異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.15「暗躍」

◆新入生テスト本選・Jブロック◆


「本日は、新入生テスト本選Jブロックです。1回戦第1試合の選手は準備して下さい。」


今日はJブロックである。細木の出場だ。是非とも善戦して欲しい。


俺は偶然にもJブロックの判定員ジャッジの仕事は無かった。どうやら特定の生徒の過重労働が疑われているらしい。


細木の試合まで校内を歩く事にした。以前も同じような時があったが、その時は何やら怪しい事をしている人がいたが、今日はいないことを祈る。


観客は依然として疲れる気配を見せない。新入生テストが始まって既に12日目である。新入生テストは、約1ヶ月の期間なのでまだまだ長い。


準々決勝が始まるまで俺は地味ではあるが、異能力スキルのスキルレベル上げを行っている。スキルレベルは時に能力のレアリティをも凌駕する。『希少系』であったとしても、スキルレベルが低ければ宝の持ち腐れである。しっかりとした鍛錬が必要となる。


そのような事を考えながら体育館から校舎棟へと歩いていると、願ってもいない声が聞こえてきた。


「あの作戦はまだ終わらないのか!?」


まだ続いているようだ。何がしたいのだろうか。今日は暇だ。聞いてみるとしよう。


「いえ、準々決勝までと言われましたので……。」
「それより早く終わらせろ!」
「は、はぁ。」


男子生徒は小走りで去っていった。状況が読めないが後を付けてみるか。


男子生徒に付いていって辿り着いた場所は、部室棟だった。


「ここは……サッカー部か?」


男子生徒は部室棟へ入るとサッカー部の部室へ入っていった。ハヤトもドアを閉められる前に中に入った。サッカー部の部室では十数人の生徒が話していた。会議中のようだ。恐らく先程の話の件だろう。


「先輩から話を聞いてきました。準決勝前までに作れ、という事だそうです。」


俺が後をつけてきた男子生徒は皆に向かってそう言った。少し前まで騒がしかったこの部屋も今の言葉で静かになった。何人かは息を呑んでいた。


それほど厳しいプランなのだろうか。それぞれが絶望しているような表情をしている。暫く考えていたようだが、その中の一人が話し始めた。


「では、あれを始める前に試合開始を遅れさせる手筈を整えましょう。準決勝開始が遅くなれば、完成出来るかもしれません。」


周囲から賛成という言葉が次々と投げ掛けられた。その意見で決定なようだ。準決勝には俺が出場する可能性がある。準々決勝に勝てば、だが。


実際、あまり心配しておらず勝てると思っている。一年で強いのはそれこそ樋口菜優ぐらいだろう。宮倉も樋口に勝てないと思う。スキル発動速度によっては、速度で樋口に負ける可能性がある。樋口が本気を出せば、音速を超すだろう。


ハヤトが準々決勝の事を考えている間もこの部屋の生徒達は話し合っていた。入念な計画のようだ。出来るだけ早めに計画を知って、その計画を防ぎたいのだが、中々その話をしない。


細木の試合もあるので一旦帰りたいのだが、ドアを開ければ隠れていることがバレてしまう。今は『不可視インビジブル』を使用しているが、位置がバレれば異能力スキルが強制解除される。異能力スキルの力も絶対ではないのだ。
偶に力を過信しすぎて大敗をする異能師がいる。滑稽であるが、あまり珍しい事でもない。寧ろ異能力スキル無しの方が強い人もいるのだ。それを念頭に置く必要がある。今の異能師に欠けている事だろう。


「────同志にはいつ伝える?」


話し合っていた一人が質問した。


「今がいいだろう。試合中以外に大勢が集まっていては目立ち過ぎる。あまり目立ってはいけないだろう。」
「それもそうだな。じゃあトランシーバーで伝えてくれ。」
「分かったわ。」


一人の女子生徒が鞄からトランシーバーを出した。その後にスイッチを入れて話し始めた。


『全レボリューショナリー同志に告ぐ。幹部会で決まった事を伝える。同志諸君は準決勝前に一悶着起こしてくれ。我らには時間稼ぎが必要なのだ。準決勝を遅れさせればいかなる手段を用いて良い。頼むぞ、同志諸君。』


一番最初に言ったレボリューショナリーから何らか革命……デモのような何かをするつもりなのだろう。そして、この部室にいるメンバーは幹部のようだ。という事は先輩とやらがリーダーだろうか。それにしてもこいつらが何人いるのか掴めていない。この状態での軽はずみな行動は命取りだろう。慎重に情報を集めよう。


