外れスキル《引きこもり》を手に入れてしまった俺は、一見最弱なパーティーでとりあえず冒険に出た

魔法少女どま子

全力で逃げていたらこうなった

 おかしい。
 話が違う。 

 俺は異世界転移したはずじゃなかったのか。
 神様からチートスキルを授かったんじゃなかったのか。 

 なのに。

「ぴぎー!」
 さっきの挑発に腹を立てているのか、スライムはしつこく俺を追いかけてくる。
 俺はといえば、自分より明らかにちっこい液体に絶賛逃走中だ。

「やめろおい! お、俺なんか食っても美味くないぞ! 見ろ、この貧弱な身体を!」

「ぴぎぎー!」

 しかしスライムは構わず追いかけてくる。

 勘弁してくれ。
 体力勝負は俺のカテゴリじゃない。

 自分の家にこもってぐうたら寝る。これが俺の特技なのだ。肉弾戦とかマジ勘弁。

 すると。

 ――ガチャガチャガチャ。

 なんだかよくわからない、不規則な音が聞こえてくる。

 俺は昔から勘が良いほうだった。
 相手の態度を見るだけで、そいつが俺を嫌っているのか、あるいはなんとも思っていないのか――他人より敏感に感じることができる。

 そしていま、俺はかつてない恐怖を肌に感じていた。
 やばい。よくわからないけど、なんか危険なのが来る……!

 果たしてその予感は的中した。
 一言で言うなら――骸骨戦士だろうか。

 眼球は空洞。瞳はない。
 皮や肉もない。
 元は大男だったのだろう体躯たいくに、色とりどりの防具がついている。

 俺は本能で察していた。
 このままでは、死ぬ。
 後方には緑のスライム。
 前方には明らかに強そうな骸骨戦士。

 そりゃないぜ。異世界転移したのかどうか知らないが、来たばかりの世界でいきなり死ぬなんてな。

 やっぱり俺はクズなのだ。
 生きる世界を変えたところで、その事実は変わらない……

「クククククッ」

 骸骨戦士がなんだか勝ち誇ったような笑みを浮かべた。ような気がした。
 そのまま猛然とこちらに駆け寄ると、錆び付いた大剣を高々と振りかぶる。

「ふざけるなァ!」
 知らず知らずのうちに、俺は雄叫びを発していた。
「お、俺にだってちょっとくらいプライドがあんだ! たまには……夢くらい見させろよ!」

 もう無我夢中だった。
 血塗られた禍々しい剣を、無理だとわかっていながらも、素手で掴もうとする。 

 俺は、自分の腕ごと無惨に切り裂かれる未来を思い浮かべた。
 ただの凡人でしかない俺に、こんな強そうな攻撃が耐えられるはずもないからだ。

 けれど。
 そこで、奇跡が起きた。

「ピキッ……?」

 骸骨戦士が素っ頓狂な声を発する。
 俺自身も、いま目の前に広がっている光景が信じられなかった。

 俺の拳は、さも当然のように骸骨戦士の剣を受け止めていた。


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