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禁断の愛情 怨念の神

魔法少女どま子

作戦会議

 都に向かう前に、賊の拠点とやらに行くことになった。怨神対決の準備を整えるためだ。
 裏世界で生きる彼らがすんなり拠点の位置を明かすとは意外だった。それをカクゾウに聞くと、「かかってきたければくるがいいさ。殺されてもいいならな」という答えが返ってきた。よほど自分の組織に自信があるらしい。

 出発してから二十分ほどで拠点に到着した。本拠地の外観を見た私は、度肝を抜かれた。
 巨大な洞窟の内部。それが賊の本拠地らしい。出入り口からは石畳がまっすぐ伸びていて、一定間隔で鳥居も構えている。洞窟そのものも果てしなくでかい。

 意外だった。こんな派手な拠点を構えているなんて。道すがらの人々に間違いなく見つかってしまうではないか。
「クク……心配はいらん」
 同じく馬車から降りたカクゾウが、私の心を見透かしたように言う。
「さっきも言ったろう。殺されてもいいならかかってこいと」
 そう言って賊の長はチラと視線を泳がせる。その目の先を追うと――無惨に首を切られた、人の死体。そこだけではない。他にもあちこち、死体が見つかる。

「あ、あんたって奴は……!」
「おさえろチヨコ。いまは我慢するんだ」
 先に馬車から降りていたショウイチが宥めてくる。こういうとき冷静になれる彼は素直にすごいと思う。
 深呼吸して私は気分を落ち着ける。いま賊と行動をともにしているのは、あくまで共通の目的があるからだ。奴らは本来、極悪非道の人殺しであることを忘れてはならない。

 そんな私の反応をまさか楽しんでいたのか、カクゾウはふっと笑うと、
「ついてこい。大丈夫だ、おまえたちは殺さん。いまのところはな」
 と言って洞窟の出入り口に向かって歩いていく。
「はん、殺せるもんならやってみろってんだ」
 ショウイチはまったく動じるふうもなくカクゾウの後を追う。すさまじい胆力だ。

「ち、ちょっと待ってよ!」
 なかばショウイチにくっつくようにして私もついていく。
「や、やややめろって。くっつくなよ」
「ごめん。でも、ちょっとくっつかせて」
「……けっ」
 という会話を繰り広げながら洞窟に入った瞬間――

「お頭、おかえりなさいませ!」
 盛大な声が私の耳をつんざいた。
 周囲を見渡して、またしても私は驚愕した。
 室内の中心部に敷き詰められた、眩しく輝く金色の絨毯。壁面には等間隔で松明が設置されており、洞窟のなかだというのに嫌に明るい。そして――金色の絨毯を挟んで、二列に整列している無数の男たち。ざっと千人は超えている。

「うむ。ご苦労」
 澄ました顔で絨毯を進むカクゾウ。そのあとを慌てて私とショウイチが続く。
「おいおいすげえな。まさかあんた、こいつらをみんな仕切ってんのか?」
「当然だ」
「信じらんねえ。相当な勢力だぞ」
「このへんでは一番だと自負している。――そんなことより、女」
 女。なんという呼び方だ。なかばムッとしながら答える。
「なによ」
「我々は飢えた野郎どもの集まりでな。気分の害することもあると思うが我慢しろ」
「……へ?」

 言われて初めて気づいた。整列しているほとんどの男たちの目が、私の身体に向けられていることに。その視線を隠そうとする者すらいない。全員が露骨に、まるで品定めをするような舐める目線を向けてくる。
「…………!」
 鳥肌が立った。
 ショウイチの直垂をぎゅっと握り締める。ショウイチはそんな私の手を、一瞬だけだがぽんと優しく包み込んだ。