それにしても準決勝で何をするつもりなんだ。デモぐらいならば別に止める必要も無いが、準決勝前に一悶着するのは流石にこちらとしても面倒だ。


幹部会はトランシーバーで情報を伝えてすぐに解散した。長居はしないらしい。あくまでもこいつらも慎重なようだ。一人ずつ帰っていった。俺も体育館に戻るとしよう。


* * * * *


「Jブロック第1回戦第50試合選手は舞台へ。」


細木もハヤトと同じく第1回戦は最終試合だった。細木の相手はAクラスだ。細木は終始、運がついていないようだ。難敵ばかりと戦っている。しかしその逆境で勝てるのだから、細木の実力は本物だろう。新入生テスト後の再クラス編成では、本戦の準々決勝まで行けば必ずAクラスだろう。細木とは仲が良いから、同じクラスの方が俺も気が楽だ。細木とは別のクラスになったら、俺は友人を作ろとしないだろうから。


現在人気が鰻登りの細木。その人気には拍車が掛かり、教師の中にも細木を支持する人がいるとか。さらに昨日、細木は告白されていた。……断っていたが。理由に今は友人だけで充分という内容を言ったそうだ。俺が嫌われそうだからやめてくれ。


細木の対戦相手はAクラス最下席で異能力スキルは、『機関銃マシンガン』。攻撃系の異能力スキルである。補欠でAクラスに上がったという噂がある。しかし、『機関銃マシンガン』という異能力スキルは思いの外、使いやすい。


まず、銃弾が無限だ。リロードも必要ない為、常時発動できる。さらに体力もあまり消費しない。数を撃てば流石に体力も減るが、三十分程度は普通に持つ。攻撃系の中で使いやすさでは上位に食い込むだろう。


ではデメリットは無いのか?いや、勿論ある。『機関銃マシンガン』のデメリットは、命中率の低さと敏捷性が全て失われる点、そして威力が通常よりも低くなっている事ぐらいだろう。


機関銃マシンガン』を使う場合は、常に対戦相手と長距離を保つ必要がある。相手の攻撃が避けれないのだ。敏捷性が失われるとはそういうことだ。


だがそのデメリットを含んだとしても充分難敵なのが、『機関銃マシンガン』だ。伊達にAクラスではないということだ。流石に宮倉や樋口とはタイマンが張れないだろうが。


この試合、細木はどんな作戦を立てたのか。俺は聞いていない。試合前に作戦を聞くのは失礼だろう、と思ったからである。試合を見れば分かるだけのことである。


「それでは、試合開始!」


試合開始と共に会場の人々は余りの光の強さに目が眩んでいた。『機関銃マシンガン』のせいだ。目潰し的な利点はあるが、それに気付いていれば幾らでも対応策は出来る。対戦する二人はどちらも対応策を取っていた。細木はサングラス。『機関銃マシンガン』のAクラスの異能師は水泳で使うゴーグルだ。どちらもセンスは謎だが、気にしないでおこう。俺は入る光を『偽装カモフラージュ』で明るさを下げている。要するに俺には普通に目眩しは効かない。


閑話休題。


細木は『機関銃マシンガン』の銃弾を避けていた。常人に出せる最大の速度で。細木は鷹野には勝てないが、鷹野並に多くの武術を修めている。伝統術として忍術も学んだらしい。初めて聞いた時は異能力スキルかと思ったが、そうではないらしい。普通に忍術は人間で使えるようだ。


今回の回避に使用しているのは忍術だろう。細木は相手に少しずつ近付いていた。周りから見れば変化が無いように見えるが、着実に近付いている。対戦相手を見れば、焦っているのが分かる。命中率もさらに低下している。決着が着くまでに長くは掛からないだろう。


二人の間はおよそ二メートル。既に『機関銃マシンガン』が近すぎて撃てない。勝者は細木だ。次の瞬間、異能力スキルで威力を上昇させた拳で対戦相手を場外まで飛ばした。やり過ぎな気もしなくもない。


細木はその後の第2回戦も第3回戦も瞬殺だった。運で勝利してきた者が多かったのだろう。細木に対抗出来るものは一人もいなかった。Jブロック代表は細木である。是非とも決勝で戦いたいものである。

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