異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.3「思考」

◇生徒指導室◇


「どうしましたか?」


そう言って席を立った。少なくともマナーは守るつもりだ。


「いや、座ってていいよ。三河が来るまで話したいだけだから。」


誰だ。教師を呼び捨て出来る存在?考えられるのは、同僚である教師か教頭か校長。もしくは政府の者だろう。しかし、名前を知っているという事は、この学校を少なくとも数回は出入りした事がある者だ。


「君の洞察力は凄いようだ。」
「どうしてですか?」


疑われては元も子も無いので、出来るだけ分からない振りを続ける。


「隠さないでも大丈夫だよ。私も異能師だ。」
「異能師……この学校の卒業生ですか。」
「そういう事だね。私の異能力スキル知りたいかい?」
「ええ、教えて頂けるのであれば。」
「いいよ。私の異能力スキルは『看破リーディング』だ。」
「『識別系』ですか。 」
「そうだよ。」


『識別系』というのは、異能力スキルの能力の種類の一つだ。何かを識別する異能力スキルの総称である。『識別系』は異能力スキルの中でも比較的高いレアリティを持つ。


「君に罪はないようだね。」
「どうしてそれを?」
「ハハハ。知っている人は知ってるんだよ。」
「それは『識別系』だからではないですね。」
「正解だよ。しかし、言える事がある。君の能力が『判定不能』なのは故障ではない。」
「何故そう思うのですか?」
「『解析アナライズ』を施した能力測定器にも限界があるからだよ。」
「例えば?」
「二つ以上の能力所持者の異能力は表示出来ない。」
「……」
「隼斗君。覚えているだろうけど、私は『看破リーディング』持ちだよ?」


異能力スキルは制限があって、制限が無い。異能力スキルの使用方法は難しくない。想像すればいい。自分が異能力スキルを使用する姿を。例えば、この男が使う『看破リーディング』であれば、何かを看破する事しか出来ない。しかし、看破に関係する事であれば何でもできるのだ。未来を看破することも。


「そうだよ、異能力スキルは恐ろしいんだ。」
「やはり読まれましたか。」
「君の今後が楽しみだよ。君は何かを起こしてくれそうだ。」


男が立ったと同時に再び生徒指導室の扉が開いた。


「やあ、三河。」
「!黒鴉クロウ……。」
「久しぶりだね。」
「どうしてお前がここに……!」
「口調が崩れてるよ、三河。同級生じゃないか。仲良くしようよ。」
「誰が、お前なんかと!お前はあいつを殺した!」
「あれはそれしか方法が無かったんだよ。」
「それがどうした!お前は無傷であいつは死んだ!」
「そうだね。隼斗君、ここらでお暇させてもらうとするよ。楽しかったよ。ありがとう。」


そう言うと黒鴉クロウと呼ばれた男は去って行った。


「黒霧、あいつはどうやって入ってきたんだい?」


三河は心を落ち着けようとしているのだろう。肩が上下している。呼吸が上手く出来ていない。怒っているのか、驚いているのか。


「先生がいない間に普通に来ましたよ。」
「あぁ、あいつの異能力スキルか。」
「そうみたいですね。先生、あの男は誰なんですか?黒鴉クロウと言っていましたが。」
「教える義理は無いけど……教えるよ。あいつは国の異能省の特務機関である『国家異能力特別任務組織』だ。『国家指定異能師』で構成される国家の組織。異能師関連の事件を解決する。組織員には新しい名前が用意される。あいつの場合は黒鴉クロウという事だ。『国家異能力特別任務組織』通称『組織』のNo.6『黒鴉クロウ』。」


あの『組織』か。組織自体は国民が周知の事実だが、組織員についてはあまり知られていない。有名なのは組織の副長であるNo.2『白兎ラビット』とNo.7『赤猿モンキー』だろう。基本的に組織はこの二人が動いている。


「ありがとうございます。」
「ああ、大丈夫だよ。それじゃあさっきの続きだけど、付いてきてくれる?」
「分かりました。」


移動先は聞かなかったが、職員室の方へ戻っていた。


「何処へ?」
「生徒会室だよ。」
「生徒会に所持者がいるのですか?」
「そうだよ、『レベル50』だから君の本当の異能力スキルも分かるだろう。」
「レベル50がいるんですか?高校生の時点でレベル50は大変な功績ですよ?」
「そうだね。彼女は『国家指定異能師』だよ。」


