愛した人を殺しますか?――はい/いいえ
第5話 宝石狂いの船長
わたしが船長室の前に着いたとき、ラムズは気怠そうに船尾楼の階段を降りていた。海賊帽の隙間で、銀の短髪が風に揺れている。
彼の見た目は、やっぱり"王子様"だ。冷えた笑いと隈を無くせたら、英雄もどきの素敵な王子に見える。髭はないし、顔自体も整っているしね。それに細身の身体、清潔感のある見た目は全然海賊らしくない。
髪が赤くないから、ラムズはルテミスじゃない。ただの人間かな? でもなんとなくそうは見えないのよね。かといって他に思いつく使族もいないんだけど。あまり知られていない使族とか?
(そうそう、使族は神様が創った存在よ。人間も使族の内の一つ。神様は全部で七人いるけど、わたしの使族は水の神ポシーファルだけで創られたの。他にも使族はたくさんいるわよ。クラーケンとかエルフとかね)
もし人間だとしても、こんなに若いのにルテミスを率いるなんて、よっぽどの統率力があるってことよね
(若いって言ってもわたしと同じかちょっと上くらいよ)。
 
「ジウ、今船はどこに向かっているんだ?」
ラムズは階段の上で、ふと思いついたように言った。舵輪を握るジウが返事をする。
「船長がトルティガーって言ったから、そっちに向かってるけど」
「そうか」
……ううん。彼に統率力があるとは思えない。
むしろ、自分の興味があること以外には手を出さないっていう感じ。興味があることは宝石なんだし、そこは海賊の船長らしいと言えばそうなんだけど。
ラムズは階段を降りてわたしの前に立った。右手で勢いよく船長室の扉を開ける。
「ようこそ俺の船長室へ」
わたしは息を飲んだ。ラムズを見る。ラムズは小首を傾げ、にこりと笑った。それはもう……これ以上ない幸せっていう感じで。
わたしは目をこすって、もう一度部屋の中を見た。間違いない。間違い、ない。これは夢じゃない。
──部屋には、宝石しか、なかった。
わたしは意を決して、部屋の中へ踏み込んだ。
ダイヤモンド、オパール、サファイア、エメラルド、ルビー、トパーズ、ガーネット────。数え上げたら切りがない。見たことのない宝石もある。
部屋には小さな窓があるだけで、太陽の光がさんさんと降り注いでいるって感じはない。むしろ薄暗いくらいだ。
でも、変に明るい。宝石が自分の持つ煌めきを最大限に放っているのだ。キラキラするー、なんてもんじゃない。宝石が互いに反射し合っていて、なんだか光に攻撃されている気がする。
目が痛くはならないの!?
……ラムズは既に、愛おしそうに自分の宝石を眺めていた
(ラムズの宝石狂い具合、まだ知りたい? 分かった分かった。じゃあ一応説明しておくわね。
まずは宝石のついたネックレスにブレスレット、指輪に金塊、ティアラ、髪飾り、イヤリング。
天井にはダイヤモンドのシャンデリアが飾ってあるし、壁にかかった黒い布には、夜空の星をなぞるようにピアスが並んでいる。棚という棚には宝石が敷き詰められ、一部の床は数十種類にも渡る赤い宝石に覆われている。赤い絨毯だと思っていたのは宝石だったのよ!
それ以外にも、宝石がついているものならばなんでもあった。
水晶のグラス、金細工の肘掛け椅子、七色のオパールで作った花瓶。机にはブラックオパールが埋め込まれている。その机に乗っているのは、ホワイトとブラックのダイヤでできたチェスの駒…………。
──こんなところでいい? もう十分でしょ?)。
ラムズ・シャークは頭がおかしい!
断言できるわ。こんなにも宝石に執着心があるなんて異常よ。気持ち悪いって言っても罰は当たらないはず!
