夜蝶々
終夜
全員が顔を見合わせた。その日の授業はどの5人の頭にも入ってこなかった。
「……何で?」
「……さぁ?」
「ちゃんと埋めましたよね?」
「はい、たしかにうめました」
「……」
全員が黙ってしまう。
「…も、もしかして失敗した?」
「いや、それはないかと…」
「では、もともと呪いが存在しないという方向は…?」
「そう、なのか…?」
「い、いや、わかんないけど」
「でもソレしか…」
「ヤマト君?…どうしたの?」
「……」
「ヤマト?」
「あ、あのな?い、一個、聞いてくれないか?特にシィ」
「は、はい……?」
「たぶん、あの呪いは成功してるんだ。でもな?たぶん呪いは……」
「ヤマト君!」
「スミレ、いいから」
スミレがとめるのも聞かずに、ヤマトは次を続けた。
「呪いは……俺にかかった……と、思うんだ」
「「「は?」」」
「昨晩のことだよ」
そういってヤマトは話し始めた。
「昨晩のことだ。俺はスミレと、ちょっと興味本位で鴻の山に上ろうとしたんだよ。いやさ、掘り返すつもりとかはなかったんだ。ただ見たかった。だから二人であの木の根本にいったんだよ。そしたらな?人がいてさ。掘り返してたんだよ。あの箱を。思わず頭に血が上った俺は、そいつと取っ組み合いになったんだ。夜だったから誰かはわからなかった。んで、負けたんだよ。取っ組み合い。スミレは陰に隠れててくれたらしいから助かったんだけど、俺はさ、そいつに髪の毛を抜かれたんだ。それから山からけり落とされてさ、あの山、土が軟らかいからそんなに大きな怪我はなかったけど、その後、スミレが動けないまま見たのは、とはいっても暗いから音とか影で見てたんだけど、見たのは、髪の毛の交換だって」
「いいいい、いや、まってよ!?もしそれが本当だとしても、ヤマトが死ぬとは限らないじゃん!」
「そうだぞ!まだ決まったわけじゃねぇ」
「そ、それに、それなら今から髪の毛をとってくれば!」
「そ、そうだよ!」
「無理だ」
「「「・・・え?」」」
「朝からずっと、背中が痛くてさ。背中をさっきの休み時間、スミレに見てもらった。肩甲骨の辺りが真っ青になってるってよ。まったく笑えるよな。人を呪わば穴二つなんていうけど、それがこうなるなんてな。まぁ、みんなの穴を全部俺に来るっていうならいい気がするけどさ」
「い、いや、でも髪の毛を!」
「無理だって言ってんだろ!分かれよ!箱が掘りだされっちまったんだよ!」
「なっ…!!!」
その言葉に全員が固まった。
「今日の朝調べにいったんだよ!そりゃあそうだろ!自分の命かかってんだから!でも、髪の毛どころか箱ごともってかれたんだよ!もはやなにもできねぇんだよ!」
ヤマトはそう叫んで、教室を飛び出した。
「ヤマト君!」
と、スミレが手を伸ばしたが、その手は空をつかんでいた。
「はぁ、はぁ」
一気に屋上まで駆け上がり、ヤマトは疲れたように寝転んだ。
「…やっぱりここだよね」
その言葉とともに屋上に入ってきたのはシィだった。
「ほかに行く場所がないものでね。」
「あ~ら?スミレさんの下っていうのもあるんじゃないの?」
「ない。そんなんで迷惑はかけたくない」
「さっすが。…ね、隣いい?」
「どうぞ?」
「小学校の頃から、屋上が好きだったよね。ヤマト」
「はっ。幼馴染は何でも知ってるよ的な?」
「あははは。そんな感じ?」
「怖いわ~。ストーカー?」
「否定はしない」
「いやしろよ!!!」
「私もスミレさんと同じでヤマトが好きだった。だから視線でストーカーをしてたんだよ」
「うそだろ?」
「いや?本当。私はこんな性格だから、告白って苦手だった。だから、スミレさんとの関係を知ったとき、ちょっと悲しかった」
「……」
「あぁ、私も告白すればよかったな~って。そしたら悲しい気持ちにもならなかったのになぁって。この前ね?スミレさんとヤマトの話をして、二人とも想っていたって、ヤマトが好きだったって知ったんだ。それで勝負をしようって話になったんだよ」
「……」
「だから、告白すればよかったって今おもうんだ」
「……たたず」
「ん?」
「後悔先に立たず。やらずの後悔よりやって後悔するべきって言葉」
「あ、あぁ、あはは」
「止まりの一歩と動きの一歩」
「……なにそれ?」
「人間でも何でも、慣性の法則があるから止まっていた直後は動きにくい。しかし、動いてる一歩は気にせず出せる。気持ちは動けば簡単だけどソレまでが大変っていうことだ」
「へぇ……」
「まぁ、俺が作ったんだけどさ」
「なんだそれ」
そういってシィは笑った。
「じゃぁ……今告白したら?」
「あん?」
「今ヤマトに告白したら、どうなる?」
「さぁ?」
「あいまいな返事だね……」
「ま、したところで今日までなんだから関係ないけどな」
「そ、そんなこと言わないで。ヤマト、言わないで」
「……」
「大丈夫。大丈夫……」
そんな風に言うシィの目からは涙がこぼれた。すると、不意に下のほうからアキトの声が聞こえた。
「ヤマト!見つけたぞ!箱だ!犯人も見つけた!」
「……何で?」
「……さぁ?」
「ちゃんと埋めましたよね?」
