藝術

大槻越

第3話 緊張

緊張する。
自分が犯した場所に行くなど、敵陣に行くようなそんな気持ちで、心臓がバクバクしている。
しかし、今の自分ではいけない。
特攻隊のように駄目でもいいから突っ込まないと自分のこれからの人生は真っ暗になってしまう。



自分の家からその場所の最寄駅までおよそ一時間半くらいだろうか。

その一時間半は長く感じるのだろうと思っていたが、それとは逆に早く着いたように感じた。 
鼓動が全身に身にしみて感じる。
手汗がこんなに出たのは初めてだ。
最寄駅が近くなるにつれ、緊張のあまりか電車内のモニターを何度も見るようになっていた。

さらに、お腹が痛くなってきた。
その痛みはさらに激痛になっていく。
自分はその場所に行くのを諦めようと思っていた。
しかし、
「あ・・・・・このバック」
このバックには胃腸薬が入っていた。
嬉しかったのか落胆していたのか、今はよく覚えていない。
自分はその薬を飲んで最寄駅を降りた。
降りた瞬間、なぜかお腹の痛みは治まった。
「まだ薬の効き目の時間じゃないのに」

そう思いながらもまだ鼓動の音は治らない。



「さぁ、行きますか・・・・・」

緊張しているにしては言動は至って冷静であった。

その場所に行く自分の一歩一歩はとても重たい、とても意味のある一歩であるように感じた。


コメント

  • ˙˚ʚまりめろつぇるɞ˚˙

    文の積み重ねが上手ですね!私も見習いたいです…私の作品も見ていただけると嬉しいです

    0
コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品