外れスキル《引きこもり》を手に入れてしまった俺は、一見最弱なパーティーでとりあえず冒険に出た

魔法少女どま子

異世界転移したらスライムに会いました。

 俺はクズだった。
 だから死んでみた。

 顔も悪い、コミュニケーションも下手くそ、運動は苦手、初歩的な魔法も使えない。

 こんな俺が、どう足掻いたって楽しい人生を送れるわけがない。

 だから死のうと思った。

 でも自殺だとなんか嫌だ。
 それに最期くらいはかっこよく逝きたい。

 そんなとき、俺はふいに見てしまった。

 物陰で、美少女が強盗団に襲われているのを。

 俺はなにも考えずに強盗団にタックルした。
 いくらひ弱な俺でも、全力で体当たりすれば人一人ひとひとりくらいは吹き飛ばせる。

 だが相手が悪かった。

 俺は十七歳の学生。
 対して、相手は筋骨隆々の強盗。

 死角からの不意打ちはできても、まともに殺り合ったら勝てやしない。

 そう。
 そうして俺は強盗に殺された。

 俺の《勇気ある行動》によって、果たして彼女が助かったのかどうか。 

 そんなことはどうでもよかった。
 俺は自分が死ねればそれでよかった。

 満足だよ。
 このクソったれな人生を終わらせることができてさ。
  


 ――なのに、俺は生きていた。

「……は?」

 思わず変な声を発してしまう。

 どこだここは。
 強盗と命を賭けた戦い(笑)をした場所ではなさそうだ。

 宮殿。
 ふとそんな言葉が浮かんだ。

 床には赤い絨毯じゅうたん
 天井には豪勢なシャンデリア。
 壁には人物画やら風景画やらが掛けられている。

 相当な金額を投じた場所であろうことは、頭の悪い俺でもわかった。

 でも、どうしてこんな場所に……?

 きょろきょろ見回していると、ふいに女の機械音声みたいなものが聞こえてきた。

《リョウヤ。転移完了。あなたに授けられたスキルは「引きこもり」です。以上》

「……な、なんだよそれ」

 俺の懸命な呟きに、しかし返答はなかった。

 わけがわからん。
 もしかして、死んだせいで異世界に来ちゃったとか……?

 とりあえず、適当に歩いてみよう。
 なにか重要な情報が得られるかもしれないしな。

 ……ていうか、なんで俺、また生きようとしてるんだろ。
 もう完全に意識を失ってしまいたかったのに。

 そんなことを考えつつ歩を進めていると、進行先に変な奴がいることに気づいた。

 ――あれは、スライム?

 緑色のぶよぶよした液体だ。
 目も口も持たない化け物だが、俺はなんとなく、あいつが俺に敵対心を持っていることを感じた。

 マジかよ。いきなりモンスターか。ここは美少女と運命の出会いがあるべきだろ。

 ……でも。

 相手はスライムだ。つまりは、ザコ・オブ・ザコ。

 対して俺は異世界転移した身。しかもさっき、よくわからないスキルまで貰っている。 

 間違いない。
 勝利フラグがビンビンに立っている。

「ふふふ……」

 俺は含み笑いを浮かべると、眼前のスライムに人差し指を向けた。

「運が悪かったなスライムよ。俺の実力を試す《かませ》になるといい!」

 数分後、俺はスライムにボコボコにされた。

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