愛した人を殺しますか?――はい/いいえ
第49話 無用な正義
空になったエールを見て、わたしは少し落ち込んだ。ラムズが全部飲んじゃった。まぁそんなにお酒が欲しかった訳でもないからいいんだけど。
それで、シーフの神力は、
謎かけの答えである名前
答えを間違えた者の所持品を無断で盗む能力
名前を知っている者以外に殺されない性質
爪のない指
──だったわよね。
うーん。無断で盗む? 考えるの面倒だし、ラムズに聞いちゃえばいいか。わたしはラムズの方に顔を向けて尋ねた。
「シーフの神力のこと、教えて」
「ああ。例えばさっき俺たちはシーフに出会った。その男は俺たちにこう聞いた。『背の低い人は背の高い人を追い越すことが出来ない。それは何故か』。レオンは答えが分かるか」
「背の低い人、高い人……? 追い越す。もしかして────時計だから?」
わたしはぎょっとした顔でレオンを見た。
なんだかますますレオンに追い越されている。わたしってやっぱり馬鹿なのかな……
(そんなことないわよね。ありがと)。
「合っている。冴えているな」
「まじ? ラムズにそう言われると嬉しいわ。俺これでも進学校だったんだ……。全然ついていけなかったけどさ」
「シンガクコウ?」
「あーごめん、こっちの話。それでその謎かけの答え、つまり『時計』がその男の名前ってことか?」
「ああ。だが時計ではなく、『Temps』だ。彼らの名前は、詠唱の"名称"と対応している。例えば時間逆行魔法は、『時よ、彼の物のみ、逆行せよ。Tempro Treach』と発音するだろ」
わたしたちは頷く。当たり前だけど、今は言霊をのせて発音したわけじゃないから、魔法は発動しない。ラムズが続けて言った。
「"名称"の方の『Tempro Treach』は、元々時計を意味する『Temps』を使っている。この『Temps』が彼の名前だ。魔法の詠唱をするようにこの名前を言うと、そいつのことを殺せるようになる」
「じゃあまず魔法もちゃんと分かってないといけないのか。そんでつまり、シーフは謎かけの答えを当てるまで不死身ってことか?」
「ああ。
シーフは人間だった時と『名前』が変わる。
その名前は、そいつの『謎かけの答え』になる。
『名前』を知っている者のみがそいつを殺せる」
(魔法の詠唱の"名称"が、普段話している言葉と違うのはなんでなのかしらね。そういえば魔物の魔石の文字とか、魔法陣に書いてある文字もよく分からない。一般で使われている文字とは違うし、わたしは読めないわ。
あとは、例えば血の別名はブラッドなんだけど、なんで二つ言い方があるんだろう? 血とブラッドは全然違う発音よね。あぁ、話し言葉や普段使う文字は一応どの使族も同じよ)
わたしは目を白黒させながら、とりあえず頷いた。ラムズは怪訝そうな顔でわたしを見ている。ちなみにレオンは、そんなわたしを無視してそのまま話を続けた。
「じゃあ、答えを間違えた者の所持品を奪えるっていうのは?」
「例えば、俺が答えを間違えたとしよう。すると、彼が分かる範囲の俺が持っている物を盗めるんだ。例えばこのサファイアのネックレスがあるだろ?」
ラムズは胸元にある大きなサファイアのネックレスを持ち上げた
(わたしはついていけなすぎて、じっくりラムズたちの会話を聞いているところなの。わたしが喋ってないのはそういうわけ)。
「彼がこれを盗もうと思うだけで、彼の掌にサファイアのネックレスが現れる、そして俺の首から消えるという訳だ」
「直接触れずとも手に入れられるってことだな。でも、見えていない物以外は手に入らない?」
「ああ。シーフが『こいつはこれを持っている』と確信出来る物以外は無理だ」
「あの……。もしかして、あの時わたしが間違えた答えを言っていたら……」
「まあ、金かその服が盗まれただろうな」
