救世主になんてなりたくなかった……
第4主:二回も死んだ
彼女が鍵を何もない虚空に差し込むと、開いている鉄扉が突如として現れる。ビルルがそのまま進んだので、シュウも慌てて付いていく。
中に入ると現れたのは、城と言われても、違和感がないほどの、大きな敷地に建てられている魔法学校みたいな中世ヨーロッパ風のところだ。
空は驚くほどの晴天だった。
すると、ビルルはクルリとその場で回り、シュウの方を見る。
「ようこそ……って、どうしたの? 顔を抑えて? もしかして、どこか怪我でもした?」
振り返った瞬間にシュウが顔を抑えながら、うずくまっていたので、心配そうに声をかける。
「怪我はしてないです。ですが、髪が顔面にかなりの勢いでクリーンヒットした後に目に入りました」
手で抑えながら、言った彼の言葉に可愛らしく首を傾げている。でも、シュウはそれを見れない。あまりにも痛すぎるのだ。
少ししてから、ビルルはハッとした表情を浮かべる。
「ご、ごめんなさい! 君の髪じゃなくて、わたしの髪だったのね! ホントに不注意でごめんなさい!」
謝罪をしてすぐに下から彼を覗き込むようにして見る。今回は本気で目を開けられないほど痛いので、彼女の姿は見れない。でも、彼にしたら、その方が安心できる。
「ホントにごめんなさい」
彼女は申し訳なさそうに言いながら、彼の頭を持ち、自分の大きな胸に抱き寄せた。
「ちょっ! やめてください!」
突然の出来事だったので、彼女の肩を思いっきり押して、離れる。そして、彼女は思いっきり、地面に尻餅をついた。
「す、すみません。だ、大丈夫ですか?」
そのことを少しの振動でわかったので、慌てて声をかけるが、目は合わせられない。自分の手を見てみると、目への刺激で涙が出ているせいか、手が震えているように見える。
「そんなにわたしが怖い?」
「えっ?」
「だって、わたしに尻餅をつかせただけで、そんなに震えている。それにわたしと目を合わせようとしない。君にはわたしが悪魔に見えるの?」
「そ、そういうわけでは……」
「なら、どうして?」
「そ、それは……」
ついつい口ごもってしまう。
ーー人からの視線が怖い。それにあまり知らない誰かに触れるのが怖い。また、傷つけてしまうかと思ってしまう。
全て、俺自身が悪いのにどうして……どうして、右も左もわからない俺に、親切にしてくれている彼女が悲しそうな顔をするだよ! 隠すな! 隠したっていつかはバレることだ! それを恐れるとか相変わらず俺は最低だ。なら、少しでもちゃんと答えないと。また傷つけてしまう。そんなのは絶対に嫌だ!
彼は意を決したかの表情で彼女を見る。しかし、真正面から見るのはさすがに怖い。だから、視線を少し伏せながら見る。
「恐怖……ですね」
「恐怖……。やっぱり、わたしが悪魔に見えているのね。それもそうか。この世界の人間は異世界人が嫌いと言いながらも、優しくしているんだから。裏があると思われるよね」
「違う!」
「っ!?」
自虐的な笑みを浮かべ始めた彼女を見て、彼はつい強めの口調で、言ってしまう。その言い方だと相手を傷つけると知ってながらも、そう言ってしまう。もう、後には戻れないとわかった彼はそのままの口調で伝えることにする。
「これは俺自身の問題なんだ。キミは悪くない。キミは善人だ。嫌いな異世界人の俺のことを心配してくれているのだからな。だから、俺からするとキミは悪魔ではなく天使に見えている。だから、そんな笑い方をしないでくれ」
最後の自分の言葉に盛大なブーメランだなと言った後にわかって、軽く自虐的な笑みを浮かべる。
「なら……どうして恐怖なの?」
「俺は人と話すのが苦手なんだ。いや、苦手なのは視線を合わせることか。とりあえず、俺はある理由で人に対して恐怖を抱くようになったんだ」
「虐待……?」
「正解。母親から虐待を受けていたんだ。まぁ、俺が元の世界で死んだことによって、あの人の虐待は世に知れ渡っただろうな。俺のいた世界なら、よくあることさ。異世界に転移すること以外はな」
「根掘り葉掘り聞くようで悪いけど、虐待で死んだの?」
「いや、自殺だ。血の繋がりがある実の妹をこの手で殺したからな。もちろん、俺の意思でだ」
自分のことを語り終えて、少し疲れた。おかげで落ち着いてきたのか、勇気に消えていた恐怖が戻ってきた。
「ごめんね。嫌なことを思い出させて」
「いや、別に」
