天空の妖界
雪女とパートナー
負けを認めるといいながら、文車妖妃は手元のウインドゥを操作し始める。
「ひとつ、あなたの質問に答えますと、貴方の意見は却下ということです」
うそ臭い笑顔のままこちらに向くと、
「聞きたいことがあるなら、その力で問いただしてくださいな」
そういってウインドゥを軽く押した。すると、俺たちの前にウインドゥが現れた。
『強制バトルを申し込まれました』
その下には小さく残り時間が書かれている。つまりそういうことだ。
「成る程な。雪撫の質問に答えるってわけじゃないのか」
「えぇ、私はひとつ質問に答えるといっただけ。そして、その不安そうな二人の顔も私にはすでに予測できているわ」
逃げ場はないようだ。どの道何をしても意味がないので、すぐに承認のボタンを押す。光に包まれると、また見覚えのある白い部屋に案内された。
『それでは、一分以内に準備してください』
「真君、ごめん。本当に今回自信ないや」
固まった顔をして言う雪撫に、俺は何もいえなかった。
『それでは100ポイントをかけたバトルスタート」
全ポイントでない場合、ポイントの数が出てくる。今回は一番最低ラインの100ポイントらしい。
「雪撫さんのために、今回は雪山のステージにしておいたわ。さぁ、あなたの質問の回答がほしいならかかってきなさい」
余裕の笑みを浮かべながら、文車妖妃は私たちの前に立った。
「……まず確認。本当にすべて教えてくれるんだよね?」
雪撫が聞くと、文車妖妃はおおげさにため息をつく。
「信用がないのね? 大丈夫よ。私はうそをつかないから」
「どーだかね!」
その言葉と共に、雪撫は氷でできた拳銃のようなものを文車妖妃に発砲した。
「ぬるいわね」
ワイシャツのポケットから扇子を出すと拳銃に向けて、
「弾の軌道は変わり、私を逸れていった!」
鋭い口調で命令するかのように放たれた弾に言うと、なんと弾はそのとおりに軌道を変えて文車妖妃の背後へと消えていったのだ。
「成る程、こういうことか……」
正直話を聞くまであまりイメージ出来なかったけど、今目の前で見てはっきりとイメージ出来た。
「分かったでしょ? だからごめん、自信ない」
言葉とは逆に、雪撫はやる気満々で文車妖妃を見ている。
「拳銃。当たれば殺傷能力があるから、ひとつも当たれない。いい選択だと思うわ」
「でも、これさえお見通しなんでしょ?」
「もちろんよ。すべてお見通し。だから、今あなたが一生懸命戦い方を考えてるこの状況がとても滑稽だわ。本当に凪君の秘密を聞きたいのかしら? それともあれは適当に言ったの?」
ギギッっと、低く鈍い音が成る程雪撫は歯軋りした。見たこともない雪撫の確かな怒りだった。
「あぁ、怒ってるの? 大丈夫かしら? そんなに怒ると凪君が戻ってきたとき驚いちゃうわよ?」
「それ以上喋らないで!」
怒りのままに何発も打つが、やはりすべてをかわされる。これは完全に相手のペースになっている。
「雪撫、落ち着いて!」
「うるさい!」
もはや私の声さえも雪撫には聞こえていない。困ったな……。
「許してね雪撫」
私はそう言って、無理矢理男に戻り、雪撫を自分の体から離れさせる。
「あらぁ? 今度はそっちが相手してくれるの? それともあきらめた?」
「まぁ、あきらめるつもりはないんだけどな。一応、雪撫のパートナーとして雪撫がピンチの時は頼ってばかりじゃなくて俺が何とかしないとな」
「出来るのかしら? コミュニケーションの事を調べたけど、直接触らなきゃ何も出来ないはずよね?」
流石にこちらが来るのを予想していただけに、色々調べているらしい。雪撫はというと、無理に交代させられたことに怒っている。
「それにこの足場。私たちの様に空を飛べるわけでもない人間が勝てるのかしら?」
「まぁ、確かに絶望的だな。正直まだ倒す手段さえ思いついてない。そんでもって能力もくそもない。まさに打つ手なしだよ」
彼女の言うとおり、ここは雪山だから足を雪に取られ、簡単に歩けない。本当に何も出来ないかもしれない。
