異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.9「準備」

◇新入生テスト前日◇


この国立異能科高等学校に入学して二日目。多くの事件らしき事態が発生した。


異能力スキルが判定不能と出た。『組織』No.6『黒鴉クロウ』と出会った。能力を生徒会長に見抜かれた。生徒会に入った。鷹野と試合をして、実力を試された。学校中に能力を暴露された。伝説の人物である『組織』No.0『透竜ドラゴン』に出会った。学内異能師ランキング五位になった。新入生テストのシード入りが確定した。


中には学校の歴史の中で初となる偉業も、幾つかあったそうだ。俺は目立ちたい質ではない。有難迷惑である。


しかし、俺に降り掛かる災難は続くようだ。一難去ってまた一難、と言うように。明日は新入生テストだ。生徒会は運営側の為、放課後に急ピッチで準備を進めている。


毎年、生徒会では人手が足りない為にボランティアを募集しているが、今年は俺が入った事で募集が中止となった。
偶然にも俺には、『強奪エクストーション』で奪った異能力スキルの中に『念動力サイコキネシス』があったからだ。


ただ、これだけでは終わらなかった。


ここで偶然が重なり、またもや俺の奪っていた『貸出レンタル』という異能力スキルがあった為に生徒会の面々に『念動力サイコキネシス』を貸し出していた。


歴代の生徒会の中で最も早く準備が終わりそうだ。もう俺を裏方に回してくれ。目立ちたくない。


* * * * *


「隼斗君。そのマイクはあそこに置いといてくれますか?」
「分かりました。」


俺は現在、パシリとなっている。他の生徒会役員はどうしたのか?答えは簡単だ。二つの異能力スキルを使える事など普通は無い為、加減を知らず、常時発動状態にして二、三時間動き回ったのである。体力が持つはずが無いのだ。俺はそれを注意するという義務は無いので、何も言わなかった。


お陰で動けるのは俺と生徒会長だけ。扱き使われている。


「後は『異能力対応機器スキルツール』を保管室から借りてくるだけです。借りてくる『異能力対応機器スキルツール』は、『異能力結界』を四つ、『耐久力付与』と『異能力無効化』の『異能力結晶スキルクリスタル』を十個ずつです。お願いしますね、隼斗君。」
「……はい。分かりました。」


異能力対応機器スキルツール』は、魔法が使える世界で言う所の魔導具だ。既に作られたものに異能力スキルを付与することで作れる。有機物、無機物の制限はない。
異能力スキル名とスキルレベルを確認出来る能力測定器も、『解析アナライズ』を付与した『異能力対応機器スキルツール』の一つだ。


それぞれの『異能力対応機器スキルツール』の効果は……


『異能力結界』は、発動させる事によって薄い光を帯びた結界による空間を作り出す。これを使用すれば、結界を囲む薄い光に異能力スキルで出現したあらゆるものが触れた際、能力効果を消す。


異能力結晶スキルクリスタル』は、球状の半径約五センチの結晶である。それに異能力スキルを付与している。
『耐久力付与』と『異能力無効化』の『異能力結晶スキルクリスタル』は、それぞれ指定した対象の耐久力を上昇、異能力スキルを無効化する。


『耐久力付与』は、試合会場の地面と『異能力結界』に対して使用する。
『異能力無効化』は、『異能力結界』が破られた際に使用する。『異能力結界』も超出力の異能力スキルによる攻撃を受けた場合、無効化しきれない可能性があるからだ。


「すみません。一ついいですか?」
「何ですか、隼斗君?」
「俺の試合の時に会場に対して『偽装カモフラージュ』を使用したいんですが。」
「そうですね……広範囲に出来ますか?」
「いえ、対戦相手と『異能力結界』と映像を記憶する媒体に使用すればいいので。」
「その手がありましたね。」


上浦は、その案を考えなかっていなかったのだろう。しかし、もしも俺が勝ち上がった際、毎回『偽装カモフラージュ』を使用していれば大変である。


「ですが……それでは試合での体力が持たないのでは?」


その通りだ。


「ですので、専用の『異能力対応機器スキルツール』を作れないかと。」
「……作れるんですか?」
「『異能力結晶スキルクリスタル』の異能力スキルを付与していない物であれば、持っています。後は『付与エンチャント』の異能師がいればいいだけなんですが……。」
「……製造法は秘匿されている筈ですよ。何処で作り方を……?」
「企業秘密です。」
「……隼斗君はいつから企業に務めるようになったんですか。」


