異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)
Episode.8「再戦」
◇生徒会室◇
「前回は邪魔が入ってしまったが、その件は解決した。」
鷹野がハヤトに話し掛けた。
「ありがとうございます、鷹野先輩。因みに美濃山先輩はどうなったのですか?」
「あいつはランキングを重視していたからな。ランキング外に変更してやった。折角、四位までいっていたが校則違反をした処罰だ。この学校の校則は意外と厳しいからな。」
「そうですか……。」
俺にとっては宗斉のお陰で解決出来たので、美濃山はどうでもいいけどな。
「それで試合はどうしますか?」
「今日の放課後でいいか?」
「大丈夫です。」
「そうか……聞いたぞ。黒霧の異能力については。生徒会以外は『偽装』したそうだな。」
「……はい。」
「俺は黒霧の異能力を知っている。黒霧も俺の異能力は知っているだろうからハンデはなしだ。次こそ本気で戦ってもらおうか。」
「分かりました。ですが今日の試合は観客無しにしてもらえませんか?」
「そうだな、能力を見られたくは無いだろう。今日の試合は、生徒会役員しか知らない。これで大丈夫だろう。」
「ありがとうございます。」
「それでは、放課後。」
透竜である伝説とも言える人物の『樋口宗斉』と話が出来たのは、運がいいのか悪いのか分からないが、それはどうあれ今日の試合だ。
今日の試合では恐らく鷹野は初手から『格闘術』を使用するだろう。俺も何らかの異能力を使う必要がある。そして、『確率操作』は秘密にしておきたい。『強奪』で一気にカタをつける。これでいこう。
* * * * *
◇第一練習室◇
「準備はいいか?」
「大丈夫ですよ?」
「……余裕そうだな。」
「……そうでしょうか?」
「二人とも準備は出来ているようですね。それでは…………始め!!」
ハヤトは『強奪』を発動させた。一気に奪える量は決まっているので、徐々に奪っていく。同時に鷹野は『格闘術』を発動させる。こちらは発動までの時間は一瞬だ。ハヤトが一番に奪っている能力は攻撃力だ。幾ら長期戦になったとしても、相手の攻撃力が無ければ、俺の体力がある限りは、負けることは無い。
「行くぞ、黒霧。」
「わざわざ忠告して下さらなくてもいいんですよ。」
「やはり余裕そうだがな。」
鷹野はハヤトをよく見ていた。ハヤトは未だに負けを知らない。その事実が余裕へと繋がっているのだろう。いつ折れてもおかしくない。ハヤトの現状はとても危険なのである。全く安定していない。それは実力の差にも繋がるのだ。
「グハッ!」
ハヤトは回避出来ずに攻撃を喰らった。『強奪』の使用によって、体が咄嗟に反応出来なかったのだ。
ゲームの世界において、高速詠唱が可能な魔術師よりも俊敏な動きをする剣士の方が強い。
これと同じ理屈である。常時、剣を構える剣士とは異なり、魔術師は詠唱中は隙だらけ。そこに付け込まれただけの事だ。
鷹野の攻撃を受けたハヤトは、どうにか威力を流した為に即気絶は免れた。しかし、『格闘術』の攻撃力を計り知ることが出来なかったハヤトは、体力が殆ど残っていない。集中力も散漫になっている。誰が見てもハヤトの敗北が決定しているように見えた。
第三者からの視点はそうであるが、ハヤトの脳内では『並列思考』を用いて高速演算中であった。勝率を求め、効率的に相手の弱点を付く。会心の一撃が必要なのだ。
ハヤトの持つ『希少系』の中には、一撃必殺の異能力は存在していなかったが、『強奪』で奪った能力の中には幾つか存在した。
それが『逆転』だ。『干渉系』に属する異能力であり、確率で形勢逆転を引き起こす事が出来る。ハヤトの『逆転』のレベルは20である。よって確率は20%。決して高いとは言えない。だが、この確率を操作しても相手には気付かれない。偶然、運が良かっただけだ、と言える。