わたしはひやっとして自分の身体を抱きしめた。服も盗めるの? 道端で裸になっちゃうってことじゃない。人魚だってバレちゃう。さっきラムズが止めてくれてよかった。
ラムズがわたしたちのことを交互に見た。
「とにかく、シーフについては理解したな? 爪がないのはそのままの意味だ。だからあいつらは手袋をしていることが多い」
「そういえばさっきの人も手袋をしていたわね」
「だろ。レオンもメアリも、確信を持って答えを当てられないなら、絶対に謎かけに答えるな。変なタイミングで謎かけを出すやつは大抵シーフだ。酒に酔っている時に聞いてくるやつもいるからな、気をつけろよ」
「はあい」
「わかった。もう一つのシャドウキラーってのはいいのか?」
「あー。まあシャドウキラーは関わってこないだろう。俺たちがそんなに目立ったことをしている訳では無いからな。
シャドウキラーは、さっき言ったように暗殺に特化した神力を持つ。出会ってもすぐ忘れるような容姿、足音と影がない、髪と瞳が黒、壁と天井を歩ける──が、彼らの神力だ」
「出会ってもすぐに忘れる……。天井を歩ける?!」
「ああ。だからあいつらを探すのは相当大変だ。殺す時はその場で殺さないと、ほぼ見つけられないと言っても過言じゃない」
ラムズの言っていることはなんとなく理解出来た。シーフに関しては、とりあえず何か聞かれても答えないようにしよう。レオンは知らないけど、わたしはそういう謎かけとか苦手みたい。
ラムズは「馬鹿が多いと疲れる」とか言って椅子の背に体重をかけた。馬鹿で悪かったわね……。むしろラムズって色んなこと知りすぎじゃない? ヴァンピールって長寿なのかしら。
わたしは頭の中で今回知ったことを整理していた。すると椅子にもたれかかったまま、ラムズがふと口を開いた。
「そういえばレオン。シエリ・クロスという者を知っているか? 名前が変だと思ったからもしかしてお前の知り合いかと思ったんだが」
ラムズが全て言い終わらないうちに、レオンは頭を抱えて何やら考え始めた。視線を左右に動かしている。何かを思い出そうとしているみたいだ。
「シエリ……クロス……? もしかして、え。いや、待てよ。えっと──そう。なんで黒須が? あの時俺の近くにいたっけ……」
「知っているなら早く答えろ」
「うん、知ってる。そいつも転移者だ。俺のクラスメイトで──、そうだ。風紀委員長だったんだ。可愛くはあるんだけど、真面目で面倒なやつでさ。たしか曲がったことが嫌いだったような。あとは……そっか、イジメとかも許さないような奴だったかな」
「おい。全然言葉が分からない。こっちの言葉で説明しろ」
「えっと。あいつの名前は黒須熾衿。正義感みたいなものが強いっていうか、曲がったことが嫌いなんだ」
「正義感──。もしかして、だからクラーケンを倒したのか……?」
「クラーケン?」
ようやくわたしが分かる話になってきたわ……。わたしって今ここにいる必要があるのか、すごく悩んでいたところだったの。全然会話に入れないし。
でもこれは分かった。クロスシエリというのはレオンの知り合い。そしてその人がクラーケンを倒したってこと。
今度はわたしがレオンに説明する番ね。
「クラーケンが死んでしまったのよ。クラーケンやミノタウロスのような、神様に操られるみたいにして人間を襲う使族は、討伐しちゃいけないの」
「なんでだ?」
「討伐すると、もっと強い使族が創られるからよ」
「それ聞いたかも。アイロスの爺さんが言ってた。クラーケンの前はヨルムンガンドだったって」
(ヨルムンガンドは800年以上前に海にいた使族。巨大なポイズスネイクみたいな見た目よ。全身に鱗があって、体の太さは人間10人分くらいあったとか。ドラゴンのような翼も生えていたって聞いたことがある。海にいた使族だから人魚の中で伝えられているのよ。アイロスさんは物知りね。ヨルムンガンドの前はたしか──シーサーペントだっけ?)
