異能力主義学園の判定不能(イレギュラー)

深谷シロ

Episode.2「疑惑」

◇異能科高校・体育館◇


「新入生は並んで下さい。」


入学式より一日。今日は能力テストが実施される。テストと言うが、実際は能力識別を目的としている。新入生には祝福ギフトが配られるが、どの異能力スキルが与えられるかは、高校側も分かっていない。祝福ギフトの原理は不明だ、ということだ。


新入生は五十列ほどに振り分けられて並んでいるが、各列には百人ずつ並んでいる。隼斗は、その中の一つの列の最後尾にいる為、時間が掛かりそうだ。ふと、周りを見回してみた。


隼斗の見た限りでは、同じ中学の人はいなかった。制服はまだ販売していない為、中学の制服を着ている訳だが、中には私服や私立中学の制服を着ている生徒も少なくない。有名私立などの学生もいる。敵にする際には、強敵になるだろう。


「名前を言って下さい。」
「はい、黒霧隼斗です。」
「では、こちらの機械に手を載せて下さい。」


隼斗は能力テストを行った。隼斗が手を載せた機械は、石版で識別後に結果が刻まれるようだ。便利な機械だ。恐らく異能力スキルの賜物だろうが。


「……故障でしょうか。すみません、もう一度手を載せてもらえますか?」
「はい。」


何故か石版には『判定不能』と表示されていた。指示に従い、再び手を載せたが、また『判定不能』。
しかし、異能価値スキルレベルは『レベル30』と刻まれている。


「おかしいですね。能力名もですが、異能価値スキルレベルも新入生のものとは思えません。すみませんが新しい物と交換しますので、少しお待ち下さい。」


そう言って何処かへ走っていった。
人から聞いた話だが、入学当初の異能価値スキルレベルの平均は10~20だそうだ。異能力スキル適正者のみが入学している為、0は有り得ないが逆に30も有り得ない値なのだろう。


「すみません、お待たせしました。こちらにお願いします。」


隼斗は三回目となるが、手を載せた。
結果は変わらない。『判定不能』に異能価値スキルレベルが『レベル30』だ。


「どうやらこれが結果のようです。上の者に判断を仰いでおくので、保留とさせて頂きます。申し訳ございません。」
「いえ、大丈夫です。」


結果には不満があるが、『異能力なし』と表示されるよりは良いだろう。席に戻った。


「新入生の皆さん、ありがとうごさいました。これより各クラスに振り分けが行われます。異能力スキル主義の当校では、異能力スキルのレアリティによって振り分けられます。この結果は三日後の新入生テストによって、再度振り分けられることになります。」


どうやら俺の『判定不能』はそのまま通されたらしい。二十クラスある中で最低のTクラスとなった。
TOPのTだったら良いんだけどな。


「では振り分けられたクラスへ移動して下さい。移動はAクラスからとなります。」


ここで能力の差を実感させる訳だ。先に移動する方がレアリティの高い異能力スキル。後に残る生徒は辛いだろうな。ここから競争心を掻き立てさせたいのかもしれないが。当然、俺は最後だ。十九クラスからの軽蔑の目線は、他の人にとっては辛いようだが俺は別に気にしなかった。


「三日後にある為、クラスメイトの入れ替えはありますが、Tクラスの担任となった桜井小春です。よろしくお願いします。」


Tクラスの担任は二十代半ばの女性教師だった。身長が低い。クラスの中には「可愛い」と言っている奴もいるが、そう言うのならばそうなのだろう。同じクラスの男子生徒の囃し立てには、参加するつもりは無いけどな。


「……」
「……りくん?」
「……」
「……ぎりくん?」
「……」
「黒霧くん!」
「え?あ、何ですか。」
「何ですかじゃないですよ。HRホームルームの後に職員室へ行って下さい。三河先生がお呼びでしたよ。」
「分かりました。」


呼び出しであれば、朝の件だろう。『判定不能』と『レベル30』にケチをつけたり偽ったなどと言うのでは無いだろうか。二つの石版で確かめて、偽ったも何も無いのだが。偽れる異能力スキルもここでしか手に入らないじゃないか。