急いでハヤトは『逆転』を発動させた。それと同時に『多重能力』によって『確率操作』を発動。確率を30%にする。
『確率操作』の能力内容は、レベル ✕ 10%の確率を増加させる。『確率操作』は昨日貰ったばかりでレベルは1だ。確率は10%しか増えない。だが、俺はこれに賭ける。
一か八か……。
────勝利の女神はハヤトに微笑んだ。
「……鷹野、先輩。俺の……勝ち、です。」
鷹野は倒れた。『逆転』成功後、『強奪』によって残り体力を削った。立つだけの体力も無くなってしまった鷹野は、疲労も重なり遂に倒れてしまった。
「……結果を。」
「!……す、すみません。勝者、黒霧隼人!」
生徒会役員の面々も愕然としていた。入学したての底辺クラスの一生徒が学内異能師ランキングの上位十人である『十傑』の一人を倒したのだから。
しかし、ハヤトの体力も無かった。鷹野はハヤトと同じく倒れる寸前で戦っていたのだ。幸運だっただけだ。ハヤトの実力では到底勝てなかった相手だ。
ハヤトが異能力を満遍なく使用可能であれば、結果は分からない。だが、学内の試合においては、ハヤトも学生の実力の範疇だ。幸運と言わずして何であるか。
……ハヤトも倒れた。気絶してしまった為、後の事は知らない。聞いた話では養護教諭が『回復』で回復してくれたようだ。
「黒霧……。実力は分かった。俺は黒霧の生徒会入りに反対しない。むしろ支持する。」
「私は始めからですが、今も隼人君の支持に賛成ですよ?」
他の面々も同じようだ。どうやら俺の生徒会入りは決まったらしい。たかだか生徒会に所属する為にここまでする必要があったのだろうか。これは神のみぞ知るのだろう。
* * * * *
「おい、ハヤト!」
翌日、筋肉痛に顔を顰めつつも、声の主の方を向いた。
「学校中がハヤトの話で持ちきりだよ。あの鷹野先輩に再戦で勝ったんだってね。おめでとう!」
「ああ、ありがとう。」
声の主は細木であった。細木によるとハヤトが鷹野に勝利した事は、すぐさま学内に広まったらしい。生徒会は情報漏洩がお好きなようだ。上浦にしっかりと言っておこう。
「────そして」
細木の話はまだ終わっていなかった。これ以上話題があっただろうか。
「────学内異能師ランキング五位認定おめでとう!」
え?
ハヤトは初耳であった。それは仕方ないだろう。今朝、決まった事である。始業寸前に登校したハヤトは知る筈もない。
美濃山のランキング剥奪によって四位の座が空いてしまった。そこでランキング六位に勝利したハヤトを五位に認定する事で穴を埋めた。
前ランキング五位の人は四位に昇格している。
この速さでのランキング認定は偉業である。生徒会入りといい、ランキング認定といい、ハヤトは異能科高校の歴史の中でも前人未到であった事を二つも成し遂げたのだ。一躍、人気の人である。
しかし、ここで大きな問題が発生する。未だに学校では自習が続いている。理由は簡単だ。先に控える入学テストに向けて、自らで自らの異能力を鍛えさせる為だ。
本来、『十傑』の一人になる際、『国家指定異能師』認定される。これは最低でも入学テストの高得点が必須となるのだ。
これについて、生徒会と学校側で少し揉めたそうだが、上浦の権力で抑え込んだらしい。流石、生徒会長。
「それでハヤトはどうやら入学テストのシード入りが確定したみたい。」
「は?」
入学テストは五千人のブロック毎に分けたトーナメント戦を実施する。これは本選からだ。予選は五千人の中から二千人が勝ち上がれる。
そして、本戦は二十ブロックであり、毎ブロックに百人ずつ。これでトーナメントだ。
しかし、毎年予選無しで本戦に進めるシード枠が存在する。これは首席と次席が獲得するが、今年は特別に首席とハヤトとなった。学校側も必死である。