「そうね……。ヨルムンガンドも討伐されてしまったのよ。それで、もっと強いクラーケンが創られた。今回クラーケンが討伐されたせいで、さらに強い使族が生まれるはずよ」
「黒須はきっとそれを知らなかったんだな……」
「クラーケン討伐には、まだ協力者がいるはずだ。それに心当たりはないか? レオン」
「うーん。転移者が誰なのかは分からないんだ。いきなりのこと過ぎて覚えてなくてさ。黒須は魔法陣の近くにもいなかった気がするしな……。分かんないや」
「それなら仕方ない。じゃあメアリ、もう帰るか?」
ラムズはわたしの方を見て、そう声をかけた。わたしが眠そうにしていたからかも。難しい話ばっかりでつまらなかったのだ。もちろん一応は理解したけどね?
本当はレオンと少し話がしたかったから、まだここにいようかな。わたしがその旨を伝えると、ラムズは頷いて席を立った。気を遣ってくれたみたいね。
ラムズは離れたところに座り、何やら飲み物の注文をしている
(ラムズの舌って肥えていそうよね。こんな所の飲み物でも美味しいと思うのかしら)。
ラムズがいなくなって、レオンはわたしの方に身体を向けた。
「メアリ帰らないのか?」
「うん! ちょっと愚痴を聞いて欲しくて」
「いいよ。何かあったのか?」
「それがね、ラムズがわたしの事を部屋に閉じ込めたの!」
「え? は? どういうこと?」
「ほら、部屋って一緒に泊まるじゃない? それでラムズが朝方部屋を出ていったらしくて、それで魔法で内側からも出られなくしちゃったのよ」
レオンは開いた口が塞がらないという風で、呆気に捉えている。たしかに、やっぱり閉じ込めるなんて酷いわよね。わたしも朝から外に出たかったのになー。
「メアリ、常識おかしいぞ」
レオンはわたしの肩を掴んで揺すった。
常識? 常識がおかしいのはラムズでしょ? 何言っているんだろう。
それで、シーフの神力は、
謎かけの答えである名前
答えを間違えた者の所持品を無断で盗む能力
名前を知っている者以外に殺されない性質
爪のない指
──だったわよね。
うーん。無断で盗む? 考えるの面倒だし、ラムズに聞いちゃえばいいか。わたしはラムズの方に顔を向けて尋ねた。
「シーフの神力のこと、教えて」
「ああ。例えばさっき俺たちはシーフに出会った。その男は俺たちにこう聞いた。『背の低い人は背の高い人を追い越すことが出来ない。それは何故か』。レオンは答えが分かるか」
「背の低い人、高い人……? 追い越す。もしかして────時計だから?」
わたしはぎょっとした顔でレオンを見た。
なんだかますますレオンに追い越されている。わたしってやっぱり馬鹿なのかな……
(そんなことないわよね。ありがと)。
「合っている。冴えているな」
「まじ? ラムズにそう言われると嬉しいわ。俺これでも進学校だったんだ……。全然ついていけなかったけどさ」
「シンガクコウ?」
「あーごめん、こっちの話。それでその謎かけの答え、つまり『時計』がその男の名前ってことか?」
「ああ。だが時計ではなく、『Temps』だ。彼らの名前は、詠唱の"名称"と対応している。例えば時間逆行魔法は、『時よ、彼の物のみ、逆行せよ。Tempro Treach』と発音するだろ」
わたしたちは頷く。当たり前だけど、今は言霊をのせて発音したわけじゃないから、魔法は発動しない。ラムズが続けて言った。
「"名称"の方の『Tempro Treach』は、元々時計を意味する『Temps』を使っている。この『Temps』が彼の名前だ。魔法の詠唱をするようにこの名前を言うと、そいつのことを殺せるようになる」
「じゃあまず魔法もちゃんと分かってないといけないのか。そんでつまり、シーフは謎かけの答えを当てるまで不死身ってことか?」
「ああ。
