異世界召喚の予定が転生になりました…?

如月

プロローグ1

 「よくぞ呼び掛けに答えてくださった!勇者たちよ!」
 目前に広がる大きな柱を背に、いかにも地位の高そうな王冠を着け、真っ赤なマントを羽織っているおっさんにそう言われた。

理解が追い付かず戸惑っているクラスメイトを気にせず話を続ける地位の高そうな人。

 「ようこそおいでくださいました。貴殿方は我々人族には希望の光となる勇者として此処に召喚されました。」

 一呼吸おいて、隣で静かに佇んでいた地位の高そうな人の娘と思われる人が口を開く
「貴殿方には唐突にこの世界に呼び出してしまって申し訳なく思います。ですが今私達の世界が魔物たちによって人間の生活を狂わされているのです。
実に勝手なお願いであることは重々理解はしていますが、話を聞いていただけると幸いです。」
と、優雅に一礼する。
「始めにこの世界の説明なのですが…」と説明をしていった。








 俺は静寝 奏輝しずね かなてる。特に目的もなく家から近い高校へ合格し、昼夜問わずのんびり遊び、周りから怒られない程度に勉強し、うまい具合に自由に生活してる高校生。

 「春のこの時期、窓際の席での睡魔出現率の高さは高校になっても変わらん物だな…」

そんな誰も聞こえないような声量で一言呟いて、いつものように安眠体勢に入る。

いざ寝ようとしたときに後ろから少し不機嫌そうな声が飛んでくる。
「その席良いよな。俺の席なんててると同じ列なのに建物の都合上で隣柱なんだぜ…この季節だとまだ少し寒いわ。」

 声をかけてきたのは友人の嶋村 郷夜しまむら きょうや。あまり人と絡まない奏輝に対して自発的に関わりを持ち仲良くなった奴だ。

「恨むなら自分の名字恨んどけ…出席番号的に俺が前になって柱に太陽遮られてるんだから。」

「なら名字交換しようぜ!」

「アホか…」

いつも通り生産性の無い会話が繰り広げられていた。

「おはよう」と唐突に教室の入り口からの挨拶

皆に愛想を振り撒きながら教室に入ってくる女子が一人。

彼女は三村 祥狐みむら しょうこ
顔立ちが良く、性格も良いため男女問わす人気の存在である。

「ああやって囲まれるのって鬱陶しそうだよな…」
「輝は本当極端だよな…自ら人とは関わらないのに、仲良くなった奴には凄い面倒見良かったり…」
「冷静な分析どうも。けど普通だと思うぞ?仲良くなった奴と好んで喧嘩したがる奴も居ないだろうし、仲良くしてる奴が悩んでるのに放置するやつの方が珍しいと思うぞ…」
「その性格で自発的に関わりに行けば人気者に慣れるのに」
「その案は無しだな。」と、会話を終わらせ再び眠りにつく。

「おはよう。」三村が近くを通って郷夜に挨拶してるらしい
「おはー!こいつは数秒前に寝たわ」
「いつも仲良いね。」
「無愛想に見えて面白いやつなんだけど…基本的に寝てるからなぁコイツ…」
「静寝君と会話した記憶あるの始業式だけだよ。」

数秒で寝れる訳ねぇじゃん…つか良く半月前の事覚えてたな…

 「おはよー!私なんかソイツと話した記憶すらないわ」と、唐突に会話に参加してくる女子が一人

 彼女は神崎 優かんざき ゆうと言い、三村の親友らしく、顔立ちも運動神経も良くクラスの女子の中心人物のような立ち位置にいる奴である。

「でもコイツ凄いのが、購買とか人多いところとかに行くとするするーっと人避けてパン買ってきてくれるんだぜ。お陰で金渡して毎日任せてるほどに」
「それパシリって言わないの?」
「適材適所ってやつ!人聞きの悪いこと言うな!コイツから請け負ってくれてるからパシリじゃない」
「私も頼もうかしら…」
「私はお弁当だから…購買ってそんなに人多いんだね…」
「もうあれは戦争よ戦争。上級生とか関係なく買えたもの勝ちだしね…」

そんな話を聴きながら寝ようとしていると他の場所から

「おい!静寝!三村さんと神崎さんが挨拶したんだったら返事しろよ!」「そうよ!あまりにも失礼よ!」「そうよ!嶋村もそんな返事もしないやつ置いときなよ!」と三人から絡まれる。

