天空の妖界

水乃谷 アゲハ

学校と雪女

「なぁ、昨日……と言うより今日か、今日凍らした海っていつ溶けるの?」
 あの後、俺らはとりあえず分離し(というか俺が男に戻ったら勝手に分離した)家に帰った。約一時間ほど眠り、今は登校中の電車の中。
「あ、もう妖力も与えてないし……うん、十分くらいで溶けるよ。それより真君、今喋ったらお店のときみたいになるんじゃないの?」
「あぁ、そうだね」
 言われたとおりそれから一度も俺たちは話さなかった。言い出した張本人である雪撫はかなりつまらなそうに俺の頭に冷気を当てている。つめてぇ……っていうか雪撫って飛べたのか。
 駅から約十分くらいでようやく学校に着いた。
「小さい……」
 着いてすぐ雪撫はそうつぶやいた。まぁ、確かに見た目は一般的な学校と変わらないだろう。しかし、これはあくまでも外面である。 
「あぁ、外から見ればな」
 と、真実を伝える。それを聞いて雪撫は申し訳なさそうな顔をした。
「あ、ご、ごめん。喋っちゃった」
「あぁ、もういいよ」
「い、いいの?」
 そんな心配そうな言葉とは逆に顔はとても嬉しそうだった。喋りたかったんだろうなぁ、だって駅からここまでずっと俺の背中に『暇』って書き続けてたもんなぁ。くすぐったかった……。
「いいよ。理由はまぁ、入れば分かる」
 そう言って足を踏み入れると、雪撫は驚いたように周りを見回した。まぁ正しい反応だ。
「見てみな。あっちこっちに一人で喋ってる奴いるだろ」
「本当だ! ……変」
「…………」
 あぁ、店で俺もそう思われていたんだろうな。……まぁいいか。
 と、とりあえず学校の話をしてあげる。
「俺の学校はさ、まぁ妖怪退治専門学校ってところでもうおかしいんだけど、うちの学校には魔法……だな。魔法がかけられててさ、空間魔法と大きさを変える魔法を使って面積を広げてるんだよ」
「魔法って何でもありなの?」
「いやいや、妖力もな。他にもこの学校はポイント制って所も変わっててさ、この学校って入学当時に新入生は百ポイントもらえるんだよ。それで授業を受けるたびに10ポイントずつ増えていって五百ポイントになると自由になって授業を受けなくてよくなる」
「ふむふむ」
 雪撫はちゃんと相槌を打ってくれるので、とても話しやすい。
「まぁ、休まずに授業を受けてれば夏には自由になれるから。といっても油断は禁物でね、そのポイントが0になると停学、五回だったかな?確か五回になると退学になるんだ」
「た、退学?」
「学校辞めろってやつ。ちなみに百ポイント手に入れた時点で『見習い』って役職がもらえて、その肩書きをもらったら色々な人から勝負を挑まれるようになるんだよ」
「ふ~ん。……でもさ、真君の説明じゃみんなの喋ってる理由にはならないんじゃないの?」
「あぁ、この話には続きがあってさ、まぁ勝負をするって言うのはポイントをかけてやるんだよ。もちろん断る事もできるんだけど、強制バトルで申し込まれたり勝負をうけてポイントが全部なくなったら停学じゃん?そのために作られたのがユニオンって制度」
「ユ、ユニオン?」
「いわゆるチームだよ。ユニオン組むといろんないいことがあるんだ。まずポイントを共有できるからポイントがいっぱい増えるし、どこでもしゃべれるようになる。まぁ、みんなが喋ってる理由はこれね。ちなみに組むときは100ポイント必要」
「ふ~ん。ところで、能力の恵まれた真君は何ポイント??」
 かなり意地悪そうな顔で笑っている。……ごめん雪撫。
「……千二百」
「……え?」
「千二百ポイント」
「……え?」
「もう一回聞くなよ。いや、あのな? どれだけ能力を持っている人がいるかは知らないけどさ、いろんな能力があるって事はそこには絶対戦うの苦手な奴っているわけじゃん」
「……真君とか?」
「あぁ、俺もそう。だからそういう人用に他にもギャンブル、レース、歌勝負、射的とかいろんなものがあるんだよ」
「あぁ、だからかぁ」
 そんな話をしていると、
「おいおいおいおい~嘘はダメだぜ真君」
 そんな言葉を後ろからかけられた。

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