救世主になんてなりたくなかった……
第21主:想い人に容赦ねぇ
「ヒカミーヤさん。服を着替えてくれると助かります」
「そ、そうですよね。妾の肌なんか見ていても気分が悪いだけですよね」
「い、いえ! 決してそういうわけではありません! ただ、今から血を洗い流すのでも、もう一度シャワーを浴びるからですよ」
「でしたら、妾がお手伝いします」
「結構です! も、もし、出ていかないのでしたら俺のそ、粗末なモノを見ることになりますよ!」
「ぜひ見たいです!」
「サルファさん! 悪いけど連れて行ってください!」
「もう、シなくて結構なのか?」
「元からしていない!」
「りょーかい」
サルファは少し文句がありそうだけど、ヒカミーヤを連れて行ってくれた。どうして慌てていたのか、シュウにはわからない。だからシュウはまたシャワーを浴びて血を流し、またあたらしいバスタオルで体を拭き、外に出たら洗濯機から制服を取り出していてくれたようで、ヒカミーヤに渡された。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言いながら受け取り、シュウは脱衣所に入り、腹だしの制服に着替えた。ちなみに洗濯されていた下着も渡されたので、少し恥ずかしいと彼は思っている。
「ヤバい。腹壊すかも……」
当たり前の心配をしながらシュウは扉を開けた。そして、閉めた。
「俺は幻覚でも見たのか?」
額に手を当てながら呟く。でも、すぐに幻覚に違いないと結論づけてもう一度、扉を開ける。でも、やはり閉めた。
「幻覚じゃなかったのか……。でも、一体どういうことだ? 明らかにヤバいものを見た気がする。というか俺があんなところに行っても大丈夫なのか? 下手すると逮捕じゃね? というかどうしてあんなことになっていたんだ。とりあえず状況を整理してみよう」
先ほど見た光景を呼び起こす。でも、一瞬で顔が真っ赤になる。
彼女たちはベットの上で裸で抱き合っていて、色んなところを舐め合っていたのだ。彼が知っている限りだとキスはしていなかった。お互いに涙を流していたので、二人は両想いなのだろうと彼は感じ取った。
二人がまだ男女だった時に両想いになったのだろうと予想した。勇者と魔王が恋に落ちるというのはよくある話なので、別に驚きはしない。同性同士というのも問題ない。
彼女たちを応援したいからこそ彼は自分がいれば邪魔だと考える。だからといって、完全な自由を与えたとしても二人は捕らえられて、長きに渡る尋問という名の拷問がまた始まる。
でも、今のこの状況を邪魔するわけにはいけないのでここを出られない。だからといって、もしビルルが迎えにきたら大変なことになるので、出ずにはいられない。
だから彼は確認のためソッと扉を開けると何事もなかったかのように制服を着ていた。そのことにホッと胸をなでおろして、今いる場所から出た。
軽く横目でベッドを見るとシーツにシワが寄っていた。先ほどのが幻覚ではないことを証明してくれた。明らかに使用済みだ。シュウも寝かされていたが、そのあとにキチンと自分で整えたのでシワは寄っていなかった。
現実世界にいた頃の癖のため簡単に直りはしない。直すつもりもない。几帳面と言われてもこれが自分の性格だと言える自信がある。
「あ、あの……しゅ、シュウ。お風呂場で先程は失礼しました」
「き、気にしないでください。俺の方こそ失礼しました」
「お風呂場どうだ……えっ……」
突然、力でも抜けたのかサルファは背後に倒れそうになる。でも、彼女の背後には机の角がある。かなり危険だ。そのため彼は慌てて駆け寄りなんとか頭を机の角にぶつけないように成功した。代わりに彼の手の甲がぶつかった。
骨に直撃したため切れることはなかったが、ジーンとした痛みが来る。でも、彼女を離すわけにはいかないので堪える。
「ん?」
彼女の体から漂ってきた匂い顔をしかめる。決して臭いというわけではない。ただ、強烈なお湯の匂いが香ったのだ。
「あの……サルファさん」
「な、なんでしょうか?」
彼の気配の違いを感じ取ったのか、敬語で答える。
「お風呂に何かを仕込んだということはないですよね?」
「な、な、ナンノコトカナー」
かなりの棒読みだったので、仕込んだことを確信した。
「何を仕込んだのですか? 言わないと怒りますよ」
もちろん、笑顔で伝えると彼女は引きつった笑みを浮かべる。彼が「ん?」と促すと彼女は口を開いた。