……今年の入学テストは荒れそうだ。
「前回は邪魔が入ってしまったが、その件は解決した。」
鷹野がハヤトに話し掛けた。
「ありがとうございます、鷹野先輩。因みに美濃山先輩はどうなったのですか?」
「あいつはランキングを重視していたからな。ランキング外に変更してやった。折角、四位までいっていたが校則違反をした処罰だ。この学校の校則は意外と厳しいからな。」
「そうですか……。」
俺にとっては宗斉のお陰で解決出来たので、美濃山はどうでもいいけどな。
「それで試合はどうしますか?」
「今日の放課後でいいか?」
「大丈夫です。」
「そうか……聞いたぞ。黒霧の異能力については。生徒会以外は『偽装』したそうだな。」
「……はい。」
「俺は黒霧の異能力を知っている。黒霧も俺の異能力は知っているだろうからハンデはなしだ。次こそ本気で戦ってもらおうか。」
「分かりました。ですが今日の試合は観客無しにしてもらえませんか?」
「そうだな、能力を見られたくは無いだろう。今日の試合は、生徒会役員しか知らない。これで大丈夫だろう。」
「ありがとうございます。」
「それでは、放課後。」
透竜である伝説とも言える人物の『樋口宗斉』と話が出来たのは、運がいいのか悪いのか分からないが、それはどうあれ今日の試合だ。
今日の試合では恐らく鷹野は初手から『格闘術』を使用するだろう。俺も何らかの異能力を使う必要がある。そして、『確率操作』は秘密にしておきたい。『強奪』で一気にカタをつける。これでいこう。
* * * * *
◇第一練習室◇
「準備はいいか?」
「大丈夫ですよ?」
「……余裕そうだな。」
「……そうでしょうか?」
「二人とも準備は出来ているようですね。それでは…………始め!!」
ハヤトは『強奪』を発動させた。一気に奪える量は決まっているので、徐々に奪っていく。同時に鷹野は『格闘術』を発動させる。こちらは発動までの時間は一瞬だ。ハヤトが一番に奪っている能力は攻撃力だ。幾ら長期戦になったとしても、相手の攻撃力が無ければ、俺の体力がある限りは、負けることは無い。
「行くぞ、黒霧。」
「わざわざ忠告して下さらなくてもいいんですよ。」
「やはり余裕そうだがな。」
鷹野はハヤトをよく見ていた。ハヤトは未だに負けを知らない。その事実が余裕へと繋がっているのだろう。いつ折れてもおかしくない。ハヤトの現状はとても危険なのである。全く安定していない。それは実力の差にも繋がるのだ。
「グハッ!」
ハヤトは回避出来ずに攻撃を喰らった。『強奪』の使用によって、体が咄嗟に反応出来なかったのだ。
ゲームの世界において、高速詠唱が可能な魔術師よりも俊敏な動きをする剣士の方が強い。
これと同じ理屈である。常時、剣を構える剣士とは異なり、魔術師は詠唱中は隙だらけ。そこに付け込まれただけの事だ。
鷹野の攻撃を受けたハヤトは、どうにか威力を流した為に即気絶は免れた。しかし、『格闘術』の攻撃力を計り知ることが出来なかったハヤトは、体力が殆ど残っていない。集中力も散漫になっている。誰が見てもハヤトの敗北が決定しているように見えた。
第三者からの視点はそうであるが、ハヤトの脳内では『並列思考』を用いて高速演算中であった。勝率を求め、効率的に相手の弱点を付く。会心の一撃が必要なのだ。
ハヤトの持つ『希少系』の中には、一撃必殺の異能力は存在していなかったが、『強奪』で奪った能力の中には幾つか存在した。
それが『逆転』だ。『干渉系』に属する異能力であり、確率で形勢逆転を引き起こす事が出来る。ハヤトの『逆転』のレベルは20である。よって確率は20%。決して高いとは言えない。だが、この確率を操作しても相手には気付かれない。偶然、運が良かっただけだ、と言える。
急いでハヤトは『逆転』を発動させた。それと同時に『多重能力』によって『確率操作』を発動。確率を30%にする。
