異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.10「初戦」

◇異能科高校・体育館◇


「皆さん、おはようございます。準備は宜しいですか?」


生徒会長である上浦の質問に対して、生徒会役員の面々が首肯する。


「それでは一分後に『新入生テスト』を開始します。」


生徒会役員は、それぞれの持ち場に着いた。ハヤトの仕事は、判定員ジャッジだ。
新入生テストの勝敗の決定の仕方だが、試合会場の四端にいる四人の判定員ジャッジが二つのスイッチを持つ。赤と白の二つのスイッチだ。
戦う二人が赤と白に振り分けられ、決着がついたと思った場合、勝利した方の色のスイッチを押す。
そのスイッチを四人全員が押した場合のみ試合終了となる。意外と厳しい判定方法なのだ。何処かで似たような判定方法があったような気がするが、気にしないでおこう。


生徒会役員それぞれが持ち場に着いた一分後。


「国立異能科高等学校、新入生テスト只今より開催致します。」


生徒会の書記さんの一人が進行を務める。進行の言葉によって、会場である体育館は歓声があがった。


新入生テストと称しているが、これは立派な学校イベントである。よくある文化祭や体育祭などの一種と考えてもらえば分かりやすいだろう。よって、生徒達の楽しみの一つなのだ。


毎年、異能科高校には優秀な生徒が多く入学して来る。この学校は『神聖魔法ホーリースキル』である『適正判定アプロプリエイト・ジャッジ』を使用した合格判定であり、優秀な生徒が多いのは当然である。優秀な生徒が多い事は、それほど試合が白熱する事に同義する……はずだ。



書記さんの進行の元、学校長挨拶や生徒会長挨拶もあった。上浦による生徒会長挨拶は、流石と言える出来栄えだった。見る人が見れば、殆ど嘲笑しているようにしか見えない。恐るべし、と言えばいいのだろうか。


「予選第1試合の選手は会場へ。」


試合選手となる一年生も選手待機室など無い。というより何処に五千人も入る選手待機室があるのだろうか。世界大会でも有り得ないだろう。試合がある生徒は、観客席からそのまま出てくる。観客からの応援などを受けながら、だ。恥ずかしい人もいるだろう。だが、そんな事は知らない。


俺は判定員ジャッジとして、試合を見る訳だが正直言って予選はお粗末だ。強さがまだハッキリとしていない新入生が戦った所で能力の差や元々の運動神経などで結果は明らかなのである。
寄せ集めただけのような一方的な決着のパターンが多い予選において、白熱したバトルが行われることはあまり多くない。
しかし、それは無いと同義ではない。


「予選第50試合の選手は会場へ。」


ここまで一時間程度だ。新入生の実力はその程度である。残念な限りだ。


予選第50試合の選手が観客席から立ち上がると、歓声が起こった。特に女子生徒の歓声が大きかった。どうやら次の選手は、俺にシードの座を奪われてしまった次席君らしい。俺は睨みつけられた。
それに対して対戦選手は、あろう事か細木だった。俺は細木にドンマイとアイコンタクトで伝える。細木からは、悲しげなオーラが放出されている……。


一方的な試合だった。細木孝一郎。保有能力は『剛力リジディティ』。鷹野が持っていた『格闘術マーショルアーツ』と同じく『上昇系』に位置する。単に力を強くする異能力スキルだ。
この『剛力リジディティ』という異能力スキル。意外と細木には合っていたのである。細木は元々に空手の選手である。全国大会に出場できるレベルの。全国大会では、惜しくも鷹野に負けてしまった。要は全国大会準優勝なのである。あの鷹野と対戦したのだから負けるのは仕方ないだろう。だが準優勝選手が『剛力リジディティ』など使ったらどうなるだろうか。


二人の対戦は白熱していた。次席君は女子からの歓声が凄かったが、男子にはあまり人気が無いのだろう。おそらくその理由は、顔が整っている事。俺も同感だ。男子の歓声は細木に集まった。どうやら、男子対女子のバトルになり掛けている。少し危険な匂いがする。


試合が開始すると、細木は相手の選手の異能力スキルを知っていたのか、相手の背後を取ろうとした。因みに次席君の異能力スキルは、『幻影イリュージョン』。勿論『希少系』だ。影と同化し、あらゆる物理攻撃を無効化する。細木の最悪の相性なのだ。


だが、次席が与えられているのは、実力があるからではない。単に異能力スキルのレアリティだ。今年は『希少系』が少ない。本来であれば、俺は次席になってもおかしくない異能力スキル祝福ギフトで得た。『並列思考パラレルシンキング』だ。『希少系』の中でもランキングが存在し、『並列思考パラレルシンキング』は上位、『幻影イリュージョン』は中位に位置する。俺がTクラスであったのは幸いだった。俺は真面目な気質では無い。