放課後アフタースクール


「ちょっといいか?」
「どうした?」
「いや、隣の席だから挨拶でも、と思ってな。」
「それもそうだな。俺の名前は黒霧隼斗だ。」
「知ってるよ。先生に言われたじゃねえか。」
「知ってるなら聞く必要は無いと思うが。」
「俺が名乗ろうとしたんだよ。俺の名前は細木ほそき孝一郎こういちろうだ。長いから『細木』か『コウ』とでも呼んでくれ。」
「了解だ。俺の事は好きに呼んでもらっていい。」
「そうか、じゃあよろしくなハヤト。」
「ああ、よろしく細木。」


孝一郎はこの後も話を続けようとしたが、用事があると伝えて席を外した。



◇職員室◇


「失礼します。一年Tクラスの黒霧隼斗です。三河先生はいらっしゃいますか。」


教師達の名前が三河と言うことは無いだろうが、Tクラスと聞いた時の軽蔑する目線が多かった。教師の中でも差別意識があるようだ。このような学校が国立であっていいのか、納得出来ないがそれが自分の実力である為、気づかない振りをしておく。


「あ~君が。」


そう言って寄ってきた男性教師がいた。この人が三河先生なのだろう。


「あ、すまないね。僕が三河だ。君には今日の能力テストの件で話したい事があってね。ここでは何だから、すまないけど生徒指導室でいいかい?」
「大丈夫です。」
「じゃあ、行こうか。」


わざわざ生徒指導室に行かせるという事は、偽ったと思っているのだろう。流石に他の教師に『レベル30』がTクラスと思われたら不味いのだろう。そこで都合が良い為、他の生徒に生徒指導室に入ってる様子を見させる、と。つくづくこの学校の制度には驚かされる。


「ここが生徒指導室だよ。まずは入ってね。」


優しい声で言われても容姿とフィットしない為、少し違和感があるが、それを言うのはマナー違反だろう。少なくともいい加減には扱われていないのだから。


「分かりました。失礼します。」
「その席に座ってくれる?」


三河は生徒指導室の入口を閉めた。決して優しい閉め方とは言えない。大きな音で「バタン。」といった。


「じゃあ朝の件についてだけど。」
「はい。」
「僕達、学校側が使うあの能力測定器は、異能力スキルで出来ているのは気付いている?」
「推測でしたが。」
「やはりね。単刀直入に聞くけど、君はどうやってそんな判定結果を出したんだ。どう偽った?隣で見ていた大人をどうやって騙した?」
「すみませんが、一度に答えは出せません。」
「ああ、すまない。こんな事が開校以来一度も無かったことだからね。」


もうこの三河という教師は、俺の事を完全に疑っているらしい。能力測定器があるなら、その異能師を連れてこさせよう。


「大丈夫です。まず判定結果ですが分かりません。正直、偽りたいのであれば適当な能力名にすれば良いですし、わざわざレベル30などと表示させません。そして自分は違う能力測定器で再び測定しましたが、こちらでも一言一句違わず、同じ結果でした。」
「自分が評価を得たい、という理由もあるかもしれないよ?」
「もし自分が犯人だとして、こんな不利になる事をしますか?」
「僕だったらしないね。でも人間全てが同じ事を考えている訳じゃない。考えた方の相違もあるだろう。僕はその線を考えているのだよ。」
「そうですか、それではどう否定しても意味が無いですね。この学校に異能力スキルで『解析アナライズ』を持った人はいないのですか?」
「どうして能力名を知っている。能力名は生徒と教師しか知らないはずだ。」
「友人にここの生徒だった人がいたんです。」
「その人から能力測定器の偽り方でも聞いたのか?」


やはり意味が無いな。無理矢理、『解析アナライズ』の異能師を連れてこさせよう。


「やはり意味が無いですね。すみませんが、『解析アナライズ』の異能師を連れて来て頂けませんか?それで全てが分かるでしょう?」
「……はぁ、それもそうだね。そうするとしよう。君はここで待っておきなさい。僕が連れてくるから。」


そう言って三河は生徒指導室から出て行った。
今の間に考える事は一つだ。俺が不利にならないように話を持っていく事。少しでも疑いが残れば俺が詐欺師認定される。最悪の場合、停学や退学も有り得るのでは無いだろうか。


「俺はまだこの学校から出る訳にはいかない。」


退学は何として回避する。計画プランは立てた。後は待つとしよう。


──しかし、待つ必要は無かった。扉が開いたのだ。


「こんにちは、黒霧隼斗君。少し良いかな?」

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