異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.13「一瞬」

◇新入生テスト・本選◇


「只今から新入生テスト、本選Aブロックを開催します。」


進行を務めている生徒会役員の書記の言葉に会場が盛り上がる。昨日の第三試合や第二試合Bブロックは、少々盛り上がりが少なかったからだろうか、普段よりも歓声が大きい。因みに今日は国の重役が勢揃いしている。


「────本日、Aブロックの対戦表はこちらとなります。」


会場の空中スクリーン──異能力対応機器スキルツールの『空中映像』──にAブロックの対戦表が出てきた。


朝Tクラスで確認した所、俺はFブロックだった。細木はJブロックだ。本日の注目の試合は、首席である宮倉だろう。観客の中でもそう囁いている人が多い。


本選からは俺も出場だがFブロック以外では、生徒会の仕事がある。俺の仕事は相変わらずの判定員ジャッジだ。


交代もあるが、仕事がない時は生徒会席に座っている。席を取るのは、生徒数が多いこの学校では大変なのである。細木が席を取ってくれると言ったが、遠慮しておいた。


「────それではAブロック1回戦第1試合、1年Aクラス坂野さかの雪柊ゆらぎ 対 1年Cクラス金田かねだ荘介そうすけ。選手は舞台へ。」


第1試合の坂野はAクラス第20席である。能力は確か……『死霊術ネクロマンス』。『特化系』である。Cクラスの金田は『空想ファンシー』だ。思い描いたものを実体化する。『希少系』の『実体化エンティティ』の下位互換だ。『空想ファンシー』は非生物のみしか実体化出来ない。


「第1試合、試合開始!」


試合開始の合図の元、二人は異能力スキルを発動させた。二人がそれぞれ実体化させたのは、『死霊術ネクロマンス』による骸骨軍団スケルトンアーミー、『空想ファンシー』による銃二丁だった。


本選ではあらゆる武器の使用が可能であるが、致命傷になる攻撃は判定員ジャッジによって無効化される。発動させる事自体は、禁止ではなく勝利と見なされる。ここでの銃も心臓や脳幹などに当てない限りは、禁止とならない。


「スケルトン、攻撃開始。」


坂野がそう告げた。スケルトンはその指示に基づいて、数の有利を活かして金田を囲む。金田は銃を発砲し、左手の銃でスケルトンを破壊、右手の銃で坂野を狙う、という器用な戦術を取っていた。


「何のこれしき!」


金田の言葉は、あまり余裕そうには見えない。何しろ数の差だ。既に骸骨軍団スケルトンアーミーは、数千にも上っているが、依然として金田は一人だ。そして、坂野本人は未だに戦闘に参加していない。


「……!」


金田は何やら『空想ファンシー』で実体化させようとした。よく見ると舞台では無かった。空中だ。


「……流星群!!」


金田のこの技には攻撃名があるらしい。言われてみれば、隕石である。流星群だ。これは無効化しなくてはならないだろうが、坂野が手を打つ場合がある為、寸前まで無効化は出来ない。


巨大骸骨ジャイアントスケルトン。」


坂野は冷静に対処しようとした。最初に実体化させていた骸骨スケルトン達の数倍の大きさがある巨大な骸骨スケルトンを実体化させた。物理的に対処するようだ。


だが、数千の骸骨スケルトンを実体化させたのが悪かったのだろう。体力が無くなっていた。巨大骸骨ジャイアントスケルトンは十秒と持たずに消失してしまった。


ハヤトを含めた四人の判定員ジャッジは、金田の勝利と見なした。


「Aブロック第1試合、金田壮介の勝利!」


俺は素早く支給されていた異能力対応機器スキルツールである『異能力スキル無効化の腕輪ブレスレット』を発動させた。発動条件は詠唱。


「『起動アウェイク』!!」


流星群は全て消失した。体力を相当消費したが、無事なようだ。生徒会の役職で判定員ジャッジが最も大変な仕事とされる。その理由はこの無効化があるからである。


「それではAブロック1回戦第2試合、1年Aクラス宮倉光輝こうき 対 1年Gクラス早田そうだ宏誠こうせい、選手は舞台へ。」


会場の歓声は一気に大きくなった。第二試合にて首席の登場である。シード枠の力を拝見させてもらおう。それに対して早田の異能力スキルは、『爆発エクスプロージョン』だ。『攻撃系』だが、あまり威力は無い。人間が喰らえばひとたまりもないが。