呆れられた。だが、問題はそこではない。


「それで『付与エンチャント』の異能師っていますか?」
「ええ、いますよ。そこに。」


上浦が指差したのは、保管室だった。


「誰ですか?」
「保管室の管理人です。元々『異能力対応機器スキルツール』の生産工場で働いていたようです。」


……流石、生徒会長。生徒の情報だけで無く、只の管理人の情報まで持っているのか。恐るべし。何処から情報を仕入れているのか、今度聞いてみるとしよう。


* * * * *


◇異能科高校・管理室◇


「失礼します、生徒会の者です。『異能力対応機器スキルツール』を借りに来ました。」
「中へどーぞ。」


女性の声だった。生徒証を見せなくても良いのだろうか。管理体制が甘過ぎるような。


「……借りたい『異能力対応機器スキルツール』ですが」
「あー言わなくてもいいわ。毎年同じだもの。」


管理人は三十代前半ぐらいの女性だった。露出が少し多い気がするが、見なかったことにしておこう。


管理人は、隣の部屋に入った。どうやらこの部屋は管理室では無く、管理人室であったようだ。


五分ほどして管理人は、『異能力対応機器スキルツール』を籠に入れて持って来た。


「これでいいわよね。」
「……確認させて下さい。」


上浦に指定された物と同じかどうか見ていった。間違いは無いようだ。しかし、俺の要件はもう一つある。


「大丈夫です。ありがとうございます。」
「いえいえー。」
「あと……もう一つよろしいですか?」
「なに?」
「生徒会長より『付与エンチャント』が使用される、と聞いたのですが本当ですか?」
「ええ。」
「ではこの『異能力結晶スキルクリスタル』に異能力スキルを付与して頂けませんか?」
「……ちょっと『異能力結晶スキルクリスタル』を見せてくれる?」
「いいですよ。」


俺は制服のポケットから『異能力結晶スキルクリスタル』の元となる結晶を取り出した。


「……な、なんなの、この純度。……この純度の結晶をどこから手に入れたの?」
「企業秘密です。」
「……企業と関係無いでしょ。」
「慧眼ですね。」
「褒められた気がしないわ……。」


ハヤトが適当に答えるのは、答える気が無いだけだ。無表情を貫く。


「……はぁ、分かったわ。透明な結晶……羨ましいけど仕方ないわ。何個作るの?」
「大体二十個あれば充分です。」
「……二十個?そんなに結晶持ってるの?」
「手元には二十一個あります。作ってくだされば、一個ですが差し上げますよ?」
「良いの!?」
「これは仕事ビジネスですから。」
「……」


ハヤトは仕事にはそれに見合った報酬を支払う主義だ。詐欺はしない。偽装はするが。ハヤトが今此処で『偽装カモフラージュ』を管理人に向かって使用すれば、文句無しに作ってくれるだろうが、ハヤトにも人情はある。そんな事をするつもりはない。


「いいわ、作ってあげる。残り十九個の結晶を出してくれる?」
「分かりました。」


ハヤトは右手の人差し指に付けていた指輪に触れた。この指輪も『異能力対応機器スキルツール』である。付与能力は『拡張エクステンション』。指輪にミリ単位の空間が存在している。それを拡張して、携帯式倉庫にしているのだ。貴重品である。


「その指輪も珍しいわね。」
「貰い物ですよ。」
「あなた……何者なの。」
「国立異能科高等学校の一年生です。」
「……」


十分ほどして管理人は作り終えた。結晶にどうやって付与するのか。簡単な話だ。『異能力対応機器スキルツール』を使うのである。作成時専用の『保管片』という木片型の『異能力対応機器スキルツール』を使用する。これに付与したい異能力スキルを木片に保存する。それに触れた状態で結晶に触れ、『付与エンチャント』を発動。それで終了だ。


ハヤトは製作途中に『付与エンチャント』を奪った。これで自分で『異能力対応機器スキルツール』を作成できるようになる。次いでに使用方法も見ておきたかったのだ。


「ほら、出来たわよ。」
「ありがとうございます。」


管理人はハヤトに二十個の『偽装カモフラージュ』が施された『異能力結晶スキルクリスタル』を渡した。


「では、これを。」


ハヤトは言っておいた報酬である結晶を渡した。


「ありがと。」
「失礼しました。」
「はーい。」


ハヤトは体育館に戻り、上浦に必要物品を渡した。


「隼斗君、出来ましたか?」
「はい。すみませんが勝手に置かせてもらっても大丈夫ですか?」
「いいですよ。」


ハヤトは会場の数カ所と試合映像を記憶する媒体の数だけ、そして『異能結界』に接続する形で置いた。さらにそれらを『偽装カモフラージュ』で隠した。完璧だ。


「完了しました。」
「良かったです。それでは生徒会の皆さん、前日の準備はこれで終了です。明日は進行など任された業務を忘れないようにして下さい。今日はお疲れ様でした。」


生徒会はこれで解散した。明日から新入生テストの予選が開催される。大変な数日間になりそうだ。

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