シーフは人間だった時と『名前』が変わる。
その名前は、そいつの『謎かけの答え』になる。
『名前』を知っている者のみがそいつを殺せる」
(魔法の詠唱の"名称"が、普段話している言葉と違うのはなんでなのかしらね。そういえば魔物の魔石の文字とか、魔法陣に書いてある文字もよく分からない。一般で使われている文字とは違うし、わたしは読めないわ。
あとは、例えば血の別名はブラッドなんだけど、なんで二つ言い方があるんだろう? 血とブラッドは全然違う発音よね。あぁ、話し言葉や普段使う文字は一応どの使族も同じよ)
わたしは目を白黒させながら、とりあえず頷いた。ラムズは怪訝そうな顔でわたしを見ている。ちなみにレオンは、そんなわたしを無視してそのまま話を続けた。
「じゃあ、答えを間違えた者の所持品を奪えるっていうのは?」
「例えば、俺が答えを間違えたとしよう。すると、彼が分かる範囲の俺が持っている物を盗めるんだ。例えばこのサファイアのネックレスがあるだろ?」
ラムズは胸元にある大きなサファイアのネックレスを持ち上げた
(わたしはついていけなすぎて、じっくりラムズたちの会話を聞いているところなの。わたしが喋ってないのはそういうわけ)。
「彼がこれを盗もうと思うだけで、彼の掌にサファイアのネックレスが現れる、そして俺の首から消えるという訳だ」
「直接触れずとも手に入れられるってことだな。でも、見えていない物以外は手に入らない?」
「ああ。シーフが『こいつはこれを持っている』と確信出来る物以外は無理だ」
「あの……。もしかして、あの時わたしが間違えた答えを言っていたら……」
「まあ、金かその服が盗まれただろうな」
わたしはひやっとして自分の身体を抱きしめた。服も盗めるの? 道端で裸になっちゃうってことじゃない。人魚だってバレちゃう。さっきラムズが止めてくれてよかった。
ラムズがわたしたちのことを交互に見た。
「とにかく、シーフについては理解したな? 爪がないのはそのままの意味だ。だからあいつらは手袋をしていることが多い」
「そういえばさっきの人も手袋をしていたわね」
「だろ。レオンもメアリも、確信を持って答えを当てられないなら、絶対に謎かけに答えるな。変なタイミングで謎かけを出すやつは大抵シーフだ。酒に酔っている時に聞いてくるやつもいるからな、気をつけろよ」
「はあい」
「わかった。もう一つのシャドウキラーってのはいいのか?」
「あー。まあシャドウキラーは関わってこないだろう。俺たちがそんなに目立ったことをしている訳では無いからな。
シャドウキラーは、さっき言ったように暗殺に特化した神力を持つ。出会ってもすぐ忘れるような容姿、足音と影がない、髪と瞳が黒、壁と天井を歩ける──が、彼らの神力だ」
「出会ってもすぐに忘れる……。天井を歩ける?!」
「ああ。だからあいつらを探すのは相当大変だ。殺す時はその場で殺さないと、ほぼ見つけられないと言っても過言じゃない」
ラムズの言っていることはなんとなく理解出来た。シーフに関しては、とりあえず何か聞かれても答えないようにしよう。レオンは知らないけど、わたしはそういう謎かけとか苦手みたい。
ラムズは「馬鹿が多いと疲れる」とか言って椅子の背に体重をかけた。馬鹿で悪かったわね……。むしろラムズって色んなこと知りすぎじゃない? ヴァンピールって長寿なのかしら。
わたしは頭の中で今回知ったことを整理していた。すると椅子にもたれかかったまま、ラムズがふと口を開いた。
「そういえばレオン。シエリ・クロスという者を知っているか? 名前が変だと思ったからもしかしてお前の知り合いかと思ったんだが」
ラムズが全て言い終わらないうちに、レオンは頭を抱えて何やら考え始めた。視線を左右に動かしている。何かを思い出そうとしているみたいだ。