「ハッ! お涙頂戴の嘘偽りの話をして、ビルルを丸め込もうとするとは、随分とセコイ異世界人ね」
シュウの言葉に被さるようにして突然、聞こえてきた少女だけど、少しだけ艶っぽさが現れ始めている声が背後から聞こえたので、シュウは振り返ろうとする。
だが、それを実行する前に首と体がおさらばしていた。
ーー……えっ? 俺は斬られたのか? 全くわからなかったぞ。痛みもないしさ。ある意味すごいな。
異世界に来て、短期間で二回も死んだので彼は妙に落ち着いていた。それに痛みが感じない分、この世界での一度目の死よりも楽だった。
だから、彼は地面にゴトリと落ちた痛みに少し顔を歪めながら、自分を斬った犯人の方を見る。
前髪が眉よりも上で短く切りそろえられていて、後ろ髪もさほど長くない。色は水色。目はつり上がっていて、黄色い瞳を爛々と輝かせている。見た感じだと女の子っぽい顔つきをしているので、ボーイッシュというものだ。しかし、性格は異世界人に対しては凶悪だろうとすぐにわかる。
なぜなら、切り離されたシュウの胴体を笑いながら滅多刺しにしているからだ。刺されるたびに痛みを感じる。
ーーこの世界での一回目の死よりも楽だと思ったやつはバカかよ。てかっ、落ち着きすぎだろ。俺。
死なないとわかったせいか、死んでいるのに妙に落ち着いている自分に驚く。
ーーまぁ、酸で溶かされるよりは刺される方がマシかな。痛いのには変わらないけど。絶対に俺の今の顔を見ると、かなりしかめているだろうな。当たり前か。てかっ、この世界の女は無防備かよ!
少し幼さが残っているが、ビルルと同じ制服を少女も着ている。そして、しゃがみ込んでぶっ刺している。
つまり、パンツが丸見えなのだ。今回は首だけなので目をそらすということはできない。そのせいで、水色の髪の少女の見た目とは裏腹の、大人っぽいパンツをいくら拒絶しようが、目に焼き付けてしまうことになる。
彼女が飽きたのかすぐにぶっ刺すのをやめた。それと同時に意識がテレビの電源を消すみたいに、なくなった。
シュウは神に感謝をした。
中に入ると現れたのは、城と言われても、違和感がないほどの、大きな敷地に建てられている魔法学校みたいな中世ヨーロッパ風のところだ。
空は驚くほどの晴天だった。
すると、ビルルはクルリとその場で回り、シュウの方を見る。
「ようこそ……って、どうしたの? 顔を抑えて? もしかして、どこか怪我でもした?」
振り返った瞬間にシュウが顔を抑えながら、うずくまっていたので、心配そうに声をかける。
「怪我はしてないです。ですが、髪が顔面にかなりの勢いでクリーンヒットした後に目に入りました」
手で抑えながら、言った彼の言葉に可愛らしく首を傾げている。でも、シュウはそれを見れない。あまりにも痛すぎるのだ。
少ししてから、ビルルはハッとした表情を浮かべる。
「ご、ごめんなさい! 君の髪じゃなくて、わたしの髪だったのね! ホントに不注意でごめんなさい!」
謝罪をしてすぐに下から彼を覗き込むようにして見る。今回は本気で目を開けられないほど痛いので、彼女の姿は見れない。でも、彼にしたら、その方が安心できる。
「ホントにごめんなさい」
彼女は申し訳なさそうに言いながら、彼の頭を持ち、自分の大きな胸に抱き寄せた。
「ちょっ! やめてください!」
突然の出来事だったので、彼女の肩を思いっきり押して、離れる。そして、彼女は思いっきり、地面に尻餅をついた。
「す、すみません。だ、大丈夫ですか?」
そのことを少しの振動でわかったので、慌てて声をかけるが、目は合わせられない。自分の手を見てみると、目への刺激で涙が出ているせいか、手が震えているように見える。
「そんなにわたしが怖い?」
「えっ?」
「だって、わたしに尻餅をつかせただけで、そんなに震えている。それにわたしと目を合わせようとしない。君にはわたしが悪魔に見えるの?」
「そ、そういうわけでは……」
「なら、どうして?」
「そ、それは……」
ついつい口ごもってしまう。
ーー人からの視線が怖い。それにあまり知らない誰かに触れるのが怖い。また、傷つけてしまうかと思ってしまう。
全て、俺自身が悪いのにどうして……どうして、右も左もわからない俺に、親切にしてくれている彼女が悲しそうな顔をするだよ! 隠すな! 隠したっていつかはバレることだ! それを恐れるとか相変わらず俺は最低だ。なら、少しでもちゃんと答えないと。また傷つけてしまう。そんなのは絶対に嫌だ!
