異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.12「予選」

◆新入生テスト・第三試合◆


「それでは、第三試合開始!!」


進行を務める書記が開始の合図を出す。それを聞いた第三試合の選手は、一斉にハヤト、鷹野、首席の宮倉に駆け寄った。


「一応、確認しますが触れれば勝者となります。出来るだけ触れられないようにして下さい。」
「了解だ。」
「了解ですよ。」


ハヤトの確認に鷹野と宮倉は頷いた。そこに一人の男子生徒が攻撃を仕掛けてきた。


「うおおおお!!」
「甘いよ。」


隙だらけの攻撃を宮倉が躱した。そこに二人目が襲い掛かる。


「一気に飛び掛ってきたら面白いのに。」


宮倉は再び躱した。


しかし、攻撃を仕掛けて来る者が宮倉のみに攻撃する筈もない。当然、ハヤトや鷹野にも攻撃が降り掛かって来た。ハヤトは『並列思考パラレルシンキング』を用いた多重高速演算。あらゆる可能性を考慮して、最適解を求め出している。鷹野は、『格闘術マーショルアーツ』をまだ使っていない。己の体術のみで相手の隙を狙って反撃している。


試合開始より約10分。未だに勝者はいない。


「お前ら!単純に攻撃を仕掛けるだけが戦いでは無い!!作戦を考え、決して己だけで勝とうとするな!」


鷹野が第三試合の選手達に言い放った。突如、鷹野が大声を挙げたことで驚いたが、鷹野の言葉の意味を理解した者達は、互いに作戦を立て始めた。


「作戦立てているからって狙わない訳じゃないからね。」


当たり前だ。試合中に作戦を立てている選手達を逃す筈がない。宮倉が作戦を立てている最中の選手達を狙った。宮倉の強襲に寸前まで気付かなかった選手は、宮倉の攻撃に呑まれてしまったが、気付いた選手は、素早く回避行動を取り、触れようとした。


恐らく宮倉のミスであろうが、宮倉の強襲に対して回避行動を取った一人が宮倉に触れた。


「やった!!」
「1人目の選手が勝ち上がりました。他の選手も頑張って下さい。」


虎穴に入らずんば虎子を得ず。則ち、ハヤトらに反撃される覚悟で挑まなければ、勝利を得ることは出来ない。


一人目の選手の勝ち上がりによって、選手のモチベーションが上がった。此処で先程の隙だらけの攻撃を繰り返しては意味が無い。どう成長するか、だ。


「ふっ!」


ハヤトの背後から回し蹴りを浴びせようとしてくる選手がいた。寸前まで気配に気付かなかった。『強奪エクストーション』で異能力スキルを奪った所、『不可視インビジブル』だった。確か、『不可視インビジブル』には、気配を遮断する事も可能である。それを利用したのだろう。だが、気配が無かったから、と言って触れられる訳では無い。攻撃を躱し、相手の体勢を崩した。


ハヤトが相手を下し、前を向くと拳が前に。またもや触れる寸前で前に出ていた腕を掴み、背負い投げをした。相手の選手は甘かった。背負い投げの瞬間に触れることは可能だった。動揺していたのだろうが。


実力が未知数である宮倉。一人に触れられてしまったが、同じミスを繰り返す筈が無い。宮倉なら触れられる、と考えた多くの選手は、宮倉を狙うが攻撃が届いていない。宮倉の周囲1メートルに何やら結界のようなものがある。あれが宮倉の異能力スキル。『希少系』の『空間支配エリアコントロール』。


空間支配エリアコントロール』は、1メートル ✕ 1メートル ✕ 3メートルの直方体の支配空間を作成できる。『絶対支配コントロール』の下位互換である。『絶対支配コントロール』は範囲制限無しだが、こちらはある。本当に下位互換なのだ。


「誰が僕の支配域を越える事が出来るかな?」


宮倉は余裕そうだ。既に『強奪エクストーション』で奪っているが、この能力には時間制限などは無い。宮倉が現在張っている結界も壊されれば、また修復すればいいのだ。新しく結界を張るのに必要な時間は、マッハ1。ただの学生にその隙を突けるものは少ない。


