異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.11「臨時」

◇異能科高校・某所◇


「あれの準備はいいか?」
「はい、あと一日……本選、準々決勝の迄には準備が完了します。」
「上々だな。失敗するなよ。」
「はい。」


二人の男が話していた。敬語を使う方が部下である。部下は、準備の為に何処かへ行った。


「……黒霧隼斗、お前を私達は認めない。」


* * * * *


◆新入生テスト・二日目◆


「これより予選第二試合が行われます。」


体育館は歓声に包まれる。観客達は今年の生徒会が考えた第二試合の設定に期待しているのだ。


「凄い歓声ですね。」
「隼斗君の作った『異能力動力人形スキルゴーレム』が観客に認めてもらえると良いのですが。」
「生徒会長、わざとらしいですよ。」
「フフフ、すみません。」


此処では上浦とハヤトが話していた。第二試合は判定員ジャッジが必要無い。元々、生徒会長の仕事も無い為、二人は暇なのだ。


「黒霧、準備はいいですか?」


そう言ってきたのは、鷹野とは別の副生徒会長だ。この学校には副生徒会長が二人いる。室町時代の管領的な意味を含むのだろう。権力集中を防ぐ、か。


「大丈夫です。」


ハヤトの背後には今日使われる『異能力動力人形スキルゴーレム』の一体が待機している。基本的に生徒会役員の指示に従うようになっているが、後は自立思考だ。ハヤトはこれに知能を埋め込んでいる。


「それでは、本日の第二試合の説明をしたいと思います!」


再び、体育館は歓声に包まれた。それを合図にして、ハヤトは舞台へ。


「こんにちは、生徒会です。本日、私達が考えた第二試合は、戦闘系の異能力スキルと非戦闘系の異能力スキルに振り分けた、二つのブロックでの試合としました。」


舞台には、上浦とハヤトがいる。基本的な説明は上浦が担当し、『異能力動力人形スキルゴーレム』の説明をハヤトが担当する。ハヤトの背後にいる『異能力動力人形スキルゴーレム』に観客達の目が惹き付けられている。


「────それでは、黒霧隼斗より戦闘系異能力スキルのブロックで使用される、『異能力対応機器スキルツール』である『異能力動力人形スキルゴーレム』を説明します。」


上浦は俺に振った。


「生徒会書記の黒霧隼斗です。今回、生徒会による第二試合の戦闘系異能力スキルのブロックの為に生徒会は、『異能力対応機器スキルツール』を作成しました。」


作成した、という言葉に観客達は騒然とした。そう簡単に作れる筈が無いのだ。もう、これ以上人目を浴びたくない。


現在、この会場には国の重役も多くいる。それほど異能師という存在の価値は高いのだ。こうした人々を狙ったこの『異能力対応機器スキルツール』でもある。


少し会場が静まった頃、ハヤトは再び話し始める。


「この『異能力対応機器スキルツール』の名前は『異能力動力人形スキルゴーレム』です。ある程度の知能を持っているこの『異能力対応機器スキルツール』は、自立思考を可能とします。また、一つ一つの『異能力動力人形スキルゴーレム』にはそれぞれ異能力スキルを持たせています。」


これだけの偉業を聞いた『異能力対応機器スキルツール』を作成する企業は腰を抜かすだろう。既に何名かの国の重役は、腰を抜かしているようです。生徒や教師も呆然としています。……会場は騒然ではなく、呆然としていた。


「今回の戦闘系異能力スキルのブロックでは、一人につき、一体の『異能力動力人形スキルゴーレム』を倒して頂きます。これらは余り強くありません。まぐれで勝ったのでは無い限り、勝てるでしょう。」


ハヤトは、完全に観客達の感情を操っていた。横では上浦も若干の引き気味だったが、俺は気にしない。


「これで生徒会による第二試合の説明を終えます。」


ハヤトのこの言葉に会場は一瞬呆然としていたが、その後、大きな歓声と拍手に包まれた。


────この第二試合の事は、後代の生徒会にも語り継がれることとなる。


* * * * *


「第二試合Aブロック、第1選手は舞台へ。」


第一試合は2500人の勝利者がいるが、その中で戦闘系異能力スキル持ちは、1152人だだった。今年は非戦闘系の方が多いようだ。


第1選手の相手は『電撃エレクトリック』の異能力スキル持ちの『異能力動力人形スキルゴーレム』だ。俺が持っていた。


異能力動力人形スキルゴーレム』の作成にあたって、校内に残っていた人に手伝ってもらい、様々な異能力スキルを持ったゴーレムを作成出来た。


試合結果は選手の勝利。選手が使っていたのは『高速移動ハイスピード』。瞬間移動では無い。高速移動を使用した状態で動き回り、攻撃を喰らわせ続けた。ゴーレムについてあまり知らない状態での勝利には、賞賛すべきだ。しかし、ここでの勝者は俺の相手になる可能性がある。しっかりと見ておかなければならない。