「匂いで女性の性欲が増す媚薬を仕込みました」
「理由は?」
「ヒカミーヤにシュウともっと親密になって欲しかったからです。そしたらまさかのオレ自身もその対象になりました」
「自業自得ですね」
「一つ言っていいか?」
「な、なんでしょうか。サルファさん」
「この状態だとオレはヤバいのだけど」
「えっ?」
彼が声を漏らした瞬間にサルファに押し倒された。そして、彼女は自らの股間を彼のアレになすりつけ始める。
「っ!?」
ヤバいと感じ取ったシュウはヒカミーヤの方を見て助けを求めると、通じたのかコクリと頷き指をパチンと鳴らした。
次の瞬間にサルファは吹き飛ばされて、壁に吹き飛ばした。
ーー想い人に容赦ねぇ。
あまりの容赦のなさに少し苦笑を浮かべるが、愛情表現の一種だと考えたら苦笑すら消えた。
「あの……助かりました」
「た、助かったって何がですか?」
「先ほどの浴槽での言葉です」
「あ、あぁ。アレですか。なら、よかったです。あ、アレは本心ですから」
「でしたら、なおさらありがとうございます! 嬉しかったです。ですが、決して嫌になるなんてことはないですよ」
「わ、わからないじゃないですか。もしかしたら俺がDV男になるかもしれませんよ」
「それでも妾は受け入れます」
「…………」
何も言い返せなかった。よく考えれば彼女たちは今まで散々やられてきた。ならばきっと慣れているはずだ。彼の頭からそのことが抜けていた。傷一つないからかもしれない。そう考えるとこの世界は死ぬと傷跡がなくなる。どれくらい傷つけられていてもそれがホントかわからない。
もしかすると、ビルルですら傷だらけなのかもしれない。もし、そうだとしたら心に傷を負っているはずだ。だから、異世界人に優しくするのだという考えに思い至った。
「さぁ、シュウくん。行こう」
彼女のことを考えた瞬間に現れたので、少し驚いてしまう。
「そこも付いて来いよ。せいぜい彼を守る壁となってよ」
彼女の言葉を聞いて傷を負っているとかないなと彼は確信した。そして、彼女のあとについていく。そこから少し離れた場所にサルファとヒカミーヤが付いてきている。
「そ、そうですよね。妾の肌なんか見ていても気分が悪いだけですよね」
「い、いえ! 決してそういうわけではありません! ただ、今から血を洗い流すのでも、もう一度シャワーを浴びるからですよ」
「でしたら、妾がお手伝いします」
「結構です! も、もし、出ていかないのでしたら俺のそ、粗末なモノを見ることになりますよ!」
「ぜひ見たいです!」
「サルファさん! 悪いけど連れて行ってください!」
「もう、シなくて結構なのか?」
「元からしていない!」
「りょーかい」
サルファは少し文句がありそうだけど、ヒカミーヤを連れて行ってくれた。どうして慌てていたのか、シュウにはわからない。だからシュウはまたシャワーを浴びて血を流し、またあたらしいバスタオルで体を拭き、外に出たら洗濯機から制服を取り出していてくれたようで、ヒカミーヤに渡された。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言いながら受け取り、シュウは脱衣所に入り、腹だしの制服に着替えた。ちなみに洗濯されていた下着も渡されたので、少し恥ずかしいと彼は思っている。
「ヤバい。腹壊すかも……」
当たり前の心配をしながらシュウは扉を開けた。そして、閉めた。
「俺は幻覚でも見たのか?」
額に手を当てながら呟く。でも、すぐに幻覚に違いないと結論づけてもう一度、扉を開ける。でも、やはり閉めた。
「幻覚じゃなかったのか……。でも、一体どういうことだ? 明らかにヤバいものを見た気がする。というか俺があんなところに行っても大丈夫なのか? 下手すると逮捕じゃね? というかどうしてあんなことになっていたんだ。とりあえず状況を整理してみよう」
先ほど見た光景を呼び起こす。でも、一瞬で顔が真っ赤になる。
彼女たちはベットの上で裸で抱き合っていて、色んなところを舐め合っていたのだ。彼が知っている限りだとキスはしていなかった。お互いに涙を流していたので、二人は両想いなのだろうと彼は感じ取った。
二人がまだ男女だった時に両想いになったのだろうと予想した。勇者と魔王が恋に落ちるというのはよくある話なので、別に驚きはしない。同性同士というのも問題ない。