「全部集めたんだ。全部俺のだ」
ハァ、そうですか。わたしはこんなたくさんの宝石、さすがにいらないわ。
本当に、目が痛くなる! この部屋で寝ているんだろうけど、わたしならチカチカして寝れやしないわ。もう一度言うけど、異常ね。
今まで見てきたお宝が好きな海賊──ううん、もっと宝石やらお金やらに執着のある貴族の中にも、ここまでの男はいないと思う。
「よかった……じゃない」
これでも、精一杯の笑顔を見せたと思う。「羨ましいわ!」って感じの笑顔をね。……たぶん失敗したけど。
でもラムズは、そんなわたしの努力はどうでもよかったみたい。いつの間にか、金色の肘掛け椅子に座って机の上のチェスで遊んでいる。わたしはその机の向かいで、ラムズが一体何を言い出すのかと考えた
(長い睫毛が下を向き、口を噤んでチェスを並べる彼の姿は、不覚にも綺麗だと思っちゃった)。
「えっと、なんで呼んだの?」
「ああ、そうだった。この部屋に来ると、俺は仕事を全部忘れるんだよな」
この部屋じゃ、仕事なんてろくにできないでしょうね。宝石の煌めきで、頭がおかしくなっちゃいそうだもの。
ラムズは何やら魔法をかけた。たぶん自分にだと思う。
彼は左目につけていた眼帯を取る。目までかかっている少し長めの前髪が、さらりと揺れる。二つの青い眼が、今まで宝石を見ていた目つきと同じように、優しく輝いた気がした。
「服、脱いでくれ」
ラムズは、あくまで普通に言った。今言ったことは、何も不思議なことではなく、わたしが「分かったわ」って一つ返事ですむことだというくらい、ごく、普通に。
「どうして?」
わたしも、普通に返した。
「お腹が空いたんだ」「そうなの?」って、そんな会話をする感じで。
「どうしてって、メアリの体が見たいからに決まってんだろ」
ラムズ・シャークは、平気でここまでの発言ができる男だったのね。しかもこんな昼間から。
「ごめんなさい。わたしはこの船に娼婦として来たわけじゃないわ。ただの船員として来たのよ。どうしてわたしが」
「そんなん分かってる」
ラムズは机に乗った。机の上でしゃがんで、わたしに手を伸ばした。目と鼻の先に、ラムズの顔がある。
なんていうか、この笑み、すごくまずい気がする。
「だから脱がないって言ってるでしょ」
「勘違いしてねえか?」
ラムズは身を乗り出すと、わたしの腕を掴んだ。
絶対絶命。
後ろにドアがある。このままラムズを後ろへ押し倒して、ドアに突進して……。そうしたらきっと間に合う。
「俺はこれが見たいだけだ────」
ガタンと大きな音がして、急に部屋が明るくなった
(宝石のキラキラじゃなくて、健康的な明るさの方)。
「せんちょ……。なにしてんの?」
ジウにしては相当低い声だったと思う
(操舵手のジウは、いつもは可愛らしい声を出している。男にしては高くて、まぁ子供っぽい声ってことよ。あんな可愛いヤツにやられそうになったなんて、わたしもカトラスの腕が落ちたかな)。
ジウの隣には、一人の男が立っている。逆光で顔がよく見えない。
とにかく、助かった。本当に助かった。
ラムズが何をするつもりだったのかは分からないけど、とにかくよかったわ。人がいる前で脱がすわけないわよね。それにわたしがここで服を脱いだら……。
あ、もしかして、そういうこと?
「ジウ、ノックくらいしろ。俺はこれからお楽しみだったんだ」
「船長、女に興味なんてあったっけ?」
「そんなのねえよ。なんの用だ」
ラムズは机から飛び降りると、入口で立ったままのジウの方へ、つかつかと歩いていった。どうやら、許可がない限り部屋の中へ入るのは禁止されているらしい。
ジウは隣に立っている男をぽんぽんと叩いた。
「こいつ、船長に会いたかったんだってさ」
ラムズは怪訝そうな顔をして、男の顔を覗き込んだ。男は目を輝かせて、ラムズに言った。
「俺、ラムズ・シャーク船長に憧れてたんっす! この船で働けて光栄っす! これからよろしくお願いします!」
「へえ、どうも。頑張って」
ラムズはやっぱり気怠そうに言った。
あの男はルド・アネルだわ。声を聞いて分かった。オパール号にいたとき世話になってた男。
気も合うしこの船にいてくれてよかった……じゃなくて、どういうこと? ここにいるのはさっきオパール号に戻り損ねたからだとして、その喋り方は一体どうしたの?