「第2選手、舞台へ。」


次は細木だった。今回は、番号が前回よりも早かったらしい。次席君との対戦で勝利した事もあり、応援する声は多かった。俺は生徒会席にいる為、細木の試合を真近で見ることができる。……ウインクされた。


細木の対戦相手のゴーレムは、『魔術マジックスキル』持ちだ。あらゆる魔法を使用できる。『特化系』だ。細木は、不運体質なのだろうか。結果は辛勝。攻撃が掠りながらも回避し続け、持っている異能力スキルで勝利した。細木曰く、益々人気が鰻登りしているそうだ。これで細木の本選出場が決定。Tクラスの中で予選勝利者は、一人だけなので、Tクラス内でたった一人の本選出場者である……俺を省けば、だが。


試合はこのような感じで続いた。


第3選手~第10選手までは敗北が続いたが、第11選手が強者だった。Aクラスの第三席だそうだ。能力は『希少系』では無いが、『干渉系』の『衝撃インパクト』。触れるだけで相手に衝撃を与えられる。そう、触れるだけで、だ。相手の物理攻撃を受けると同時に相手に攻撃できる。ゴーレムが『格闘術マーショルアーツ』であった為に幸いした、といった所だろう。


第100選手までで勝者が20人。意外と少なかった。予定ではAブロックからは1000人選出するのだが、足りないかもしれない。


第101選手~第200選手までは勝利者が36人と少し増えたが心配である。


第500選手までの勝利者の合計は137人だった。……どうなるか。


* * * * *


結局、戦闘系異能力スキル保有者のAブロックでの勝者は379人だった。残り621人をどうするか。急遽、話し合いとなった。


「どうしますか?」
「またゴーレムを使っては、観客からのウケが良くないと思うのだが。」


鷹野は毎回、意見が的確だ。伊達に『十傑』では無い。俺も『十傑』なのだが。そんな事を考えていると、上浦に話を振られてしまった。若干、睨まれつつ。


「隼斗君は何か考えていますか?」


名前を強調しないで欲しい。ただでさえ、下の名前で呼ぶことで周りからの視線が痛いのだから。


「俺は……生徒会役員が何かをすれば良いのではないか、と。」
「……どういう意味ですか?」
「生徒会役員が対戦し、何らかの条件を満たせば合格、というような。」
「ふむ。」


しかし、生徒会の中でも戦闘系が多い訳ではない。どうしたものか……。


「では、俺と黒霧ではどうだ?」
「いいですよ。」


それには即答するんですか、生徒会長さん。俺も反対では無いが、それならばもう一人、適任な人材を考えている。


「シードである一年生の首席も手伝ってもらっては?」
『あー。』


何故だろう。生徒会役員の皆さんが「それ、いいね。」的な感じで首肯するんですが。そんなに良い案でも無いはずなのだが。


「では、それでいきましょう。鷹野君と隼斗君、観客に説明を頼みますね?」
「「了解。」」
「私は、首席の一年生に頼みに行ってきます。」


生徒会の他の方々は、持ち場に戻るようです。俺としては、これ以上注目されたくないのですが。


「────、という訳です。」


俺と鷹野は舞台で第二試合Aブロックの足りない勝者数を第三試合扱いでそれを行う、と説明した。俺の実力はまだしも、鷹野の実力を知る生徒や教師は呆れ顔だ。


「では、第二試合Aブロックに敗北した選手は全員、舞台へ。」


ぞろぞろと選手が試合舞台へ来た。舞台は事前に空間拡張しておいた。


『第二試合Aブロック敗北選手773人』


vs


ハヤト、鷹野、首席


となった。何が何だか分からなくなっているが、俺は知らない。責任は全て上浦が背負う。


俺か鷹野か首席……もとい、宮倉君に攻撃が触れれば勝ち上がる。時間は無制限。621人になった時点で終了である。


さぁ、バトルロイヤルの始まりだ。

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