『確率操作』の能力内容は、レベル ✕ 10%の確率を増加させる。『確率操作』は昨日貰ったばかりでレベルは1だ。確率は10%しか増えない。だが、俺はこれに賭ける。
一か八か……。
────勝利の女神はハヤトに微笑んだ。
「……鷹野、先輩。俺の……勝ち、です。」
鷹野は倒れた。『逆転』成功後、『強奪』によって残り体力を削った。立つだけの体力も無くなってしまった鷹野は、疲労も重なり遂に倒れてしまった。
「……結果を。」
「!……す、すみません。勝者、黒霧隼人!」
生徒会役員の面々も愕然としていた。入学したての底辺クラスの一生徒が学内異能師ランキングの上位十人である『十傑』の一人を倒したのだから。
しかし、ハヤトの体力も無かった。鷹野はハヤトと同じく倒れる寸前で戦っていたのだ。幸運だっただけだ。ハヤトの実力では到底勝てなかった相手だ。
ハヤトが異能力を満遍なく使用可能であれば、結果は分からない。だが、学内の試合においては、ハヤトも学生の実力の範疇だ。幸運と言わずして何であるか。
……ハヤトも倒れた。気絶してしまった為、後の事は知らない。聞いた話では養護教諭が『回復』で回復してくれたようだ。
「黒霧……。実力は分かった。俺は黒霧の生徒会入りに反対しない。むしろ支持する。」
「私は始めからですが、今も隼人君の支持に賛成ですよ?」
他の面々も同じようだ。どうやら俺の生徒会入りは決まったらしい。たかだか生徒会に所属する為にここまでする必要があったのだろうか。これは神のみぞ知るのだろう。
* * * * *
「おい、ハヤト!」
翌日、筋肉痛に顔を顰めつつも、声の主の方を向いた。
「学校中がハヤトの話で持ちきりだよ。あの鷹野先輩に再戦で勝ったんだってね。おめでとう!」
「ああ、ありがとう。」
声の主は細木であった。細木によるとハヤトが鷹野に勝利した事は、すぐさま学内に広まったらしい。生徒会は情報漏洩がお好きなようだ。上浦にしっかりと言っておこう。
「────そして」
細木の話はまだ終わっていなかった。これ以上話題があっただろうか。
「────学内異能師ランキング五位認定おめでとう!」
え?
ハヤトは初耳であった。それは仕方ないだろう。今朝、決まった事である。始業寸前に登校したハヤトは知る筈もない。
美濃山のランキング剥奪によって四位の座が空いてしまった。そこでランキング六位に勝利したハヤトを五位に認定する事で穴を埋めた。
前ランキング五位の人は四位に昇格している。
この速さでのランキング認定は偉業である。生徒会入りといい、ランキング認定といい、ハヤトは異能科高校の歴史の中でも前人未到であった事を二つも成し遂げたのだ。一躍、人気の人である。
しかし、ここで大きな問題が発生する。未だに学校では自習が続いている。理由は簡単だ。先に控える入学テストに向けて、自らで自らの異能力を鍛えさせる為だ。
本来、『十傑』の一人になる際、『国家指定異能師』認定される。これは最低でも入学テストの高得点が必須となるのだ。
これについて、生徒会と学校側で少し揉めたそうだが、上浦の権力で抑え込んだらしい。流石、生徒会長。
「それでハヤトはどうやら入学テストのシード入りが確定したみたい。」
「は?」
入学テストは五千人のブロック毎に分けたトーナメント戦を実施する。これは本選からだ。予選は五千人の中から二千人が勝ち上がれる。
そして、本戦は二十ブロックであり、毎ブロックに百人ずつ。これでトーナメントだ。
しかし、毎年予選無しで本戦に進めるシード枠が存在する。これは首席と次席が獲得するが、今年は特別に首席とハヤトとなった。学校側も必死である。
……今年の入学テストは荒れそうだ。
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