それにラムズを尊敬? むしろわたしが波でこのガーネット号に悪戯をしたとき、喜んでいたじゃない。
わたしは三人の方へ行くと、前に立っていたラムズを押しやった。
「ねえルド、どういうこと? ラムズを尊敬していたなんて聞いていないけど」
あ、ルドもわたしが女だなんて聞いていなかったんだった。
「え、キリル?!」
「そうよ。男装してたの。騙しててごめんね」
目でそこは突っ込むなと言い聞かせて、話を先に持っていく
(男装の暴露にしては軽すぎることは分かってる。でも今はルドの話の方が大事でしょ)。
「ねえルド、その喋り方変じゃない? 少なくともわたしにはそんな喋り方してなかったでしょう」
「んー、俺はずっとこうっすよ!」
「ええ? まさか、そんなわけないわ。それにラムズに憧れてたなんて……」
「キリルさん忘れちゃったんすか? 俺はずっとこの話し方ですし、ラムズ船長のことも憧れてるって話したことあるっすよ!」
ルドは少し腰をかがめると、わたしの目をじっと見つめた。
吸い込まれるような黒い眼。黒────。黒っていうとさっきのブラックオパールが綺麗だったわね────。
「そうね、そう喋ってたわ。それに、すごく尊敬してるって言ってたわね」
わたしったら何を言ってたんだろう。ルドはずっとこんな調子で、ラムズのことを話していたじゃない。それはもう、耳にたこができるくらい!
「そうっすよ! それにしても、この船長室すごいっすね。入ってもいいっすか?」
ルドはラムズの返事を待つ前に、部屋へ足を踏み入れた。と同時に、カチャリと嫌な音がした。
「誰がいいっつった?」
彼の見た目は、やっぱり"王子様"だ。冷えた笑いと隈を無くせたら、英雄もどきの素敵な王子に見える。髭はないし、顔自体も整っているしね。それに細身の身体、清潔感のある見た目は全然海賊らしくない。
髪が赤くないから、ラムズはルテミスじゃない。ただの人間かな? でもなんとなくそうは見えないのよね。かといって他に思いつく使族もいないんだけど。あまり知られていない使族とか?
(そうそう、使族は神様が創った存在よ。人間も使族の内の一つ。神様は全部で七人いるけど、わたしの使族は水の神ポシーファルだけで創られたの。他にも使族はたくさんいるわよ。クラーケンとかエルフとかね)
もし人間だとしても、こんなに若いのにルテミスを率いるなんて、よっぽどの統率力があるってことよね
(若いって言ってもわたしと同じかちょっと上くらいよ)。
 
「ジウ、今船はどこに向かっているんだ?」
ラムズは階段の上で、ふと思いついたように言った。舵輪を握るジウが返事をする。
「船長がトルティガーって言ったから、そっちに向かってるけど」
「そうか」
……ううん。彼に統率力があるとは思えない。
むしろ、自分の興味があること以外には手を出さないっていう感じ。興味があることは宝石なんだし、そこは海賊の船長らしいと言えばそうなんだけど。
ラムズは階段を降りてわたしの前に立った。右手で勢いよく船長室の扉を開ける。
「ようこそ俺の船長室へ」
わたしは息を飲んだ。ラムズを見る。ラムズは小首を傾げ、にこりと笑った。それはもう……これ以上ない幸せっていう感じで。
わたしは目をこすって、もう一度部屋の中を見た。間違いない。間違い、ない。これは夢じゃない。
──部屋には、宝石しか、なかった。
わたしは意を決して、部屋の中へ踏み込んだ。
ダイヤモンド、オパール、サファイア、エメラルド、ルビー、トパーズ、ガーネット────。数え上げたら切りがない。見たことのない宝石もある。
部屋には小さな窓があるだけで、太陽の光がさんさんと降り注いでいるって感じはない。むしろ薄暗いくらいだ。
でも、変に明るい。宝石が自分の持つ煌めきを最大限に放っているのだ。キラキラするー、なんてもんじゃない。宝石が互いに反射し合っていて、なんだか光に攻撃されている気がする。
目が痛くはならないの!?