「シエリ……クロス……? もしかして、え。いや、待てよ。えっと──そう。なんで黒須が? あの時俺の近くにいたっけ……」
「知っているなら早く答えろ」
「うん、知ってる。そいつも転移者だ。俺のクラスメイトで──、そうだ。風紀委員長だったんだ。可愛くはあるんだけど、真面目で面倒なやつでさ。たしか曲がったことが嫌いだったような。あとは……そっか、イジメとかも許さないような奴だったかな」
「おい。全然言葉が分からない。こっちの言葉で説明しろ」
「えっと。あいつの名前は黒須熾衿。正義感みたいなものが強いっていうか、曲がったことが嫌いなんだ」
「正義感──。もしかして、だからクラーケンを倒したのか……?」
「クラーケン?」
ようやくわたしが分かる話になってきたわ……。わたしって今ここにいる必要があるのか、すごく悩んでいたところだったの。全然会話に入れないし。
でもこれは分かった。クロスシエリというのはレオンの知り合い。そしてその人がクラーケンを倒したってこと。
今度はわたしがレオンに説明する番ね。
「クラーケンが死んでしまったのよ。クラーケンやミノタウロスのような、神様に操られるみたいにして人間を襲う使族は、討伐しちゃいけないの」
「なんでだ?」
「討伐すると、もっと強い使族が創られるからよ」
「それ聞いたかも。アイロスの爺さんが言ってた。クラーケンの前はヨルムンガンドだったって」
(ヨルムンガンドは800年以上前に海にいた使族。巨大なポイズスネイクみたいな見た目よ。全身に鱗があって、体の太さは人間10人分くらいあったとか。ドラゴンのような翼も生えていたって聞いたことがある。海にいた使族だから人魚の中で伝えられているのよ。アイロスさんは物知りね。ヨルムンガンドの前はたしか──シーサーペントだっけ?)
「そうね……。ヨルムンガンドも討伐されてしまったのよ。それで、もっと強いクラーケンが創られた。今回クラーケンが討伐されたせいで、さらに強い使族が生まれるはずよ」
「黒須はきっとそれを知らなかったんだな……」
「クラーケン討伐には、まだ協力者がいるはずだ。それに心当たりはないか? レオン」
「うーん。転移者が誰なのかは分からないんだ。いきなりのこと過ぎて覚えてなくてさ。黒須は魔法陣の近くにもいなかった気がするしな……。分かんないや」
「それなら仕方ない。じゃあメアリ、もう帰るか?」
ラムズはわたしの方を見て、そう声をかけた。わたしが眠そうにしていたからかも。難しい話ばっかりでつまらなかったのだ。もちろん一応は理解したけどね?
本当はレオンと少し話がしたかったから、まだここにいようかな。わたしがその旨を伝えると、ラムズは頷いて席を立った。気を遣ってくれたみたいね。
ラムズは離れたところに座り、何やら飲み物の注文をしている
(ラムズの舌って肥えていそうよね。こんな所の飲み物でも美味しいと思うのかしら)。
ラムズがいなくなって、レオンはわたしの方に身体を向けた。
「メアリ帰らないのか?」
「うん! ちょっと愚痴を聞いて欲しくて」
「いいよ。何かあったのか?」
「それがね、ラムズがわたしの事を部屋に閉じ込めたの!」
「え? は? どういうこと?」
「ほら、部屋って一緒に泊まるじゃない? それでラムズが朝方部屋を出ていったらしくて、それで魔法で内側からも出られなくしちゃったのよ」
レオンは開いた口が塞がらないという風で、呆気に捉えている。たしかに、やっぱり閉じ込めるなんて酷いわよね。わたしも朝から外に出たかったのになー。
「メアリ、常識おかしいぞ」
レオンはわたしの肩を掴んで揺すった。
常識? 常識がおかしいのはラムズでしょ? 何言っているんだろう。
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