 絨毯の先には二段か三段の小さな階段があった。舞台に近いつくりになっているようで、舞台上を振り返れば無数の男たちが見下ろせる。私とショウイチはカクゾウに連れられるまま、舞台の中央に立った。
「皆の者、聞けい!」
 一瞬で場が静まり返る。男たちがピシッと姿勢を正す。
「かの怨神を討つためにうってつけの二人を見つけた! みな食い物に女に飢えてると思うが、それも明日までの辛抱だ! 怨神を討ったあとは村を喰らい尽くしていくぞ!」

 おおおおと歓声が湧く。
「さすがお頭だ!」
「男んなかの男だぜ!」
 汚い大声を発する男たち。
「なんだこりゃ。ずいぶん物騒な話だな」
「これが我々、賊というものだ」
 そう言うと、カクゾウは「ついてこい」とさらに歩みを進めた。

 広い通路をひたすら進む。入口以外はきわめて簡素なつくりだった。等間隔で設置されている松明が見られるのみで、それ以外の装飾はいっさいない。ところどころで賊たちが刀を打ち込んだり薪を運んでいる姿が見られた。

 とある扉の前で、カクゾウは歩みを止めた。
「ここだ」
 大層にも扉を設えるとは。おそらく、この本拠地でもとりわけ重要な場所なのだろう。
 扉のなかは故郷の小屋と同じくらいの広さだった。畳が敷き詰められ、その中心部に囲炉裏。すでにひとりの男が囲炉裏の前で構えていた。

「お頭。お早いお着きで。いま茶を用意させてます」
「おう」
「……そいつらが、例の?」
「そうだ。怨神討伐のための重要人物だ、わきまえろよ」
「へい」
 カクゾウは振り返って私たちに言った。
「こいつは参謀役だ。腕っぷしはクソみたいなもんだが、頭はキレる」
 頭のキレる男……。というよりは、上の人間をヨイショするのがうまい男だという印象だ。

 私たち四人はそれぞれ囲炉裏の前の御座に腰を落ち着けた。
「作戦会議……ってわけね」
「そうだ。相手は強敵だからな」
「でも……ちょっと気になったんだけど」
 と私は三人を見渡して言う。
「本当に怨神は都を滅ぼそうとしてるの? 正直、あなたたちの想像でしかないでしょ?」
「それに関しては間違いないと思っていいですわ」
 参謀役が自信満々に言う。
「例の少年――たしかあんたたちの知り合いでしたか。そいつは筆で都の見取り図を書いておったんですわ。なにかと思ったら、抜け道を入念に調べとる。何日もかけてな」
「でも……それくらいじゃ……」
「問題はここからだ」
 カクゾウが話を変わった。
「都で一番強い力を持っているのは、言うまでもなく都長だ。奴の欲は相当深い。ワシも話に聞いただけだが、金のためなら親類さえ見捨てる男だ。怨神が狙うとすればまずはそいつだろう」

 賊の長が欲深いと称するくらいの男。私も故郷で何度か都長の話を聞いたが、あまり良い噂を聞いたことはない。

「その都長の屋敷に、爆薬を置いたんだよ。例の小僧がな」
 思わず絶句した。
 爆薬――!?
「まあそんときゃ偵察させた部下が止めてな。小僧もささっと逃げちまったようだが……これが昨日の話だ」
「昨日……?」
 ショウイチが目を見開く。
「そんなに切羽詰まってんならいますぐにでも都にでも行ったほうがいいんじゃねえのか?」
「んにゃ。今日はおそらくなにもありゃしません」
 と参謀役がこれまた自信満々に言う。
「都長は今日、接待とやらで他の街で女遊びしてるんですわ。怨神もせっかく都を襲うなら欲深い奴を仕留めたいでしょう。それを踏まえると、怨神は明日、都を襲います」

 ショウイチはうーんと唸った。煮え切らないところもあるが、説得力がなくもない。

「さて、本題に入るぞ」
 カクゾウは三人を見渡して言った。
「おまえたち二人に協力してもらうのは他でもない。例の小僧を殺してもらうためだ」

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