絡んできたのは
井沢 正信いざわ ただのぶ木村 姫星きむら ひめぼし六条 局音ろくじょう つぼね
の三人で、いつも何かと絡んでくる奴らだった。

 井沢は顔が良く、正義感も強いのでとても女子から人気のある奴だ。
横の二人は幼馴染みらしく、いつも井沢の横にいる所を見ている。

井沢は普段から寝ている俺が気に食わないらしく、よく絡んでくるのだが、なまじ人気があるせいでとても影響力が大きく俺の回りに人が来ない理由の一端を彼が担っている。

横の女子二人もクラスではコミュニケーション能力が高く女子の間では影響を多大に及ぼす存在となっている。

そんな毎度絡んでくる声を聞き流していると…

「ホームルーム始めるよー!と言っても報告することは何もないから出席だけとるねー!」と担任の加藤 御猫かとう みねこ先生が教室に入ってきた。
御猫先生は小柄で150無いくらいの身長なので、生徒からも受けが良く人気の先生である。

先生が来たことにより、三村は右斜め前へ、神崎はその三村の席の前へと座る。

「出席とるよー!寝てる静寝は起きなさーい!」

もう半月も担任をしていると俺が寝ている事にも慣れたようで、いつものようにピンポイントで注意された

眠いのに…返事してからまた寝よう

そう心に決めていざ顔を上げると………


「うわっ!なにこれ!」と御猫先生の悲鳴が響く。
他の生徒も
「床が光ってる!?」「眩しい!」「知らない字が浮かんでるぞ!」「地面揺れてきた…きゃああぁぁ!」
と、かなり叫んでいる。

そんな中奏輝は…
魔方陣?ゲームでありそうなやつだな…
と、かなり落ち着いていた。




 光が溢れて目を開けるとクラスメイトと共に白い空間へと飛ばされていた。

《皆さん…聞こえますか…》

「誰だ!」と、井沢は警戒心を周囲へ振り撒き声の聞こえた見えない【何か】を威嚇する。

《私はリーフィル。今からあなた方が向かわれる世界の秩序と調和を司る者です。そちらの世界で言う神に値する者と認識して頂いて構いません。》

神様とか自称してる人が現れた。
あーはいはいラノベ展開か何かね…頑張れ勇者井沢

そう投げた考えをしながら自称神様の目を見てみると、全てを視られたような嫌悪感を抱いたため静かに目を閉じた

自称している神は本物かもしれない…と少し警戒する
警戒したとして本物の神だった場合無意味かもしれないが…

《あなた方はあなた方のとは別の世界に召喚されようとしています。調和による私の力及ばず外部の神に力をお借りする形になってしまいました。》

自称神様はポンコツアピールをしている…
アピールと言うか本物のポンコツなのか…?

《若干名、神と知った上で失礼なことを考えている物も居るようですが、目を瞑って本題に入るとしましょう。》

完全にバレてる…!
てか、これから力を借りる相手に物扱いとは…流石神だな…

《…》

《これからあなた方はメフィアーナと言う世界へ転移していただきます。人族の召喚魔法による召喚ですので恐らく問題は無いと思われます。》

神のくせして「恐らく」って何だよ…この神様突っ込みどころ多くないか…?

《中々鋭い人も居るようなので大丈夫でしょう。ですので巻き込んだお詫びを兼ねてこれからお願いする調和を可能とする力をあなた方に贈りたいと思います。》

「僕達は何を調和すれば良いのですか?魔王討伐とかではないのですか?」と井沢が質問する。

《それを私が御答えするとあなた方は私の使徒としてメフィアーナに降臨することになります。それは私の思うところではないので、あなた方の目で見て行動していただきたいのです。》

…丸投げかよ!

《それでは皆さんに力をお渡ししてメフィアーナに転移していただきます。静かに目を閉じてお待ちください。》

そう言うと周りのクラスメートが光に包まれて消えていった…あれ?俺は?

《貴方には力を渡しません!》
「はい?」
《目を閉じてても考えてることは解るんですよ?》
「はぁ…」と力の無い返事をする
「なら俺は調和に参加しなくていいと言うことですか?それとも野垂れ死ねと?」
《冗談ですよ》神はコロコロと笑って答える。

何ともユニークな神様だが…流石に命の掛かった冗談を笑う度胸は俺には無い。

《貴方には少し興味を持ったので時間軸を歪ませてお話しさせていただいてます。》
「流石神様…やることのスケールが理解の範疇を越えている…」
《まぁ私も世界を任されるのが初めてでして試行錯誤しているところです。》

やたらと現実的な神様だな…なんつーか人間らしさを感じるわ…

《学ぶと言う行為は存在する全ての物が持つ力なのですよ。》私も含めて…と後付けしながら
《貴方はとても面白い人ですね。神と言われても警戒し、その場における最善手を落ち着いて行える人間なんてとても珍しいものです。》