彼は意を決したかの表情で彼女を見る。しかし、真正面から見るのはさすがに怖い。だから、視線を少し伏せながら見る。
「恐怖……ですね」
「恐怖……。やっぱり、わたしが悪魔に見えているのね。それもそうか。この世界の人間は異世界人が嫌いと言いながらも、優しくしているんだから。裏があると思われるよね」
「違う!」
「っ!?」
自虐的な笑みを浮かべ始めた彼女を見て、彼はつい強めの口調で、言ってしまう。その言い方だと相手を傷つけると知ってながらも、そう言ってしまう。もう、後には戻れないとわかった彼はそのままの口調で伝えることにする。
「これは俺自身の問題なんだ。キミは悪くない。キミは善人だ。嫌いな異世界人の俺のことを心配してくれているのだからな。だから、俺からするとキミは悪魔ではなく天使に見えている。だから、そんな笑い方をしないでくれ」
最後の自分の言葉に盛大なブーメランだなと言った後にわかって、軽く自虐的な笑みを浮かべる。
「なら……どうして恐怖なの?」
「俺は人と話すのが苦手なんだ。いや、苦手なのは視線を合わせることか。とりあえず、俺はある理由で人に対して恐怖を抱くようになったんだ」
「虐待……?」
「正解。母親から虐待を受けていたんだ。まぁ、俺が元の世界で死んだことによって、あの人の虐待は世に知れ渡っただろうな。俺のいた世界なら、よくあることさ。異世界に転移すること以外はな」
「根掘り葉掘り聞くようで悪いけど、虐待で死んだの?」
「いや、自殺だ。血の繋がりがある実の妹をこの手で殺したからな。もちろん、俺の意思でだ」
自分のことを語り終えて、少し疲れた。おかげで落ち着いてきたのか、勇気に消えていた恐怖が戻ってきた。
「ごめんね。嫌なことを思い出させて」
「いや、別に」
「ハッ! お涙頂戴の嘘偽りの話をして、ビルルを丸め込もうとするとは、随分とセコイ異世界人ね」
シュウの言葉に被さるようにして突然、聞こえてきた少女だけど、少しだけ艶っぽさが現れ始めている声が背後から聞こえたので、シュウは振り返ろうとする。
だが、それを実行する前に首と体がおさらばしていた。
ーー……えっ? 俺は斬られたのか? 全くわからなかったぞ。痛みもないしさ。ある意味すごいな。
異世界に来て、短期間で二回も死んだので彼は妙に落ち着いていた。それに痛みが感じない分、この世界での一度目の死よりも楽だった。
だから、彼は地面にゴトリと落ちた痛みに少し顔を歪めながら、自分を斬った犯人の方を見る。
前髪が眉よりも上で短く切りそろえられていて、後ろ髪もさほど長くない。色は水色。目はつり上がっていて、黄色い瞳を爛々と輝かせている。見た感じだと女の子っぽい顔つきをしているので、ボーイッシュというものだ。しかし、性格は異世界人に対しては凶悪だろうとすぐにわかる。
なぜなら、切り離されたシュウの胴体を笑いながら滅多刺しにしているからだ。刺されるたびに痛みを感じる。
ーーこの世界での一回目の死よりも楽だと思ったやつはバカかよ。てかっ、落ち着きすぎだろ。俺。
死なないとわかったせいか、死んでいるのに妙に落ち着いている自分に驚く。
ーーまぁ、酸で溶かされるよりは刺される方がマシかな。痛いのには変わらないけど。絶対に俺の今の顔を見ると、かなりしかめているだろうな。当たり前か。てかっ、この世界の女は無防備かよ!
少し幼さが残っているが、ビルルと同じ制服を少女も着ている。そして、しゃがみ込んでぶっ刺している。
つまり、パンツが丸見えなのだ。今回は首だけなので目をそらすということはできない。そのせいで、水色の髪の少女の見た目とは裏腹の、大人っぽいパンツをいくら拒絶しようが、目に焼き付けてしまうことになる。
彼女が飽きたのかすぐにぶっ刺すのをやめた。それと同時に意識がテレビの電源を消すみたいに、なくなった。
シュウは神に感謝をした。
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