「はい、たしかにうめました」
「……」
全員が黙ってしまう。
「…も、もしかして失敗した?」
「いや、それはないかと…」
「では、もともと呪いが存在しないという方向は…?」
「そう、なのか…?」
「い、いや、わかんないけど」
「でもソレしか…」
「ヤマト君?…どうしたの?」
「……」
「ヤマト?」
「あ、あのな?い、一個、聞いてくれないか?特にシィ」
「は、はい……?」
「たぶん、あの呪いは成功してるんだ。でもな?たぶん呪いは……」
「ヤマト君!」
「スミレ、いいから」
スミレがとめるのも聞かずに、ヤマトは次を続けた。
「呪いは……俺にかかった……と、思うんだ」
「「「は?」」」
「昨晩のことだよ」
そういってヤマトは話し始めた。
「昨晩のことだ。俺はスミレと、ちょっと興味本位で鴻の山に上ろうとしたんだよ。いやさ、掘り返すつもりとかはなかったんだ。ただ見たかった。だから二人であの木の根本にいったんだよ。そしたらな?人がいてさ。掘り返してたんだよ。あの箱を。思わず頭に血が上った俺は、そいつと取っ組み合いになったんだ。夜だったから誰かはわからなかった。んで、負けたんだよ。取っ組み合い。スミレは陰に隠れててくれたらしいから助かったんだけど、俺はさ、そいつに髪の毛を抜かれたんだ。それから山からけり落とされてさ、あの山、土が軟らかいからそんなに大きな怪我はなかったけど、その後、スミレが動けないまま見たのは、とはいっても暗いから音とか影で見てたんだけど、見たのは、髪の毛の交換だって」
「いいいい、いや、まってよ!?もしそれが本当だとしても、ヤマトが死ぬとは限らないじゃん!」
「そうだぞ!まだ決まったわけじゃねぇ」
「そ、それに、それなら今から髪の毛をとってくれば!」
「そ、そうだよ!」
「無理だ」
「「「・・・え?」」」
「朝からずっと、背中が痛くてさ。背中をさっきの休み時間、スミレに見てもらった。肩甲骨の辺りが真っ青になってるってよ。まったく笑えるよな。人を呪わば穴二つなんていうけど、それがこうなるなんてな。まぁ、みんなの穴を全部俺に来るっていうならいい気がするけどさ」
「い、いや、でも髪の毛を!」
「無理だって言ってんだろ!分かれよ!箱が掘りだされっちまったんだよ!」
「なっ…!!!」
その言葉に全員が固まった。
「今日の朝調べにいったんだよ!そりゃあそうだろ!自分の命かかってんだから!でも、髪の毛どころか箱ごともってかれたんだよ!もはやなにもできねぇんだよ!」
ヤマトはそう叫んで、教室を飛び出した。
「ヤマト君!」
と、スミレが手を伸ばしたが、その手は空をつかんでいた。
「はぁ、はぁ」
一気に屋上まで駆け上がり、ヤマトは疲れたように寝転んだ。
「…やっぱりここだよね」
その言葉とともに屋上に入ってきたのはシィだった。
「ほかに行く場所がないものでね。」
「あ~ら?スミレさんの下っていうのもあるんじゃないの?」
「ない。そんなんで迷惑はかけたくない」
「さっすが。…ね、隣いい?」
「どうぞ?」
「小学校の頃から、屋上が好きだったよね。ヤマト」
「はっ。幼馴染は何でも知ってるよ的な?」
「あははは。そんな感じ?」
「怖いわ~。ストーカー?」
「否定はしない」
「いやしろよ!!!」
「私もスミレさんと同じでヤマトが好きだった。だから視線でストーカーをしてたんだよ」
「うそだろ?」
「いや?本当。私はこんな性格だから、告白って苦手だった。だから、スミレさんとの関係を知ったとき、ちょっと悲しかった」
「……」
「あぁ、私も告白すればよかったな~って。そしたら悲しい気持ちにもならなかったのになぁって。この前ね?スミレさんとヤマトの話をして、二人とも想っていたって、ヤマトが好きだったって知ったんだ。それで勝負をしようって話になったんだよ」
「……」
「だから、告白すればよかったって今おもうんだ」
「……たたず」
「ん?」
「後悔先に立たず。やらずの後悔よりやって後悔するべきって言葉」
「あ、あぁ、あはは」
「止まりの一歩と動きの一歩」
「……なにそれ?」
「人間でも何でも、慣性の法則があるから止まっていた直後は動きにくい。しかし、動いてる一歩は気にせず出せる。気持ちは動けば簡単だけどソレまでが大変っていうことだ」
「へぇ……」
「まぁ、俺が作ったんだけどさ」
「なんだそれ」
そういってシィは笑った。
「じゃぁ……今告白したら?」
「あん?」
「今ヤマトに告白したら、どうなる?」
「さぁ?」
「あいまいな返事だね……」
「ま、したところで今日までなんだから関係ないけどな」
「そ、そんなこと言わないで。ヤマト、言わないで」
「……」
「大丈夫。大丈夫……」
そんな風に言うシィの目からは涙がこぼれた。すると、不意に下のほうからアキトの声が聞こえた。
「ヤマト!見つけたぞ!箱だ!犯人も見つけた!」
「ホラー」の人気作品
書籍化作品
-
-
440
-
-
63
-
-
15254
-
-
157
-
-
147
-
-
26950
-
-
2
-
-
22803
-
-
1512
コメント