彼女たちを応援したいからこそ彼は自分がいれば邪魔だと考える。だからといって、完全な自由を与えたとしても二人は捕らえられて、長きに渡る尋問という名の拷問がまた始まる。
でも、今のこの状況を邪魔するわけにはいけないのでここを出られない。だからといって、もしビルルが迎えにきたら大変なことになるので、出ずにはいられない。
だから彼は確認のためソッと扉を開けると何事もなかったかのように制服を着ていた。そのことにホッと胸をなでおろして、今いる場所から出た。
軽く横目でベッドを見るとシーツにシワが寄っていた。先ほどのが幻覚ではないことを証明してくれた。明らかに使用済みだ。シュウも寝かされていたが、そのあとにキチンと自分で整えたのでシワは寄っていなかった。
現実世界にいた頃の癖のため簡単に直りはしない。直すつもりもない。几帳面と言われてもこれが自分の性格だと言える自信がある。
「あ、あの……しゅ、シュウ。お風呂場で先程は失礼しました」
「き、気にしないでください。俺の方こそ失礼しました」
「お風呂場どうだ……えっ……」
突然、力でも抜けたのかサルファは背後に倒れそうになる。でも、彼女の背後には机の角がある。かなり危険だ。そのため彼は慌てて駆け寄りなんとか頭を机の角にぶつけないように成功した。代わりに彼の手の甲がぶつかった。
骨に直撃したため切れることはなかったが、ジーンとした痛みが来る。でも、彼女を離すわけにはいかないので堪える。
「ん?」
彼女の体から漂ってきた匂い顔をしかめる。決して臭いというわけではない。ただ、強烈なお湯の匂いが香ったのだ。
「あの……サルファさん」
「な、なんでしょうか?」
彼の気配の違いを感じ取ったのか、敬語で答える。
「お風呂に何かを仕込んだということはないですよね?」
「な、な、ナンノコトカナー」
かなりの棒読みだったので、仕込んだことを確信した。
「何を仕込んだのですか? 言わないと怒りますよ」
もちろん、笑顔で伝えると彼女は引きつった笑みを浮かべる。彼が「ん?」と促すと彼女は口を開いた。
「匂いで女性の性欲が増す媚薬を仕込みました」
「理由は?」
「ヒカミーヤにシュウともっと親密になって欲しかったからです。そしたらまさかのオレ自身もその対象になりました」
「自業自得ですね」
「一つ言っていいか?」
「な、なんでしょうか。サルファさん」
「この状態だとオレはヤバいのだけど」
「えっ?」
彼が声を漏らした瞬間にサルファに押し倒された。そして、彼女は自らの股間を彼のアレになすりつけ始める。
「っ!?」
ヤバいと感じ取ったシュウはヒカミーヤの方を見て助けを求めると、通じたのかコクリと頷き指をパチンと鳴らした。
次の瞬間にサルファは吹き飛ばされて、壁に吹き飛ばした。
ーー想い人に容赦ねぇ。
あまりの容赦のなさに少し苦笑を浮かべるが、愛情表現の一種だと考えたら苦笑すら消えた。
「あの……助かりました」
「た、助かったって何がですか?」
「先ほどの浴槽での言葉です」
「あ、あぁ。アレですか。なら、よかったです。あ、アレは本心ですから」
「でしたら、なおさらありがとうございます! 嬉しかったです。ですが、決して嫌になるなんてことはないですよ」
「わ、わからないじゃないですか。もしかしたら俺がDV男になるかもしれませんよ」
「それでも妾は受け入れます」
「…………」
何も言い返せなかった。よく考えれば彼女たちは今まで散々やられてきた。ならばきっと慣れているはずだ。彼の頭からそのことが抜けていた。傷一つないからかもしれない。そう考えるとこの世界は死ぬと傷跡がなくなる。どれくらい傷つけられていてもそれがホントかわからない。
もしかすると、ビルルですら傷だらけなのかもしれない。もし、そうだとしたら心に傷を負っているはずだ。だから、異世界人に優しくするのだという考えに思い至った。
「さぁ、シュウくん。行こう」
彼女のことを考えた瞬間に現れたので、少し驚いてしまう。
「そこも付いて来いよ。せいぜい彼を守る壁となってよ」
彼女の言葉を聞いて傷を負っているとかないなと彼は確信した。そして、彼女のあとについていく。そこから少し離れた場所にサルファとヒカミーヤが付いてきている。
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