────全くいない訳ではないのだ。


選手らが異能力スキルを使用し、宮倉の結界を破壊しようとする。宮倉の結界はとても強固だが、質では負ける選手は量で挑んだ。流石に無数の攻撃を浴びた宮倉の結界は数秒ももたなかった。
その隙にある選手が『妨害ディスターブ』を発動させた。この能力は、異能力スキルの発動を妨害する。レベル差が相手よりも1でも低ければ発動しないが、偶然同じレベルであったらしい。発動した。


「なっ!」


それを見た選手達は、一斉に宮倉に押し寄せた。慌てて跳躍で空中に逃げたが足場が無い。足場を作る為に『空間支配エリアコントロール』を作成しようにも妨害されている。宮倉は出来るだけ遠くに離れたが、その途中で10人に触れられてしまった。


「11人目の選手が勝ち上がりました。他の選手も頑張って下さい。」


だが、触れられたのは宮倉だけでは無い。たった三人で何百人という相手の攻撃を避け続けるのにも限界がある。出来るだけ避けているのだが、こちらの攻撃する瞬間に触れたり、流れ弾が掠ってしまい、何人かの選手が勝ち上がっていった。


「89人目の選手が勝ち上がりました。他の選手も頑張って下さい。」


ハヤト達の意見としては一旦休みたいのだが、相手側がそれを見過ごす筈も無いだろう。休憩はお預けだ。


* * * * *


「はぁはぁはぁ……。」
「宮倉、大丈夫か?」
「黒霧君、ありがとう。」
「少し休め。」
「……そうだね。」


宮倉としては首席の自分がTクラスの俺に気遣われるのは嫌だろう。早々に退散しよう。


今は第三試合が終わった所だ。結局、ミスが続き、621人勝ち上がった。全員に『回復ヒーリング』を密かに発動させたハヤトは、鷹野、宮倉と共に舞台裏に戻った。


「宮倉、手伝ってもらってすまないな。」
「大丈夫です、鷹野副会長。」
「そうか、ありがとう。」


休んでいるが、次は非戦闘系の第二試合Bブロックだ。Bブロックの試合は、見ていて楽しいものとも思えないが、我慢して頂こう。


* * * * *


「これより第二試合Bブロックを行います。非戦闘系異能力スキル持ちの第一試合の勝利選手は舞台へ上がって下さい。」


Bブロック選手の総数は1348人だ。Aブロックより多いが、本選に勝ち上がる事の出来る選手は、1000人。348人は敗北となる。このブロックの試合は単純だ。能力測定器を使ったスキルレベル順に勝ち上がっていく。試合前にこれを説明していたので、昼食などに行く生徒もいるようだ。教師は殆ど残っていない。国の重役は今日は来ていない。明日の本選狙いだろう。


全員を適当に並ばせ、名前確認をした後、能力測定器でスキルレベルを確かめる。


意外と1348人を調べるのに二時間で終わった。あと数時間は掛かるだろうと予測していたが、外れたようだ。この結果を元に1000人を抽出する。


「じゃあ、隼斗君お願いします。」


勿論、抽出する役目は俺────ではなく、俺の異能力スキルだ。俺の『強奪エクストーション』にいつ奪ったかも分からないが、『調査サーチ』と『整理アレンジメント』という家庭で使えそうな異能力スキルがあった。これを使って、30秒で終わった。生徒会が腐りかけている気がする。


「ありがとうございます。」


流石、上浦。生徒会長の権限を相変わらず振り回して俺に全てを任せる。既に俺は書記では無い。俗に言う、パシリや雑用係のようなものだろう。


「これで第二試合Bブロックも終了ですね。」
「明日から……本選。」
「そう言えば、黒霧も出場だったか。」
「はい、シード枠に入れましたので。」
「Tクラスでソード枠……。」


生徒会役員達がシード枠に祝ってくれたが、先程までサボタージュをしていた人達だ。


「まあ、ありがとうございます。頑張ります。」
「はい、頑張って下さい。」


何故か最後は上浦が締めた。


明日は本選。トーナメントも俺の異能力スキルで第二試合Bブロックの結果と共に出している。明日、各クラスに掲示されているだろう。俺の異能力スキルがした為、俺にも対戦相手は分からないが、楽しみではある。


────しかし、ハヤトに幸運ばかりが訪れる筈も無かった。不運は突如訪れる。

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