「第2試合、試合開始!」


さらに会場の歓声は大きくなる。国の重役も目に焼き付けようとしているようだ。若干、体が前のめりになっている。


全力爆撃フル・エクスプロード!」


早田は首席の異能力スキルを見ていたのだろう。試合開始と共に一斉爆撃を始めた。


「冷静にね。」


宮倉はその一言で爆撃を全て防いだ。異能力スキルは詠唱無しで発動出来る。作戦負けだ。何も言わずに爆撃をすれば良かったのだ。


宮倉も試合開始と共に自分を囲うように『空間支配エリアコントロール』の結界を張っていた。それが幸いした。全ての爆撃を凌げたようだ。伊達に首席を名乗っていない。


この後は一方的であった。全力で試合開始から攻撃した為に体力が無くなったのだろう。気絶はしなかったものの、早田には攻撃するだけの力も残っていなかった。宮倉も攻撃能力は高くない為に、一撃では相手を沈めれなかった。早田は、少し痛い目にあったようだ。


試合後の宮倉コールは凄まじいものだった。本人も驚いていたのだが。あれほどの歓声を浴びるのは、自信過剰でも無い限り恥ずかしいだろう。


* * * * *


俺は第5試合が終わり、他の生徒会の人と交代した。少し休憩タイムだ。五つの試合の内、第1試合を含めた攻撃の無効化が三回あった。体力を殆ど失っている。果たして今日は体力が持つのだろうか。


俺は試合を見ずに校内を少し歩いていた。


「────あれはどうなっている。」


誰かが話している声が聞こえた。この声に聞き覚えは無い。教師でも無いようだ。密かに様子を伺うと、生徒であった。


「いえ、もう少し時間が掛かりそうです。」
「そうか。どれくらいに終わる?」
「本選の準々決勝程までには。」
「そうか……。あの作戦と同時期になりそうだな。」
「どうしましょう。」
「もう少し早めれるか?」
「若干、機能を低下させれば。」
「構わん。早めに終わらせろ。」
「分かりました。」


男二人は去っていった。何をするつもりなのか。だが、関わるつもりは無い。関係ないだろう。


ハヤトは気にも止めなかった。


* * * * *


ハヤトが会場に戻ると、Aブロックの2回戦まで終わっていた。宮倉は2回戦も楽に勝利したようだ。


2回戦まで終わった、ということは現在Aブロックで勝ち上がっているのは25人である。


奇数である為、トーナメントが続かずどうするのか。この先は5つのグループに分けられる。その5つのグループ毎にバトルロイヤルを行う。勝った5人がさらにバトルロイヤルを行い、勝った一人のみがそのブロックの勝者だ。


「────これより対戦表に基づき、グループを作成します。Aブロック第1グループの五人は舞台へ。」


出てきた五人には宮倉も含まれる。このグループは宮倉が絶対的な有利だろう。金田の流星群はあるが、『空間支配エリアコントロール』には勝てない。


「試合開始!」


────試合開始の合図と同時に宮倉以外の四人が舞台外に押し出されていた。


「……だ、第1グループ、宮倉光輝の勝利!」


会場も呆気に取られていたが、勝利を告げられると歓声に包まれた。この作戦は上手いと思う。単純に結界で押し出しただけの事だ。それを考え無かった他の四人は作戦ミスであろう。


負けた四人は悔しがっていた。流石に何も出来ずに終わるとは思わなかったのだろう。次の機会に頑張って欲しい。


「それではAブロック第2グループの五人は舞台へ。」


* * * * *


グループによるバトルロイヤルの結果、勝利した五人はさらにバトルロイヤルを行った。当然、宮倉もいる。Aブロックの優勝は、宮倉だった。宮倉はAブロック決勝で他の四人を囲うように透明な『空間支配エリアコントロール』の結界を発動させた。要するに四人とも自爆である。宮倉は絶対強者であった。これでAブロック優勝は宮倉となった。


────明日はBブロックが開催される。

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