……ラムズは既に、愛おしそうに自分の宝石を眺めていた
(ラムズの宝石狂い具合、まだ知りたい? 分かった分かった。じゃあ一応説明しておくわね。
まずは宝石のついたネックレスにブレスレット、指輪に金塊、ティアラ、髪飾り、イヤリング。
天井にはダイヤモンドのシャンデリアが飾ってあるし、壁にかかった黒い布には、夜空の星をなぞるようにピアスが並んでいる。棚という棚には宝石が敷き詰められ、一部の床は数十種類にも渡る赤い宝石に覆われている。赤い絨毯だと思っていたのは宝石だったのよ!
それ以外にも、宝石がついているものならばなんでもあった。
水晶のグラス、金細工の肘掛け椅子、七色のオパールで作った花瓶。机にはブラックオパールが埋め込まれている。その机に乗っているのは、ホワイトとブラックのダイヤでできたチェスの駒…………。
──こんなところでいい? もう十分でしょ?)。
ラムズ・シャークは頭がおかしい!
断言できるわ。こんなにも宝石に執着心があるなんて異常よ。気持ち悪いって言っても罰は当たらないはず!
「全部集めたんだ。全部俺のだ」
ハァ、そうですか。わたしはこんなたくさんの宝石、さすがにいらないわ。
本当に、目が痛くなる! この部屋で寝ているんだろうけど、わたしならチカチカして寝れやしないわ。もう一度言うけど、異常ね。
今まで見てきたお宝が好きな海賊──ううん、もっと宝石やらお金やらに執着のある貴族の中にも、ここまでの男はいないと思う。
「よかった……じゃない」
これでも、精一杯の笑顔を見せたと思う。「羨ましいわ!」って感じの笑顔をね。……たぶん失敗したけど。
でもラムズは、そんなわたしの努力はどうでもよかったみたい。いつの間にか、金色の肘掛け椅子に座って机の上のチェスで遊んでいる。わたしはその机の向かいで、ラムズが一体何を言い出すのかと考えた
(長い睫毛が下を向き、口を噤んでチェスを並べる彼の姿は、不覚にも綺麗だと思っちゃった)。
「えっと、なんで呼んだの?」
「ああ、そうだった。この部屋に来ると、俺は仕事を全部忘れるんだよな」
この部屋じゃ、仕事なんてろくにできないでしょうね。宝石の煌めきで、頭がおかしくなっちゃいそうだもの。
ラムズは何やら魔法をかけた。たぶん自分にだと思う。
彼は左目につけていた眼帯を取る。目までかかっている少し長めの前髪が、さらりと揺れる。二つの青い眼が、今まで宝石を見ていた目つきと同じように、優しく輝いた気がした。
「服、脱いでくれ」
ラムズは、あくまで普通に言った。今言ったことは、何も不思議なことではなく、わたしが「分かったわ」って一つ返事ですむことだというくらい、ごく、普通に。
「どうして?」
わたしも、普通に返した。
「お腹が空いたんだ」「そうなの?」って、そんな会話をする感じで。
「どうしてって、メアリの体が見たいからに決まってんだろ」
ラムズ・シャークは、平気でここまでの発言ができる男だったのね。しかもこんな昼間から。
「ごめんなさい。わたしはこの船に娼婦として来たわけじゃないわ。ただの船員として来たのよ。どうしてわたしが」
「そんなん分かってる」
ラムズは机に乗った。机の上でしゃがんで、わたしに手を伸ばした。目と鼻の先に、ラムズの顔がある。
なんていうか、この笑み、すごくまずい気がする。
「だから脱がないって言ってるでしょ」
「勘違いしてねえか?」
ラムズは身を乗り出すと、わたしの腕を掴んだ。
絶対絶命。
後ろにドアがある。このままラムズを後ろへ押し倒して、ドアに突進して……。そうしたらきっと間に合う。
「俺はこれが見たいだけだ────」
ガタンと大きな音がして、急に部屋が明るくなった
(宝石のキラキラじゃなくて、健康的な明るさの方)。
「せんちょ……。なにしてんの?」
ジウにしては相当低い声だったと思う
(操舵手のジウは、いつもは可愛らしい声を出している。男にしては高くて、まぁ子供っぽい声ってことよ。あんな可愛いヤツにやられそうになったなんて、わたしもカトラスの腕が落ちたかな)。
ジウの隣には、一人の男が立っている。逆光で顔がよく見えない。
とにかく、助かった。本当に助かった。
ラムズが何をするつもりだったのかは分からないけど、とにかくよかったわ。人がいる前で脱がすわけないわよね。それにわたしがここで服を脱いだら……。
あ、もしかして、そういうこと?
