何か出てこいよ」

 ......!? やっべぇ!
 今の完全にフラグじゃん。ミスったぁ。


 ーーペチャッペチャッ


 何か水っぽい物が跳び跳ねる音が聞こえた。
 何となくこれが何か思い当たる節がある。

 まあ、思い違いな気もするが。
 けれども、あんな幻影でつくられた壁を見たあとだと、俺が思っているのが出てきても、何ら不思議でもない。

 違うものだと願っておこう。


 ーーペチャッペチャッ!


 先ほどよりも音が大きくなった。
 俺は立ち止まる。

 こいう時は、自分から行くよりも相手が来るのを待つほうが良いと感じたから。
 イコール専門的知識などでは無く、ただの勘だ。

 だが、俺のその勘はハズレでは無かっただろう。
 相手が近づいて来るごとに、鼓動が早くなってきている。

 こんなの、自分から近づくことなんて無理。絶対に無理。
 最悪、チビってしまっていたかも。


 暗闇の中から、何かがゆっくりと跳ねながら出てきた。
 まだ暗闇が掛かっているため、全体的には分かるが、色などまでは全くわからない。


 ーーペチャッペチャッ!!


 暗闇が消え、何かが何か分かった。

 色は水色。
 身体は水風船のようにポヨポヨしている。そのためか、ずっとその場で跳ね続けていた。
 そしてその身体は奥が見えるほど、透明だった。

 ここまでで聞いたら大体の予想がつくだろう。
 現れたのは。

「ーースライム。か。一番この状況で嫌な敵だな」

 そう、何か武器でもあればスライムなどイチコロだっただろう。
 だが、今はそんなもの持っていない。今というよりも、いつも持っていないが、

 なので戦うすべがない。
 スライム相手だと、物理攻撃などは効かない。
 特に、蹴ってや殴ってなどの行為は全く効かないだろうし、それをしたら、その隙を突かれてしまう恐れがある。

 本当に、今一番会いたく無い敵が来たな。

「あぁ〜、本当についてないなぁ。昨日は超常現象を見て、今日はある意味の最強の敵と出くわす」

 マジでなんてついていないんだ。
 この勢いならば、1週間後にでも魔王とかが現れそう。

 ……それは無いか。


 なんか、気持ちが安らいできた。
 じゃあとりま、戦いますか!












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