異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.18「難題」

「きゃあ!」


体育館に女子生徒の声が響いた。


「動くな!」


銃を持った男が女子生徒に銃を向けている。その銃を見て、女子生徒は怯えてしまっている。


この状況は芳しくないな……。どうにか相手が人質に取れなくする方法を考え出さないといけない。


俺は今、横に四人の男子生徒がいる。こいつらは3秒と掛からずに無力化が可能だ。だが、体育館の席にいる生徒や教師……さらには国の閣僚などの重要人物が人質に取られているのはきつい。


しばらくと経たないうちに警察が来るだろうが、それまでこの状況を保ち続けるのは難しいだろう。只でさえ、現状況でパニック寸前であるこの体育館だ。一人でもパニックを起こせば、一斉に騒ぎ出すだろう。さらには死傷者が出る可能性まである。危険すぎる……。


向こう側の要求は俺の異能力スキルだが、他人に譲渡する方法など無い……筈だ。取り敢えずはそれを聞いてみて時間稼ぎをするか。


「どうやって俺の異能力スキルを渡すんだ?」


「よくぞ聞いてくれた!!我ら『疾風』は、この為に新技術を開発したのだ!!」


という事は魔導具か。そんな者を開発する人材と費用があるのか……?この組織には。もう少し組織情報を聞き出そう。


「因みにそれはどんなものなんだ?」


「……もの?何を言っているんだ、お前は?譲渡するのは俺達が手に入れた『吸収アブゾープション』と『均等イコール』の異能師だ!」


そんな異能力スキル聞いたことないぞ……?異能師協会に登録されていない新異能力スキルか……?それとも異能師協会が把握していない異能師……?


異能師協会は、異能力スキルを持つ者を指す異能師達の情報を保有している組織であり、全ての異能力スキルの情報を持っている。この協会が知らない異能力スキルとなれば、違法手段で手に入れたものか、協会が隠している存在のどちらかとなる。


協会が隠している存在というのは、例えば『組織』の人間だ。秘匿義務があるという事と、彼らの異能力スキルを公開すると危険であるという理由からだ。


俺は一応、大体の異能力スキルを把握している。さらに異能力スキル一覧に目を通している為、新しい異能力スキルなどのチェックは怠っていない。と、いうことは違法手段による入手だろう。


この『疾風』という組織は、バックに大きな組織がいる可能性が高くなってきたな……。


「その異能師は今ここにいるのか?」


「あぁ、勿論。」


「俺の異能力スキルを皆に渡すのにいなくて良いのか?」


「……それもそうだな。呼んで来い。」


「分かりました。」


俺を捕らえていた三人の一人が呼びに行ったらしい。これで立場はこちらが優勢になる。


俺はこの新入生テストの判定員である。これが何を指すのか────俺には『異能力スキル無効化の腕輪ブレスレット』が支給されているのだ。


この異能力対応機器スキルツールの存在は生徒会以外に知られていない。よって俺が腕に着けていても気付かれないのだ。制服ジャケットの下に着用している為、気付かないのも無理はないが。


俺の誘導に簡単に引っ掛かった生徒は、男と女を連れてきた。ここの学生ではないようだ。どちらも15,6歳と言ったところか。俺とあまり年齢が変わらないように見える。


「こいつの異能力スキルを吸え。」


先程、この二人を連れて来るように命令した男子生徒が男に指示した。こいつが『吸収アブゾープション』の異能師か。


俺は『異能力スキル無効化の腕輪ブレスレット』を発動させる。


「なっ、何で!!」


男は大きな声を出した。


「どうしたんだ!」


「僕の……『吸収アブゾープション』が効かない。どうして……。」


「おい、黒霧!どうして異能力スキルが効かないんだ!!」


「……」


俺は無言を貫く。そして向こう側の勘違いを待つ。


「……『強奪エクストーション』かっ!!」


見事に騙された。『偽装カモフラージュ』を使うまでも無い。頭は良くない、か。


「誰かあれを持ってこい!!!」


再び指示する。何を持ってくるのか……。だが、取りに行かせるつもりは無い。俺には異能力スキル無効化が発動している。


この状況では俺も異能力スキルが使えない為……『吸収アブゾープション』の異能師を気絶させる────っと、まだ気付いていないか。異能力スキル無効化を解除。


この舞台会場全体に『偽装カモフラージュ』を発動。スキルレベルは75まで上がっている。『疾風』の情報は古い。舞台会場の範囲まで『偽装カモフラージュ』が可能になった。


俺の異能力スキルで舞台会場の上では状況が動いていないように見えている。俺は舞台会場の『疾風』の生徒を全員無力化させた。


そして、『均等イコール』の異能力スキルと思われる女に尋ねる。


「どこでその異能力スキルを手に入れた?」


「……っ!あなたは何者……?」


「質問に答えろっ!」


俺は『強奪エクストーション』で奪った異能力スキルの一つ────『干渉系』の『暴露エクスポージャー』を使った。


「……この異能力スキルは『国立異能力研究所』で開発された新しい異能力スキル。」


「……研究所は『異能師七大難問』の一つ、『異能力スキルの人口開発』に成功したのか?」


「そうよ。」


元来異能力スキルは、『祝福ギフト』か先天性異能症状のどちらかでしか入手出来ない。それ以外の入手方法……『異能力スキルの人口開発』は、異能師の七つの難問と呼ばれる『異能師七大難問』の一つに挙げられる。


その難問を解決したのか……。だが、それは事実なのか?何処からか『祝福ギフト』を違法入手した可能性は充分にある。これは怪しすぎる。どうして公表しないのか。それが疑問なのだ。


「分かった。では眠れ。」


俺は女も気絶させた。そして『吸収アブゾープション』と『均等イコール』を『強奪エクストーション』で奪う。奪う事は可能のようだ。


俺は『偽装カモフラージュ』は発動したまま、自身に『不可視インビジブル』を発動させる。


そのまま、俺は体育館の座席に行き、最後列の席に行った。俺は銃を持っているやつを無力化するつもりだが、最前列では見つかってしまう。


「「そこだ!!身動きを封じろ!」」


何事だ……?俺は座席最前列を見る。そこには……樋口宗斉が孫娘……樋口菜優が『疾風』組織員を斬っていた。


これは好都合だ……。これで皆の視線はそちらに向いている。俺は自身のする事に邪魔が入らない。


俺は近くにいた組織員を気絶させた。異能師では無い。最後列にいる全員をそのまま、気絶させていった。そして、俺は一つ前の列に行く。


端にいる組織員を気絶させようと────────




────したのだが、腕を掴まれて気絶しなかった。


「どうして俺が見えている。」


声を最小限に押しとどめて聞いた。


「私の着けているゴーグル。これは『異能力スキル無効化の腕輪ブレスレット』と同じ効果があるんですよ?」


その声は男ではなかった。そして、俺にはこの声に聞き覚えがあったのだ。


その組織員は────いや、その女は組織員ではなく、生徒会長の上浦紫乃だった。

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