異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.7「期待」

◇異能科高校・応接室◇


そんな有り得ないのような人生を辿った頂点が目の前に立っていた。気迫が違う。人の発する気迫とは思えない。


「黒霧君、君の考えていた私の四度の人生プロフィールは全て合っているよ。」
「全て、ですか?」
「そう、全てだ。」
「神もですか?」
「私はお会いしたよ?君は神を信じないのかい?」
「生憎、無神教者なので。」
「それは……残念だ。」


先程まで呆然としていた上浦も話し始めた。


「私も質問しても宜しいでしょうか?」
「なんだい?上浦君と言ったね。」
「はい。あなたの噂の中には、『神聖能力ホーリースキル』や『固有能力ユニークスキル』、『覚醒能力アウェイクニング・スキル』などと言った異能力スキルの噂もありますが、それも本当なのですか?」
「然り。」


「『神聖能力ホーリースキル』は神からのみしか与えられないのですか?」
「黒霧君、君が考えている事は分かるよ。『強奪エクストーション』で奪えないのか、ということだね?」
「はい。」
「それは、無理だ。」
「『神聖能力ホーリースキル』は異能力スキルの上位に位置するからね。下位の能力では似たスキルは存在しても上位の能力の領域テリトリーを侵す事が出来ない。私も幾度も試されたからね。」
「国からですか?」
「そうだ。こんな危険な存在よりも、自分達が信頼出来る者に能力を持たせた方が都合が良いじゃないか。」
「そうですね。」


終始、宗斉の言葉にハヤトは反論を出せなかった。何しろ生きてきた歳月が違うのだ。質問を打ち切り、最後に礼をした。


「今日は御教授頂きありがとうございました。」
「いえいえ。黒霧君や上浦君のような才能のある子達と話すのは、私も楽しかったよ。こちらこそありがとう。私はこの後、校長先生とお話があるので……。」
「分かりました。失礼しました。」
「失礼しました。」


俺と上浦は応接室を出ようとした。しかし、俺のみ止められた。


「あ、黒霧君少し話があるけどいいかい?」
「……?分かりました。」


扉も開けっ放しにするのもどうかと思ったので、上浦が興味ありげに見ていたが、気にせず閉めた。


「黒霧君。話の前に失礼するよ。」


宗斉は立ち上がり、扉の前で何かを掴んだ。


「何を?」
「上浦君、人をあまり嘗めてはいけないよ。」


どうやら扉が閉まる直前に、上浦は咄嗟に盗聴器を投げ入れたようだ。肉眼で見える大きさでは無いが、ここは『絶対支配コントロール』の支配領域テリトリーだ。小細工が通用する訳がない。宗斉が盗聴器を破壊すると、扉の外から上浦の走り去る足音が聞こえた。


「じゃあ、話をしようか。」
「ええ。」
「長くはならないよ。」
「お気遣いして下さりありがとうございます。ですが時間は大丈夫ですよ。」
「そう言ってもらえると幸いだ。まずどの話からしようか。君がここに来る前、ひと騒動あったようだね。これは君の『偽装カモフラージュ』では、対応仕切れないだろう?」
「残念ながら。」
「私も君の才能には期待している。だから今回は手を打とう。私の『絶対支配コントロール』を市内一帯にしたが、未だこの学校から外には情報が漏洩していないようだ。今なら大丈夫だな。」


そう言って宗斉は瞑想を始めた。『偽装カモフラージュ』の能力で相手の記憶を改竄する際には、相手の偽装したい内容に関連した記憶が、全て自らの脳内に情報として流れ込んでくる。
それだけで脳内がオーバーヒートしてしまいそうだが、それを一人で数万人程度の人間の記憶を改竄するのだ。有り得ない。既に人間の域ではない。


恐らく宗斉の脳は、人の脳ではない。通常の人間の脳では噂通りの人生の記憶全てを詰めていれば、余裕で破裂パンクしてしまうだろう。何らかの異能力スキルだ。


「……終わったよ。」


十分ほど経った頃、宗斉を作業を終えていた。


「生徒会の面々だけの記憶の改竄は辞めておいたよ。すぐに気付かれそうだからね。」
「ありがとうございます。」
「私の脳は大丈夫だよ?頑丈だからね。」


瞑想中にも俺の思考は読み取っていたようだ。


「じゃあ次の話に移ろうか。」
「はい。」
「私は君の裏の事情を少しばかり知っているんだ。」
「……?」
「いや、君はまだ知らずとも良い。その内、知ることになるだろうから。」
「?……分かりました。」
「私は君に便利な異能力スキルを一つ渡したいと思っている。未来で使う事になるだろうからね。」


そう言い終わると同時に宗斉の手には箱……いや、祝福ギフトが載っていた。


「この祝福ギフトの中身を知っているが、それは開けた後に教えよう。開けたまえ。」
「ありがとうございます。」


俺は祝福ギフトを受け取り『開けオープン』と唱える。祝福ギフトは光を放ち、開けた物に新たな異能力スキルを与えた。


「君にあげた異能力スキルは『希少系』の『確率操作プロパビリティオペレーション』だ。自在に確率を操作できる能力だ。」


流石『希少系』だろう。能力が便利である。大切に使わせてもらおう。


「そうしてくれると幸いだよ。」


宗斉はまたハヤトの思考を読み取り、返事をした。


「最後だけど……上浦君の調査頑張るんだよ。」


ハヤトの機密事項が漏洩していた。ハヤトが上浦と出会った際に上浦の危険性を感じ取り、調査対象に指定した。背後に黒幕がいる、という感じが否めなかったのだ。
だが、この内容を報告したのはハヤトの師匠だけだ。ハヤトはその師匠を見た事は無いが、自分を救ってくれた人だとは認識している。
その人に対する恩返しの為に将来の大物となる異能師が必ず通うこの学校の進学を決意したのだ。


ここから、導かれる推測は────


「残念だが、それは言えないよ。」


返事はしてくれないようだ。それならば真実を教えてくれる迄、待てばいいだけだ。焦る必要は無い。今は自分の実力を付けるだけだ。


ハヤトは応接室を後にした。


「失礼しました。」
「今日はありがとう。」
「いえ、こちらこそ。」


そうしてハヤトは去った。


宗斉は呟いた。


「黒霧君。君は亀だ。今の歩みは遅いが、いずれ私に追いつくだろう。その時を待っているとしよう────」


宗斉はこう言い残して応接室から消えた。


────最後に残るのは冷めたお茶のみだった。

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