話が逸れてしまったが、細木は何らかの作戦を立てたらしい。次席君の背後をとった。次席君は予想していなかったのだろう。試合開始と同時に影と同化すれば、良かったのだ。敗因はこれだった。


────そう、結果は細木の勝利だった。


細木は気功波を打ったのだ。確かに物理攻撃では無い。細木の異能力スキルの使用方法には、観客達も驚愕していた。


女子達から細木を妬む声が聞こえたが、細木も意外と美形である。妬むのは極小数だった。試合後には、細木を祝う声が沢山掛けられたらしい。おめでとう、細木。


* * * * *


細木vs次席君の試合の後は、白熱した対戦は見られなかったが、どの試合が良かったか挙げてみろ、と言われれば、第77試合を挙げるだろう。


第77試合は、Aクラスの第五席と──Aクラスは全員階級が決まっているらしい──Aクラスの第六席の試合だった。実力が僅差であった二人はとても白熱な試合を見せてくれた。……二人の容姿が優れていたのもあるのかもしれない。第六席の女子生徒はモデルもしているらしい。二人とも『希少系』では無いが、異能力スキルの使い方が上手かった。


次に挙げるのは、第368試合だろう。BクラスとDクラスの生徒だった。女子なのだが二人ともドジ……天然だった。攻撃に適した異能力スキルなのに攻撃を当てれない試合に会場は笑いに包まれた。……ホンワカした試合だった。


まあ、良かった……かな?という試合は幾つかあるが、説明出来るほどの国語力が無い為、割愛させて頂こう。


一つ言えるのは、第一日目が終わり、予選2500人は決定した。しかし、本選に出れるのは2000人だけだ。決定の仕方は試合では無い。


* * * * *


第一日目を終え、生徒等は帰宅した。


「では明日の準備を始めます。」
『はーい。』


生徒会一同は何やらやる気が無さそうな声だ。


「何をするんですか?」
「あー隼斗君。君には活躍してもらいます。」
「……え?」
「……言い訳は聞きません。」
「……いや、何をするんですか?」
「……『異能力対応機器スキルツール』を作ってください。」
「……は?」


どうやら2000人の決め方は生徒会が決定するらしい。毎年、様々な決定方法がある為、期待が高いらしい。それを考える生徒会は疲れる訳だ。嫌そうな顔をしている。


「では、皆さん。何を作りますか?」
「何でも作れるの?異能力スキルがあればですけど。」


挙手して意見を出し合う意見会が始まった。すぐに鷹野が挙手した。


「俺が考えるのは攻撃可能な異能力スキルと攻撃不可能な異能力スキルで分けた選別方法だ。」
「それには私も賛成です。」


上浦が賛成した。確かに攻撃不可能な異能力スキルは、今日の試合で判明した。これを元に分けるのはアリだろう。


「俺もそう考えます。では、どう振り分けるですが。」
「では書記メンバーがそれを振り分ける、としましょう。」


振り分けてくれるのは書記長である菅野率いる書記組だ。俺は振り分けには参加出来ないが。


「では今日撮った映像渡しますね。」


上浦は菅野に映像を入れたノートPCパソコンを渡した。容量の大きさが気になるが、口には出さない。


「攻撃可能な異能力スキル持ちはどうしますか?」


俺が挙手した。


「はい、隼斗君。」
「……俺が考えるのは、『異能力動力人形スキルゴーレム』です。」
「それはどのようなものですか?」


俺が考えた『異能力動力人形スキルゴーレム』は、ある程度の外殻の硬さを持つ人形を作成し、それに一つずつ異能力スキルを装備させる。少しばかり知能を持たせて、対戦パターンを思考させる。そして、対戦させる。


「あまり強いものを作れば、勝つ者が少なくなるかもしれませんので、比較的弱いものにします。」
「まぐれ勝ちを本選に出させないようにですか。」
「その通りです。」
「では攻撃不可能な異能力スキルですが、スキルレベル判定で良いのでは?」
「確かにな。しっかりと鍛錬を積んだものだけが勝ち上がれる訳か。」
「そうです。」


意見会には先程抜けた書記組以外全員いるが、どうやら話に入りきれないらしい。生徒会長と副生徒会長と何者か分からない一年生の会話に入るのは厳しいか。


結局、他の人にも意見を聞いたが、それでいい、とのことだった。
俺は『異能力動力人形スキルゴーレム』を作り出し、スキルレベルはお馴染みの能力測定器を使用。


本日の生徒会の役目も終了だ。

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