異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.6「過去」

◇異能科高校・応接室◇


「その通りだ。私は『組織』の長を務めておる。」
「この方が『透竜ドラゴン』ですか。噂には聞いた事がありましたが、このような方だったとは……。」


ハヤトに横にいた上浦も驚いていた。そうだろう。ハヤト自身も能力の内容を聞いた事で誰なのかが分かった。それだけ存在があやふやなのである。
樋口ひぐち宗斉そうさいの使う『絶対支配コントロール』という異能力スキルは、『万能系』に位置する。


『万能系』は、異能力スキルの中で最も高位に位置する。能力内容は単純だ。全ての異能力スキルを使える。要するに何でも出来る、という事だ。名前が示す通りに万能なのである。


絶対支配コントロール』も『樋口宗斉』という存在もネットでの噂程度の扱いだ。何しろ経歴が人間とは到底思えないのだ。


* * * * *


『樋口宗斉』は世界で初めての異能師だ。生まれたのは、百年前とも千年前とも言われている。分かる事は日本で生まれた事だ。
『樋口宗斉』は生涯を有り余る才能と知能で幸せに暮らした、とされている。


ただしこの先が問題なのだ。『樋口宗斉』は晩年、神に出会った、とされている。その神によって、新たな生を授かる。前世の記憶を持ったまま、新しい体となり生まれ直したのだ。
生まれ直した際、『樋口宗斉』は先天性異能力症状を患った。ここで『絶対支配コントロール』という、『固有能力ユニークスキル』を手に入れる。


絶対支配コントロール』は絶対的であり、『樋口宗斉』は既に人の領域を軽く超えていた。


『樋口宗斉』はこの能力を使用して、新たな生で農民からの下剋上を果たし、一国の領主となる。
ここで再び神からの天命を受けたそうだ。


異能力スキルの力を広めなさい。』


この天命を受け賜った『樋口宗斉』は領主の力を用いて、領民達に異能力スキルを与えていった。
『樋口宗斉』はこの時、神より『祝福ギフト』という名の『神聖能力ホーリースキル』と呼ばれる神の能力を受け賜る。


しかし、異能力スキルは全ての人に与えられるものでは無い。その人の人生や前世が影響するのだ。


異能力スキルを非適正者に与えればどうなるのか?』


答えは明確であった。無理矢理、異能力スキルを非適正者に与えれば、与えられた者は死ぬ。


偶然にも『樋口宗斉』の領民は、非適正者が多数を占めていた。よって死者が何千人と出てしまった。
二回目の人生はこの後、斬首となり終わってしまう。


* * * * *


儚く散ってしまった二回目の人生だったが、三回目の神からの天命があった。


『再び人生を与えます。そしてこの能力も与えましょう。』


神は三回目の命と共に『神聖能力ホーリースキル』である『適正判断アプロプリエイト・ジャッジ』を受け賜った。


適正判断アプロプリエイト・ジャッジ』の能力は、異能力スキルの適正者か否かを識別する『神聖能力ホーリースキル』である。識別する為に相手を見る、などという工程は必要ない。識別したいと思えば、識別出来るのだ。


この能力と新たな生を駆使して、再び領主となる。しかし、それだけでは日本中に異能力スキルの適正者を探す事は出来ない。
存在も定かでは無い人を適正者かどうか判断する事は、流石に『神聖能力ホーリースキル』であっても出来ない。


そこで『樋口宗斉』は、政治に携わろうとする。政治をする場は当時では幕府であった。『樋口宗斉』は、幕府に侵入し『絶対支配コントロール』を用いた巧みな戦術により、階級を上げていった。遂には『樋口宗斉』が征夷大将軍に次ぐ位となった。


どの時代でも政敵という者はいる。『樋口宗斉』でもだ。逆に『樋口宗斉』を政敵と見なす者もいる。


今回は『樋口宗斉』を政敵と見なす者だった。
絶対支配コントロール』を使用した、日本中の情報ネットワークも一介の大物が自分勝手に決めた進軍では、情報の伝達が遅れた。


それが仇となったのだろう。『樋口宗斉』は討たれる事は無かったものの、島流しとなってしまった。


島流しの先では食糧や水が不足する事は無かったが、衛生的では無かったのだ。当時の不治の病に感染してしまった。
治療法を知らなかった『樋口宗斉』は三十歳の若さで三度目の命を散らした。


『これだけ失敗しては神も見限るだろう。』


そう思っていた『樋口宗斉』に四度目の神による天命が与えられた。
ここまでの施しを受け賜った『樋口宗斉』は、不躾と理解しながらも神に質問をした。


『あなた様はどうして私など下賤な者に幾度も天命を授けて下さるのですか?』


ああ、しまった。今度こそ神の怒りをかってしまった、と思った『樋口宗斉』に神から返事が返ってきたのだ。内容は到底、今までの天命の口数とは思えない、言葉の量だったが。


『あなたに期待してはいけませんか?神という身分ですが、神にも選ぶ権利はあります。選びたい、と思ったからこそ、あなたを選んだのです。そして、あなたの活躍している姿を見たいのです。いけませんか?』


神は『樋口宗斉』に一目惚れだった。神であれ感情がある神なのだ。恋もする。その相手が人間であったのだ。神話でも夫婦である神々がいる為、こんな神がいてもおかしくはないだろう。


『樋口宗斉』もその希望に応えようとした。四度目の命は幼少期に幾度も幾度もシミュレーションをして、挑もうとした。


……四度目の命。時代は近代へと移っていた。


いつの間にか長い時が過ぎていたのだった。霊の住む世界と人間の住む世界の流れは違うのだろう。少しばかりの神との対話が膨大な時間の変化を齎した。


だが、この時代は適正者を見つけるのに最適だった。学校という機関がちらほらとだが、出現して来ていた。大人となった『樋口宗斉』は、前世と同じく『絶対支配コントロール』を用いて、実業家となった。その末に学校を建設したのだ。


その学校の名は『異能科高等学校』という。


異能力スキルという力を世界に見せつけた。大戦後であった日本は、世界からの評価は下がっていたが、徐々に回復していた。これに乗じたのだ。


やがて異能力スキルは世界へと馴染んだ。校長となった『樋口宗斉』は、『適正判断アプロプリエイト・ジャッジ』と『絶対支配コントロール』を用いた類稀なる才能で生徒は惹かれ、集まってくる。毎年の生徒が千人を超えるかどうかの瀬戸際の年に『樋口宗斉』は校長を辞職した。


その後の行方は定かでは無いが、国の諜報機関に所属したと言われている。『樋口宗斉』の名は『異能科高等学校』の初代校長として様々な書に名を連ねている。最初の異能師としても。


国の諜報機関に所属した、と言われ始めた頃。徐々に異能師人口は増加し、差別意識が低くなってきた。異能師人口が少なかった頃は、嫉妬による異能師差別が多数発生していた。推測だが『樋口宗斉』の能力と言われている。


そして、今から五十年前に『異能科高等学校』は国立となった。これには『樋口宗斉』が尽力し『国家指定異能師』の第一号となった。


────これが『樋口宗斉』の四度の人生である。


現在も『樋口宗斉』は生きているが、年齢は既に100を超えている。理由は『希少系』の『不滅インディストラクティブル』だと思われる。


異能力スキルはレベル100で最高レベルとなり、能力が完全に開花する。能力の効果が高まるのだ。
『樋口宗斉』は、二度目の人生の時点でレベル100に達していた。
不滅インディストラクティブル』は『覚醒能力アウェイクニング・スキル』となり、命まで不滅にすることが出来る。そう、永遠の命である。

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