「なら降参でもする? それともピンチになって千宮司さんの力でも借りる?」
「千宮司? 誰だそいつ?」
本当に聞いたことがない名前だった。
「君がトリプレットと初めてあった時に、魔力を貸してくれた人よ。能力は神通力。Sしかない幻の能力のひとつよ」
言われてあの映像を思い出した。確かにあの先輩の名前は知らなかった。
「なぁ、その千宮司先輩っていうのはまだ学校にいるのか? それとも卒業か? それとも妖界にいったのか?」
「卒業? この学校は卒業が妖界に行く事でしょう?」
「そう把握しているのか。なら千宮司先輩の情報のお礼としてこっちからも教えてやる。この学校は、妖界に行く事の他に記憶抹消を条件として卒業することもできるんだ。そしたらそいつは家に戻って他の能力がない人間たちのように生きることとなる」
「そうなのね。それは知らなかったわ。千宮司さんの情報のお礼というならさっきの質問も答えなきゃいけないのね。千宮司さんは学校に残っているわ。マスターレベルの彼女は、普段ずっと校舎の食堂にいるわ。誰にも反応しないし、晴子さんの取材も完全拒否。何がしたいのかみんなわからないし、その癖して強制バトルではいつも秒殺をしてしまう。そんな人よ」
本当に情報をすべて話してくれた。案外良い奴なのかもしれないと思ってしまった。
「色々情報ありがとうよ。だけど残念ながら千宮司先輩の力ってのは、やっぱり借りれないな」
これ以上貸しを作れないのもそうだが、まずお礼も出来ていないのに力を借りるわけにもいかない。
「ならどうするの? 雪撫さんの力を借りる? やめときなさい。また怒りだすのがオチだから」
いやな笑いを浮かべて文車妖妃は笑う。やっぱり悪いやつだった。
「いやぁ、人を怒らせるのが上手いから全くもってすごいと思う。だけどな、雪撫だってそんなに単純なやつじゃないぞ?」
「へぇ? 何、じゃあまた雪撫さんに交代?」
「いや、今回は俺がお前を倒してみよう」
「ひとつ、あなたの質問に答えますと、貴方の意見は却下ということです」
うそ臭い笑顔のままこちらに向くと、
「聞きたいことがあるなら、その力で問いただしてくださいな」
そういってウインドゥを軽く押した。すると、俺たちの前にウインドゥが現れた。
『強制バトルを申し込まれました』
その下には小さく残り時間が書かれている。つまりそういうことだ。
「成る程な。雪撫の質問に答えるってわけじゃないのか」
「えぇ、私はひとつ質問に答えるといっただけ。そして、その不安そうな二人の顔も私にはすでに予測できているわ」
逃げ場はないようだ。どの道何をしても意味がないので、すぐに承認のボタンを押す。光に包まれると、また見覚えのある白い部屋に案内された。
『それでは、一分以内に準備してください』
「真君、ごめん。本当に今回自信ないや」
固まった顔をして言う雪撫に、俺は何もいえなかった。
『それでは100ポイントをかけたバトルスタート」
全ポイントでない場合、ポイントの数が出てくる。今回は一番最低ラインの100ポイントらしい。
「雪撫さんのために、今回は雪山のステージにしておいたわ。さぁ、あなたの質問の回答がほしいならかかってきなさい」
余裕の笑みを浮かべながら、文車妖妃は私たちの前に立った。
「……まず確認。本当にすべて教えてくれるんだよね?」
雪撫が聞くと、文車妖妃はおおげさにため息をつく。
「信用がないのね? 大丈夫よ。私はうそをつかないから」
「どーだかね!」
その言葉と共に、雪撫は氷でできた拳銃のようなものを文車妖妃に発砲した。
「ぬるいわね」
ワイシャツのポケットから扇子を出すと拳銃に向けて、
「弾の軌道は変わり、私を逸れていった!」
鋭い口調で命令するかのように放たれた弾に言うと、なんと弾はそのとおりに軌道を変えて文車妖妃の背後へと消えていったのだ。
「成る程、こういうことか……」
正直話を聞くまであまりイメージ出来なかったけど、今目の前で見てはっきりとイメージ出来た。
