花に願いを

水乃谷 アゲハ

お前はコロノというのか

 宇宙にあるとある星『アルカリア』、その星でしか咲かない魔力を帯びた花がある。
 名前を未来花みらいかという。
 未来花は、その帯びた魔力で人の願いを叶えると言われている。

 その花を手に入れようと、様々な星の生き物がこの星を幾度となく襲った。
 しかし、アルカリアは一度として敗北したことはなかった。
 やがて、アルカリア以外生物は、未来花を伝説として切り捨てた。
 アルカリアでは、今でも未来花を手に入れるべく数々の冒険者が挑戦を試みた。
 しかし、一度としてその花を見たものはいないという。

 アルカリアには様々な生物がいる。人間もいれば、ゼリーのような見た目の生き物もいる。また、アルカリアでの生活もバラバラだが、その多くはアルカリアにある冒険者ギルドにはいり、未来花を手に入れようとする。


 そしてまた、一人の少年が冒険者ギルドの扉を叩いた。


 「よく来た。変わった格好じゃねーか。上はだらんとしているのに、下は動きやすい様に縛っているのか。見たことねぇ格好だな。お前もまた、あの花を手に入れようとここに来たんだな?」
 少年は小さく頷いた。
 「だろうな。自慢じゃないが俺は今までここに来たやつの顔を覚えているんだ。ってことはここに来たのは初めてだな。ならまずここに登録とこの書類に目を通し同意するんだ」
 そう言って、男は筋肉の膨れ上がった腕を前に出す。その手には二枚の紙がある。
 少年がその紙に目を移すと、一枚目の紙には名前と使用武器、戦い方を書く紙。二枚目には小さな字で沢山の事が書いてある。その中でも少年の目を引いたものは、赤い字で『命と家を捨てる覚悟を持っているか』という言葉だ。
 少年は迷わず同意し、そして自分の名前を書く紙に取りかかる。その頭を見下ろしながら、先程の男は感心したように頷いた。
 「迷いは無いようだな。最近のやつらは覚悟がないくせして好奇心だけで来るから使えやしない。その点お前ならもしかしたら可能性があるな」
 顔の左目についた痛々しい巨大な傷を撫でながら呟いた。爪かなにかの跡にみえる。
 少年は顔を上げ、男に紙を渡した。
 「お前はコロノというのか。俺はバンタタ。昔は冒険者をしていたが、見ての通り目をやられてな。それから引退して今は新人の案内人さ。使用武器はなしか。珍しいな。戦い方はやはり一人で攻撃重視か。いいだろう。コロノ=マクフェイル、お前をこのギルドの一員に認めてやる」
 少年は静かに頷いた。
 「緊張しているのか? さっきから喋らないが」
 少年は大きく頷いた。その反応にバンタタは声をあげて笑う。
 「そうだろうな。何たって初めて来たんだからな。まぁ、地道に慣れていったらいいさ。おっと、それじゃあまずは最初試練から始めるぞ。ギルド長に会って、この紙にサインをもらってこい」
 バンタタはコロノが先程書いた同意書の紙を渡す。
 「い、行ってくる……」
 コロノはそう言って受け付けに背を向けて走り出した。一方バンタタはコロノの声を聴いて唖然としている。
 「あ、あいつ女だったのか?」
 バンタタの手元から紙が落ちる。確かにコロノは長い髪と高めの声だが、正真正銘の男だ。その証拠に、バンタタの落した紙、そこにはコロノ(男)とかかれていた。

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