「ジウ、ノックくらいしろ。俺はこれからお楽しみだったんだ」
「船長、女に興味なんてあったっけ?」
「そんなのねえよ。なんの用だ」
ラムズは机から飛び降りると、入口で立ったままのジウの方へ、つかつかと歩いていった。どうやら、許可がない限り部屋の中へ入るのは禁止されているらしい。
ジウは隣に立っている男をぽんぽんと叩いた。
「こいつ、船長に会いたかったんだってさ」
ラムズは怪訝そうな顔をして、男の顔を覗き込んだ。男は目を輝かせて、ラムズに言った。
「俺、ラムズ・シャーク船長に憧れてたんっす! この船で働けて光栄っす! これからよろしくお願いします!」
「へえ、どうも。頑張って」
ラムズはやっぱり気怠そうに言った。
あの男はルド・アネルだわ。声を聞いて分かった。オパール号にいたとき世話になってた男。
気も合うしこの船にいてくれてよかった……じゃなくて、どういうこと? ここにいるのはさっきオパール号に戻り損ねたからだとして、その喋り方は一体どうしたの?
それにラムズを尊敬? むしろわたしが波でこのガーネット号に悪戯をしたとき、喜んでいたじゃない。
わたしは三人の方へ行くと、前に立っていたラムズを押しやった。
「ねえルド、どういうこと? ラムズを尊敬していたなんて聞いていないけど」
あ、ルドもわたしが女だなんて聞いていなかったんだった。
「え、キリル?!」
「そうよ。男装してたの。騙しててごめんね」
目でそこは突っ込むなと言い聞かせて、話を先に持っていく
(男装の暴露にしては軽すぎることは分かってる。でも今はルドの話の方が大事でしょ)。
「ねえルド、その喋り方変じゃない? 少なくともわたしにはそんな喋り方してなかったでしょう」
「んー、俺はずっとこうっすよ!」
「ええ? まさか、そんなわけないわ。それにラムズに憧れてたなんて……」
「キリルさん忘れちゃったんすか? 俺はずっとこの話し方ですし、ラムズ船長のことも憧れてるって話したことあるっすよ!」
ルドは少し腰をかがめると、わたしの目をじっと見つめた。
吸い込まれるような黒い眼。黒────。黒っていうとさっきのブラックオパールが綺麗だったわね────。
「そうね、そう喋ってたわ。それに、すごく尊敬してるって言ってたわね」
わたしったら何を言ってたんだろう。ルドはずっとこんな調子で、ラムズのことを話していたじゃない。それはもう、耳にたこができるくらい!
「そうっすよ! それにしても、この船長室すごいっすね。入ってもいいっすか?」
ルドはラムズの返事を待つ前に、部屋へ足を踏み入れた。と同時に、カチャリと嫌な音がした。
「誰がいいっつった?」
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