何か唐突に褒められた。

《と言うか正直あの人達の警戒心の無さに些かの不安を覚えましたよ…まぁあの場所を選んだのはランダムですし仕方無いんですけど…態々平和ボケしてる場所が当たらなくても良かったと私は思うんですよ…》

今度は唐突に愚痴が始まった…

《しかも神って暇なんですよ!手も出せないし、見てるだけだし、娯楽もなければ、食もないし!?挙げ句の果てには雑談できる相手は一癖も二癖もある変な神様だけですし!?地球?の方々は娯楽物が多くていいですよね!》

次は唐突なる八つ当たり…このキャラが素なのか…

コホン…と咳払いをして無かったことにする神様…人間臭いなぁ

《そう言うわけで色んな意味で私は貴方に興味を持ったわけです。…あと臭い言うな》
その臭いじゃねーよ…
《長話すみません、お詫びとして力あげますね》

力あげればなんとかなると思ってるだろこの神…

《まぁ、そう言うわけでよろしくお願いしますよ!》
勝手に宜しくされてもなぁ…
《また会えることを楽しみにしてますね!》
次回の予約付きですか…
《…では!》

そこまで聞くと目の前がホワイトアウトした。


ここで冒頭に戻るわけだが…
ひとつ問題が有ることを知った。

神様にあれほどお願いされた身だが…
転移魔方陣内から、左足の小指が外れていたせいで完全状態の魔方陣の影響を作用しきれてなかったようで…
一番重要な肉体適合の魔術が不発のまま俺が転移された模様
つまるところ…

「誠に申し訳ないのだが…主の体が7日後に朽ちるそうじゃ…何と詫びれば良いものか…」

回復しても外気に有る魔素なるものに常に蝕まれている状態らしい。まさかの死確定。

…と言ってもここに来てもやりたいこと無かったし、こんなファンタジーがあるなら死んだら地球に戻れる可能性も有るわけで…
と冷静に状況整理と可能性による今後の方針を決める。
いつまでも悲観していても仕方無いので、最悪の状況だけでも回避しますか…

「すみません王様」
「な、なんじゃ?詫びになるのであれば出来る限り全ての手を駆使して何でもするぞ?」
王様からはとても申し訳ない。といった表情が伺える。
この王なら郷也達を悪いようにはしないだろう。

「この付近にダンジョンとか腕試しできる場所って有りますか?すこし初心者に危険なところとか」
「有るには有るが…何をするつもりじゃ?」少し疑いの目を向ける王様。
「自分がそちら側の不手際で死んだとなると、信用と言う点でかなり不味いことになりませんか?」
「それはそうじゃが…」こちらのミスなので受け入れる他無いじゃろうと言うように目を伏せて王様は答える。

「それなら自分が実力不足で死んだ、イレギュラーで死んで対応できなかった。の方が都合よく行きませんか?」
「まさかお主、自ら死を選ぶのか?」
「この現状で一番悪手なのは、後ろ楯が無いまま実力もなく外に飛び出して行くことです。恐らくゲーム感覚の奴も居るでしょう。」
げぇむかんかく?と王様の頭の上にはクエスチョンマークが浮かべられている。
「現実だと受け入れれてないと言うことです。そんな人達に戦わせる方が酷だと思うので、どうせ死ぬ命ですし有効利用した方がいいと思いまして…」

王様は少し考え…

「此方側としては都合が良すぎる提案だが良いのか?」
「いえ、自分は特にここでやりたいこととか無いですし、死んだら元居た世界に戻れる可能性もなきにしもあらずなので…」
「成る程…女神が介入している術式であるが故に可能性に掛けてみると…」
「考えている暇はあまりありませんよ…自分の命がある内に最低限、他を戦えるようにする必要がありますから。」
「あいわかった。詫び等は本当に良いのか?」
「何かを渡さないと気が済まないと言うのであれば、ほんの少しだけお金を下さい。それだけで十分です。」

 王様は家臣のような人に一言伝えてから
「ならば金は用意しよう、少しの間だけでも此処を謳歌してもらえると嬉しい」

そう言うと俺に割り振られている部屋から出ていった。

本当にいい人…流石国をまとめる人間だな

その後、白金貨一枚を貰った。価値解らんけども…
それを神からもらったスキルのアイテムバックのなかに入れておいた。

さてさて、仕方ないし死ぬ覚悟でもしますか…足震えるけどね…
残りの人生…のんびりできるかなぁ…

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