生徒会に『国家指定異能師』がいるのか。是非お会いしたい。


「ここだよ。」


職員室を通り過ぎて、階段を四階まで上った。職員室は二階にある。生徒会室は四階の廊下の端にあった。


「広いですね。」
「生徒会室は校内で最も大きい教室だからね。」


生徒会室には数名の生徒がいた。


「黒霧隼斗君。ようこそ、生徒会室へ。」
「生徒会長、でしたよね。」


話し掛けて来たのは女子生徒……生徒会長である。この高校の生徒会は重要な役目を担う。生徒関連の業務は99%生徒会が仕切る。授業料などを流石に生徒に任せる訳にはいかないという事だ。


「そうです。私は上浦かみうら紫乃しのです。国家指定異能師ですね。私の異能力スキルは『多重能力マルチプルスキル』です。これは先天性のものですが。」
「生徒会長は『先天性異能症状』をお持ちなのですか?」


『先天性異能症状』とは生まれた時点で異能力スキルを所持している症状を指す。二十年前ほどからこの症状が多数確認され始めた。


そして『多重能力マルチプルスキル』は、多数の異能力スキルを所持できる異能力スキルで『希少系』に属する。『希少系』は異能力スキルの中で最もレアリティが高い。


「そして祝福ギフトで二つめの異能力スキルを頂きました。」
「それが『解析アナライズ』ですか?」
「そうです。」
「どうして『レベル50』もあるのですか?」
「私の親が『国立異能力研究所』の研究員なのです。」


言わずとも察することが出来るが『国立異能力研究所』は異能力を研究する国内最大の研究所だ。


「上浦。そろそろ頼めるか?」
「分かりました、三河先生。いいですか?黒霧君。」
「大丈夫です。」
「それでは」


生徒会長は集中しているようだ。


「分かりました。」
「判定結果は……?」


「三河先生焦らない下さい。黒霧君の異能力スキルは『多重能力マルチプルスキル』と『強奪エクストーション』、『偽装カモフラージュ』、『不滅インディストラクティブル』が先天性のものですね。祝福ギフトから手に入れた異能力スキルは、『並列思考パラレルシンキング』ですね。」
「はっ!?五つだと!?」
「……バレましたか。レベル50は凄いですね。」
「因みに先天性の異能力スキルのレベルは全て70です。」
「……もう、コメントしないよ。」
「正解です。生徒会長。ですがあなたがたがそれを知っても俺にはあなた達の記憶を改竄することが出来ます。」
「『偽装カモフラージュ』ですか。」
「そうですよ。」
「どうぞ。」
「いいんですか?記憶も読まれますよ?」
「そうですね。大丈夫ですよ?」


……この生徒会長は恐らく何か他の異能力スキルを持っている。俺が奪った『解析アナライズ』でも生徒会長の異能力スキルは分からなかった。調査の必要がありそうだ。


「分かりました。では三河先生だけにしますよ。」
「フフッ。ありがとうございます。」
「三河先生、すみません。」


俺は三河先生の俺の異能力スキルに関する記憶を消し、能力測定器の故障であるという記憶に偽装した。


「黒霧、ごめんね。用事はこれで終わりだよ。」
「はい、ありがとうございます。」


三河は生徒会室から出た。他の生徒会役員も異能力スキルの解析前に帰ってもらったのでいない。
今、生徒会室にいるのは生徒会長と俺だけだ。


「私の本当の能力知りたい?」
「ええ。」
「教えて上げない。」
「そうだと思いましたよ。」
「隼斗君も中々の策士ね。」
「生徒会長もですよ。」
「フフッ。隼斗君、生徒会に入らない?」
「……俺もそれを頼もうと思ってました。」
「奇遇ね。じゃあOKという事で。」
「書類などはお願いしますよ。」
「分かったわ。」


ハヤトは生徒会室から出た。結局、最後まで記憶は改竄しなかった。


* * * * *


『報告。黒霧隼斗、調査対象を上浦紫乃に決定。今後、上浦紫乃を調査する。』
『了解。』

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