「分かったでしょ? だからごめん、自信ない」
言葉とは逆に、雪撫はやる気満々で文車妖妃を見ている。
「拳銃。当たれば殺傷能力があるから、ひとつも当たれない。いい選択だと思うわ」
「でも、これさえお見通しなんでしょ?」
「もちろんよ。すべてお見通し。だから、今あなたが一生懸命戦い方を考えてるこの状況がとても滑稽だわ。本当に凪君の秘密を聞きたいのかしら? それともあれは適当に言ったの?」
ギギッっと、低く鈍い音が成る程雪撫は歯軋りした。見たこともない雪撫の確かな怒りだった。
「あぁ、怒ってるの? 大丈夫かしら? そんなに怒ると凪君が戻ってきたとき驚いちゃうわよ?」
「それ以上喋らないで!」
怒りのままに何発も打つが、やはりすべてをかわされる。これは完全に相手のペースになっている。
「雪撫、落ち着いて!」
「うるさい!」
もはや私の声さえも雪撫には聞こえていない。困ったな……。
「許してね雪撫」
私はそう言って、無理矢理男に戻り、雪撫を自分の体から離れさせる。
「あらぁ? 今度はそっちが相手してくれるの? それともあきらめた?」
「まぁ、あきらめるつもりはないんだけどな。一応、雪撫のパートナーとして雪撫がピンチの時は頼ってばかりじゃなくて俺が何とかしないとな」
「出来るのかしら? コミュニケーションの事を調べたけど、直接触らなきゃ何も出来ないはずよね?」
流石にこちらが来るのを予想していただけに、色々調べているらしい。雪撫はというと、無理に交代させられたことに怒っている。
「それにこの足場。私たちの様に空を飛べるわけでもない人間が勝てるのかしら?」
「まぁ、確かに絶望的だな。正直まだ倒す手段さえ思いついてない。そんでもって能力もくそもない。まさに打つ手なしだよ」
彼女の言うとおり、ここは雪山だから足を雪に取られ、簡単に歩けない。本当に何も出来ないかもしれない。
「なら降参でもする? それともピンチになって千宮司さんの力でも借りる?」
「千宮司? 誰だそいつ?」
本当に聞いたことがない名前だった。
「君がトリプレットと初めてあった時に、魔力を貸してくれた人よ。能力は神通力。Sしかない幻の能力のひとつよ」
言われてあの映像を思い出した。確かにあの先輩の名前は知らなかった。
「なぁ、その千宮司先輩っていうのはまだ学校にいるのか? それとも卒業か? それとも妖界にいったのか?」
「卒業? この学校は卒業が妖界に行く事でしょう?」
「そう把握しているのか。なら千宮司先輩の情報のお礼としてこっちからも教えてやる。この学校は、妖界に行く事の他に記憶抹消を条件として卒業することもできるんだ。そしたらそいつは家に戻って他の能力がない人間たちのように生きることとなる」
「そうなのね。それは知らなかったわ。千宮司さんの情報のお礼というならさっきの質問も答えなきゃいけないのね。千宮司さんは学校に残っているわ。マスターレベルの彼女は、普段ずっと校舎の食堂にいるわ。誰にも反応しないし、晴子さんの取材も完全拒否。何がしたいのかみんなわからないし、その癖して強制バトルではいつも秒殺をしてしまう。そんな人よ」
本当に情報をすべて話してくれた。案外良い奴なのかもしれないと思ってしまった。
「色々情報ありがとうよ。だけど残念ながら千宮司先輩の力ってのは、やっぱり借りれないな」
これ以上貸しを作れないのもそうだが、まずお礼も出来ていないのに力を借りるわけにもいかない。
「ならどうするの? 雪撫さんの力を借りる? やめときなさい。また怒りだすのがオチだから」
いやな笑いを浮かべて文車妖妃は笑う。やっぱり悪いやつだった。
「いやぁ、人を怒らせるのが上手いから全くもってすごいと思う。だけどな、雪撫だってそんなに単純なやつじゃないぞ?」
「へぇ? 何、じゃあまた雪撫さんに交代?」
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